【不定期雑記 #22】KAC2023参加作品、セルフライナーノーツ。
ドーモ、透々実生デス。
という事で今回は、カクヨム様にて企画されました「KAC2023」という物書き企画に参加した話と、その作品の解説(という名の自己満足雑記)をやっていこうと思います。お付き合い頂ける方は是非お付き合いください。
ちなみに表紙画像は「KAC」の正式名称「Kakuyomu Anniversary Championship」をAIに書いてもらった結果です。別にスポーツ大会じゃないからね?
さて、まずは始める前に。
当時、最初から最後まで追いかけて下さった方が数名いらっしゃって、とてもありがたい限りです。日々の励みになりました。まずはお礼を。本当にありがとうございました!
ちなみにまだの方はこちらからどうぞ!↓
KACと私の地獄の始まり。
まず、そもそもさっきから言っているKACとは何か? について。
KAC――Kakuyomu Aniversary Chanpionship の略称でございまして、要は、「数日おきに出されるお題について、それぞれ即興で小説を書こう!」という企画です。今回は全部で7つでございまして、以下の様なお題が出されました。
これらがそれぞれ発表される度に、1つずつ小説を書く(制限時間は大体2日)のですが、ルールは文字数777文字以上、そしてちゃんと各テーマに沿うこと。それ以外のスタイルは基本自由、というかなり自由度の高い企画です。
私は(これまで色々読んで下さった方はお分かりの通り)例の如く「面白そう!」で首を突っ込みました。そして、1つ目の本屋というお題を見て、こう思ったのです。
本屋なら沢山の本が置いてある訳だし、どうせなら、お題に沿った物語の記された本を読みながら物語が進んでいく、という短編連作にすれば面白いのでは!?!?
これが地獄の始まりでした。
(完全に自業自得)
……ということで、書きながら思っていた事と、いつも通りの解説をしていこうと思います。お時間ある方はぜひこの先もお付き合い下さい。
⓪全体タイトルについて
noteに移植するにあたって折角なら全体タイトルが欲しいよなあと思って、付けることにしました。しかしカクヨムで読んで下さった方にも明らかに「もう読んでもらった話だよ!」と分かるようにせねば、うーん、となった結果「じゃあ、KACをそのままタイトルにすりゃいいじゃん!」と思い立ちました。で、「Kaleido Aspiring Compilation」と名づけました。
今回のKACは、複数の物語を横断する短編連作(の形をしたナニカ)なので、それにちなんで付けました。Kaleidoは「カレイドスコープ(万華鏡)」にもあるように「変幻極まりない」「二度と同じ形をとれない」の意味、Aspiringは「希求する」「意欲的な」の意味、Compilationは「コンピレーションアルバム」にもある通り「編纂物」「寄せ集め」の意味です。
①リバース・バース。(お題:本屋)
・全ての地獄の始まり。書いた時は「面白そうじゃん!」と思いましたが、その後すぐに「何で俺はこんな事始めちまったんだ!!」と後悔します。しかし、期待して下さってる読者さんもいらっしゃる(どころかコメント頂けた……!)し、「頑張ろう……!」と思った次第です。
・Reverse-Verse.
→執筆当時流行りの言葉に「メタバース」がありますが、着想はまさにそこから。リバース、と付いたのは完全に語呂が良かったからなのですが、きちんと「裏世界」というような意味も成り立つのでタイトルとして採用しました。同時にここで、タイトルも英語で韻を踏まねばならない、というあまりにあまりな制限を自分に課すことになったのです。マゾか?
・「貴方が44,986人目のお客様です。」
→昔流行った個人サイトの、最初に表示される定型文ですね。個人サイトには黒歴史が詰まっているので、この言葉を見て悶絶する人がいるに違いありません(偏見)。
ところで「44,986」という数値は実は適当ではなく、「2023年3月1日」をシリアル値に置き換えた数字になっています。なお、シリアル値とは、「1900年1月1日」を1として、日付を整数に置き換えたものを言います。
・「……私の正体ですか?」
→本当に知らない方がいいと思いますよ。
・「下の名前ではあまり呼ばないで欲しいです」
→上の名前のあだ名もどうかと思うぞほとりん。
②ダラー・ドール。(お題:ぬいぐるみ)
・Dollar Doll.
