【経理勉強録】法人税勉強#3 交際費等
前回の続きです。
1:交際費等とは?
交際費等、というからには交際費以外のものも混じっているということです。言ってしまえば、「交際費と、それに似たやつ全部」の意味になります。
正式な定義としては、以下の通りになります。
ということで、まとめると。
1:交際費、接待費、機密費などの名目の費用である
2:事業に関係ある、社外の人に対する費用である
3:接待、供応、慰安、贈答などの行為に対する費用である
4:支出する費用である
これが要件となります。これに当てはまるものについて、一部分を損金不算入にする(すなわち、所得が増える加算項目である=法人税額が増える)のです。この一部分については後で触れます。
また、個人的には4番は色々な意味で重要だと思います。例えば、接待の為に社外の人に対して旅行に誘った時の費用があるとします。既に支払い済みではあるけど、システムの都合上請求書が期末までに届きませんでした。この時、仕方なく(とは言え、実務上は費用にするよう見積費用を立てるなどして対策をすることがありますので、この場合の「仕方なく」は悪意ある仕方なくだと思います)会計上では費用を計上しませんでした。この場合でも、法人税法上は「支出をしているのだから交際費等に含めます」と判定されるわけです。
この交際費等は、よく税金逃れの為に使用されることが多いことが想定されます。無駄に接待をして費用を立てて、節税に活かそうと企む輩が一定数いるのです。それを防ぐためか、交際費等は具体的な例示がかなり細かくされています。それも、「これは交際費等には含みません」という消極的消去法によって規定されます。全て例示すると長くなるので要約しながら挙げると次の通りです。
1:従業員のみに対して(=専ら従業員のために)行われる慰安旅行や運動会などのイベントにかかる費用(福利厚生費として取り扱われます)
2:会社の役員や従業員又はその親族のみの場合を除いた、飲食による接待等の費用で、かつ1人当たり消費税抜きで5,000円以下のもの(この場合には、接待年月日、接待相手の詳細及び人数、飲食費や飲食した店の名前・住所等を記した領収書等などがあることが必須です。これに当てはまらないものは接待飲食費と呼ばれます)
3:寄附金に相当するもの
4:見本品の供与等(広告宣伝費として取り扱われます)
5:給与に含まれる、自社のために利用したということが明らかな接待や交際等の費用(給与として取り扱われます)
6:カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいなどを贈答する時にかかる費用(何故これらが入らないかと言うと、少額の物品を大量の取引先に渡すことで広告宣伝効果を狙っていると解されるためです。つまりは広告宣伝費の一環として取り扱われます)
7:会議における飲食費用(2に関連して、5,000円を超えると交際費等に入ります)
8:取材関連の費用(座談会も含む。恐らくこれも広告宣伝費と解されるためだと思われます)
逆に言えば、以上のもの以外で、最初の定義に当てはまりさえすれば、全て交際費等として扱わなければなりません。
2:交際費等の損金不算入額
損金不算入額については、期末の資本金の額によって次の通り定められます。
・資本金100億円超の企業→全額損金不算入
・資本金100億円以下の企業→接待飲食費の50%だけ損金不算入
・中小法人→接待飲食費の50%か、800万円を超えた分だけ損金不算入
なお、中小法人についてはどちらかを選択適用できます。800万円を超えた分だけ、という方を選んだ時で、かつ事業年度が1年未満の場合には、月割りで計算をします。
よって、例えば以下の様な問題が出てくることがあります。
まずは、交際費等とそれ以外とを区別します。
次に、交際費等について損金不算入額を決定します。ここで資本金100億円超なら全額損金不算入ですし、100億円以下の大法人なら接待飲食費の50%だけ損金不算入ですが、今回は中小法人です。従って、次のどちらかを選択することが出来ます。選択する際は、「より法人税額が小さくなる方」を選択します。
さて、これについては仕方ないので算定するしかありません。まず、接待飲食費の50%については、70万円の50%ですから、35万円が損金不算入額になります。
一方、800万円を超えた分だけ、ということになると、190万円となりますからこの場合は損金不算入額が存在しません。従って、どう考えても800万円を超えた分だけ、の方を適用した方が法人税等が安くなりますから、それを選択します。この場合は、別表四の加算調整について交際費等の項目はないということになります。
なお、一旦交際費等として認識した、請求書の到着していない接待費用についてですが、この場合は会計上「仮払金」という資産科目で計上していると考えられます。そうすると、会計上は資産計上しますが、税務上は費用として認識しているとしてズレが生じるのです。なのでこの費用については「交際費等認定損」として減算調整をする必要があります。
3:消費税等の取扱いについて
ここからは想定している2級の範囲を明らかに超えますが、実務では考える必要がありますので併せて載せておきます。
それは、消費税についてはどうするのか、という話です。
もし税込経理をしているのであれば、消費税も含めた金額で今までの交際費等の話を考えているので問題はありません。
ということは、面倒なことになるのは税抜経理の場合です。この場合、以下の条件を満たせば交際費等に一部含めることができます。
1:課税売上高(消費税のかかる売上高)が5億円超、または課税売上割合(全部の売上高の内、課税売上高の割合)が95%未満
2:仕入税額控除のできなかった消費税が計上されている(消費税は、売上の際に受け取った消費税額から、課税売上を上げるのにかかった仕入の際に支払った消費税額を差し引いて、その差額を税務署に納める必要があります。この差し引くことを「仕入税額控除」と言います。つまり、仕入税額控除のできなかった消費税とは、課税売上以外(非課税売上)を上げるのにかかった仕入の際に支払った消費税を指します。詳しく説明した方がよい事項ではありますが、この辺りは法人税法とはズレるのでこのくらいで)
→この時、2番の内交際費等として支払ったものに含まれる額だけ、交際費等に含めることができる。
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