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逆噴射小説大賞

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記事一覧

死がふたりを分かつまで

 青空に白く尾を引くジェット噴射は、いつもより速度が乗っている。  全く、厄介な相棒を持…

摩撫甲介
4週間前
25

戦場を着た男

 倉庫を整理していると、隅に耐火布の被さった小山があるのに気づいた。  近くで札束を数え…

摩撫甲介
1か月前
41

バキラが首都にやってくる

「おーい少尉、しょーうい! デートに来たぞう!」  時速500km超で飛行する機動艦の尻に突き…

摩撫甲介
1年前
26

非合法無人傭兵

 まずカメラが回復する。  青空と暗黒雲海。  意識のタイムスタンプを確認。断絶は数秒間。…

摩撫甲介
1年前
38

ほほえみを焼き落とせ

「神野さん、もう悲しむことはありません」  病室のベッドの娘の亡骸に埋めていた顔を引き上…

摩撫甲介
2年前
44

鉛のあしゅら

 改造医の河豚は簡単に折れた。  河豚が扉越しに声をかけると、ガラス戸がかっ開き、待たせ…

摩撫甲介
2年前
23

宙、つめたく冷えて

 横薙ぎに椅子を男のこめかみに叩きつける。  吹っ飛んだそいつに椅子を投げつけ、腹の包丁を掴む。滑る。奥歯が割れそうになる。抜ける。  思わずたたらを踏む。  ゆっくり跳ね返ってくるそいつ。壁に押し付け、倒れ込みながら、うなじに包丁を押し込む。硬いものを断ち切る感触があった。  救急テープでスーツの穴を塞ぐ。アドレナリンとエンドルフィン剤の追加ボタンを押す。ヘルメットの血を拭い、浮いている斧を掴む。  死体をどかし、障壁を叩き破る。刃を見る。取り替える必要があるかもしれない

空に噛みつく青い鳥

  犬の群れが追う。  ドアを叩きつけ、もつれる手で鍵を刺す。  ロックが掛かり、吠え声…

摩撫甲介
3年前
31

ホールケーキはもう出ない

 母さんは昨日のことが嘘みたいなニコニコ顔のまま、お皿を2つ、僕とカナの前にそれぞれ置い…

摩撫甲介
3年前
29

よごれ仕事

「おふくろがね、消えたんだ」  ビニル袋の中の酒を取ろうとした手が勝手に固まって、おれは…

摩撫甲介
5年前
20

人生の悪役

 幸八は3歳の娘を殺してしまった。例の怒りの発作が起きたのだ。  昼飯時のフードコートで…

摩撫甲介
5年前
5

血だるま放浪記 黄金の吹雪

 雪まみれのメッコングを丸机の上に投げ落とすと、酒場の酔漢どもがどよめいた。  店主曰く…

摩撫甲介
5年前
14

大統領の世界みなごろし大作戦

 アメリカの大統領が世界各国のテレビ衛星をジャックして、生放送を始めた。 「国民、ひいて…

摩撫甲介
5年前
42

月の光が人を焼く

 私を縛る縄が痛いけど、舌の感覚もなくなったから言えなかった。  殴られすぎて頭がパンパンに膨れてぼーっとしてきた時、事務所のドアが開いた。 「待たせたな」  とても背の高いムキムキな黒人が入ってきた。私の首なんか簡単にもぎ取れると思う。 「おっ、ゴリラケーキ。よく来たな」  チビハゲが血だらけの革手袋を床に放って言った。  黒人は私に近づいた。顔をじっと見てから、私の涙を拭った。殺しに慣れた人の目だった。 「大分ひどくやったな」 「ああ。全然居場所をしゃべらないからさ、俺は