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戦場を着た男

 倉庫を整理していると、隅に耐火布の被さった小山があるのに気づいた。
 近くで札束を数えているボスに訊いてみると「軍の放出品、年代モノ」というので、布をはぐると、巨人が喰うような鉄色のピーナッツが二本足で立っていた。

 6発の銃弾。
 戦闘服の装甲は滑るように受け流した。
 真っすぐ伸ばした左腕の先、砲口が赤い火柱を噴いて、弾を撃ち尽くしたボスの腰から上を、後ろの壁まで丸く抉るように溶かした。
 メカオタクを拉致したまぬけ。
 自分の顔がニヤけているのに気づく。嫌な感じがして意外に思う。
 とはいえ、これで強盗団の頭が潰れ、おれは自由の身になったわけだ。
 視界いっぱいに広がる網膜投影ディスプレイの、上方の100の数字が99に変わった。あと99発撃てるのか。
 残った強盗団員。全員殺れる。想像する。嫌悪。
『残り99人です』と近くで声がした。音声反応AIだろう。
「にん?発じゃないのか?」
『懲罰服着用者へ告ぐ。戦場の義務を果たしなさい。違反者には強制任務モードが課されます』
 待て待て、つまりこの数字は……。
 今まで快適だった戦闘服の空調が冷凍庫用に変わった気がした。
『強制任務モードまで残り60分です。これは出会い頭に作戦を行う仕様です』
「どうすりゃ大勢殺さずにコレを脱げる?」
『……解除コードを外部入力してください。コードを所有する最も近い基地の最短ルートを表示します』
 街のど真ん中を通る。
『遂行には40分程度掛かります』
 20分の余裕。肺が楽になる。
 抉れた壁が見えた。死の痕跡。
 犯人探し。消えた戦闘服。街へ。人混み。
「……この森を通るやつを出せ!」遠回りだが人はいない。
『ルートを表示します。私は着用者の行動を支援します』
 くたばれ。

 森へ。
 ここまでに何度か端末を向けられた。通報されたかもしれない。
 忘れろ。
 木の根元にチラシ。拡大して表示……。
 『急激な心拍上昇を感知』
 この日付は昨日。遠くに聞こえる音楽は空耳。正面から足音。

【続く】

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