【書評】社会学講義

社会人になって15年以上過ぎてから、社会学に興味が出てきて、新書で勉強した。なお、大学は工学系。

社会学講義 著者:橋爪大三郎、佐藤郁哉、吉見俊哉、大澤真幸、若林幹夫、野田潤 ちくま新書1205

本の帯に、「この本一冊で社会学OK」と記載されており、気に入った。社会学は、社会の全てが対象となるので、これを読めば、社会が理解が進むのだろう。

二〇世紀の社会学のキーワードは「システム」(中略)分析と総合を通じて、全体を要素のつながりとして把握すること。(34,35ページ)

社会をシステムとして俯瞰するために、ミクロの調査を進めることが社会学の流行のようだ。社会学は人間なので、現実として現時点の目の前のものしか見えない。それを、現在の社会全体、未来の社会をイメージするためのメソッドが「システム」ということだ。これを理解すると、落合陽一氏への理解も深まる。

データ処理には、ほぼ三つの段階がある。まず、データをどのようにして収集するかという段階。(中略)データ解析の段階。(中略)データの解釈。(46〜48ページ)

新書ということで、データ処理を分かりやすく書いてある。システムとして、全体をイメージするという「データの解釈」は確立された手法がないとのこと。

現在、いろいろ引きずっている過去の制度のしがらみに対して、(昔の言葉で言えば「批判」であるが)、それがいつ、誰の責任でこういう制度にでき上がってしまったかをはっきりさせ、そのことを通じて、その制度が変わりうるための条件を明らかにしていく(56ページ)

これが常にできれば、意識高い人物になれる。これが気が向いたときにできれば、意識高い系人物になってしまう。

社会学を可能にした契機はふたつあります。第一に、社会を見る観察者が主体化されているということです。(中略)第二に、「個人/集合体」という対立軸が現実性を獲得することです。(81ページ)

著者が変わって、先ほどの「システム」と同様の記述があった。流行していることが確認できた。

リスクと危険一般とは違います。(中略)リスクというのは、人間が何事かを選択したとき、それに伴って生じると認知された不確実な損害のことです。(101ページ)

社会人になってから、リスクと危険は違うということを上司に言われて、インターネットでも確認したが、書籍で確認できると理解度が高まる。

規範やルールを「変えることができる」という自覚を前提にして、規範やルールを不断にモニタリングし、修正や調整をほどこしていく。これが再帰性という現象です。(103ページ)

先ほどの意識高い人物の内容が、再び出てきた。重要なことだと、判断した。

パークには、「都市とは社会的実験室である」という有名な言葉があります。(中略)一般に自然科学は実験ができるが、社会科学は実験ができないと言いますが、パークはシカゴという都市の中に、社会学の実験室を発見したのです。(119,120ページ)

社会的実験室という、過去に仄聞したような言葉の内容が明確に分かった。

現在社会と技術との関係は、技術が社会に外側から影響を与えるという関係にあるわけではありません。(中略)技術は社会の外側にあるのではなく、社会そのものがさまざまな技術の積分として成り立っているのです。(167ページ)

対面のみの社会と、電話や電子メディアなどの技術を用いた社会のこととの説明が書かれている。落合陽一氏みたい。

家族が論じられる際には論者自身の個人的な体験が素朴に特権視されやすくなる。自らの考えや経験を、そのまま一般化して論じがちになるのだ。(170ページ)
物事を観察する際に、観察者の価値観のみが特権的な審級として通用するのだという思いこみは、あくまでも思いこみにすぎない。(178ページ)

この部分を常に念頭に置くことは、社会人として重要である。固定観念を排除すること。

テンニースは、一体性や結合性、共感、親密性によって特徴づけられる伝統的な共同体をゲマインシャフトと呼び、諸個人が機械的•契約的にとりむすぶ個人主体的な関係であるゲゼルシャフトと区別した。(181ページ)

ゲマインシャフト、ゲゼルシャフトは、伝統的共同体•個人主体的共同体の日本語訳より、そのまま使った方が理解されそう。

男性に経済責任を求める意識は今も強烈で、出産した女性労働者の退職率はここ三〇年間変わっていない。(中略)夫の片働きのみで家計を維持できる世帯は希少化している。(中略)現代の日本では実践が困難になっているにもかかわらず、社会的な制度も規範も近代家族を前提としつづけている。(202,204ページ)

ここを読んで、規範と世間体•マウント•承認欲求は近い気がする。私自身は、世間体や他人との比較を全く気にしないため、他者と意見が合わないこともある。

社会学者には、「理論屋」と「調査屋」がいる!(中略)調査屋には、大きく分けてサーベイ屋とフィールドワーカーのふたつのタイプがあります。(中略)サーベイ屋は、またの名を「アンケート屋」と言います。(221,222ページ)

分類されると、スッキリする。

「壮大な仮説、マメな調査、最後のハッタリ」というのもあります。(239ページ)

ハッタリ重要。





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