このタイトルを思いついた時に、実は全く別の物語を書いていました。しかし3,000字程書いた所で論理が破綻し、物語を続けられなくなったので、一旦全て取り下げ、新しく書いたのがこちらの物語でした。
で、この話が思いついた途端、童話調で締めようと思った訳です。なので、「出会いと手助け→ピンチ→手助けした人が助けてくれる→別れ→次なる地へ」という割と勧善懲悪を題とした直線的なプロットを採用することにしました。ここまで骨格が決まれば後は肉付けするだけ――という作り方ですね。
なお、短編連作としてはこの時点では全く着地点が見えてません。
・「価値は、見た目ではなく、中身で判断するものだ。」
→西尾維新さんに強く影響を受けているので、こうした冒頭文を載せることが往々にしてありますが、今回はこれを本から得られる教訓として採用。教訓を軸にした短編連作にしようという方針だけは決まりました。
・ちなみにこの物語だけで6000字超えです。文字数の上限を設けなかったカクヨムが悪い(傲慢)。しかし、お蔭で伸び伸びと執筆出来ました。
・🧸
→くまさんぬいぐるみ可愛いですよね。最近場面転換の際に絵文字を使うことが多くなりました。
・リラ
→主人公。由来は通貨単位です。今はトルコの通貨単位です。昔はイタリアでもこの通貨単位が使われていました。
なお弟のギルダも由来は通貨単位で、昔オランダで使われていた単位ギルダーから取っています。
・「此のスラムでは、使えるものは全て奪うのが大原則だ」
→サツバツ! しかし一歩間違えると本当にこういう世界なので、良い子の皆さんはスラム街に突っ込むのはやめましょう。
・「モンキーダンス」
→私のモンキーダンスの原点は下の動画です。腕をふりふりする動作は私にとってこのイメージが強く染み付いています。
③キマイラ・カメラ。(題:ぐちゃぐちゃ)
・Chimera Camera.
このお題を見た時、偶々以下の曲を聴いておりまして、タイトルは完全にここから。語呂的に良いので、「キメラ」ではなく「キマイラ」としました。あとは語呂合わせで良いのは「カメラ」だと思い、そのまま決定と相成りました。
・物語構成について
→この話を読んで頂いた方から、「星新一に影響を受けてそう」という指摘を頂き、自身ではあまり意識してませんでしたが「確かにそうかも」と思いました。この話を書くのとは関係なく、星新一さんの『ボッコちゃん』を読んでいまして、「最初と最後とで意味が変わる」という構成を無意識的に採用していたようでした。私はそれをSFではなくホラーに転用した訳ですが……。
・「公園なのに地面は沼地の様であるし、大体色が紫だ」云々
→この辺りの描写は以下のWEB小説に強く影響を受けています。但しプラナリアは適当でした。あんなのに手足生えたら気持ち悪いやろなあ、という軽い気持ちでやりましたが、想像した以上に気持ち悪くて「うげっ」となった記憶があります(作者なのに)。
・「黶観ヶ丘公園」
→気付かれた方はいらっしゃるかもしれませんが、この単語は以前私が書いたこの小説での地名そのままです。しかしそれにしても、治安が最悪すぎる、黶観ヶ丘。
・「写真にはその人の意図が滲む。俺はそう思っている。」
→私もそう思ってますし、だから写真は人の心の隙間を埋めたり抉ったりするのだと思いますし、それを効果的に行う人こそがプロなのだと思います。
・「本が、私達を呼び寄せているのです」
→これはかなり私の実感に近い言葉です。人間主体にして言い換えれば「人は自分の欲しい情報しか頭に入れない」ということなのかもしれませんが、それにしても私は本を手に取ると、「今の悩みに合致して、尚且つ本当に援用できそうだ」と思うことが多々あります。音楽でも同じことを思いますね。
④サイド・パラサイト。(題:深夜の散歩で起きた出来事)
・Side Parasite.
→これは少し難産でしたが、『キマイラ・カメラ』のホラー風味が割と評判が良かったので、調子に乗ってホラー題材でもう一本書くことにしました。で、出来上がったのは、深夜に歩く描写が一切ない、深夜の散歩で起きた出来事に関する小説でした。捻くれてる……。
・「一時期流行りましたよね、深夜の巷を徘徊する、みたいなテレビ番組」
→実在します。『夜の巷を徘徊する』という、マツコ・デラックスさんが夜の街を練り歩き、気の向くままにお店に入り人々と会話をしたりする番組です。私もこの番組大好きだったんですが、コロナ禍もあって潰れてしまいました。おのれ……!
・「……っ。昨晩、死体が発見された? 死亡推定時刻が深夜2時?」
→これも星新一さん風に文章に2つの意味を持たせてます。一目見ると、驚愕しているようにも見えますが……。
・「でも多分、ぐちゃぐちゃの滅茶苦茶だったでしょう。綿を引き摺り出されて布をバラバラにされたぬいぐるみの様に、本屋で見るエログロナンセンスの小説の様に」
→地味に今までの主題である「ぐちゃぐちゃ」「ぬいぐるみ」を入れてます。「本屋」は入れようが無かったので「エログロナンセンスの小説」として。
ちなみにこの「エログロナンセンスの小説」という表現は、「今私が書いてるやつもさしてそれと変わらんやんけ」という『サイド・パラサイト』の(架空の)作者自身の皮肉も込めています。この短編連作の「作中小説」の中で、唯一この作品だけ教訓がありません。それは最後に示される通り、「逆説的に本は有用だ」と示したいだけの天邪鬼な作者が書いているからだ――という所に繋がっていきます。
・「ペンの土俵に立ったところで、剣が結局強いんすよ!」
→やはり暴力……! 暴力は全てを解決する……! これがこの小説においても同じだというのは何とも皮肉なものですよね。
⑤ミューティレイション・バイオレイション。(題:筋肉)
・前2つがかなり暗かったので、「兎に角明るい話を書いてやる!」と意気込んだのがこの作品でした。お題の筋肉、作品にしたら明るくなる気しかしないでしょう?
で、ジャンルは何にしよう……と思って「SF」を目にした瞬間、「よし! 筋肉SFだ!!」とノリで作品の大筋を決めました。こういうのはノリと勢いが大事ってじっちゃんが言ってました(言ってない)。
お蔭で一部から好評でした。ありがたい限りです……!
・ちなみにこの短編連作中最長。およそ9,000字です。どうして。
・Mutilation, Violation.
→ミューティレイションは当然宇宙人のアレ。バイオレイションは暴力――と思いきや、「侵害、侵犯」を意味する英単語です。世界に切り込んで侵犯し、体を切り刻んで侵犯する宇宙人達と、その中を生きる人間の話、という意味を込めました。
・「筋肉は潰すべき弱気を挫き、潰すべき強きも挫く。」
→言葉遊びとしてはかなり気に入ってます。元々は「弱気」は変換ミスだったんですが、「いや、ちゃんと意味の通る文章になるな……」と思ったのでそのまま採用しました。
・「絶対零下全球死滅ビーム」
→この物語のネーミングは、主人公のせいにしつつ、わざとセンスを崩壊させました。ちなみに元ネタは、私の大好きな、パワフルSF消火アニメイション『プロメア』から。絶対零度宇宙熱死砲ですね。
・「恐らくはこれらと同じ様に、彼ら彼女ら宇宙人には所謂、キャトルミューティレーション欲なるものがあるのだろう」
→本当にあるかどうかは知りませんが……。多分ちゃんと言い表せば好奇心というやつだと思うんですが、ここはインパクトを優先してこういう言葉選びをしました。パワーワードの悪ふざけ大好きなんです。
・「……thyhw-348awるよ」
→宇宙人の言葉で隠れてしまい、何を言ったか分からなくなってしまったもの。主人公は宇宙人のことを優しいと思っている。その逆もまた――。
・「分かんねえよ、何言ってんのかさっぱり分からねえ。地球の言葉喋れよ。喋れねえなら――死ね。」
→もう察したと思いますが、平野耕太さんの『ドリフターズ』のセリフが元ネタです。よくネタにされてますよね、SNSで。
・「俺は腕を上げて――そうできるくらいには体力が戻って来た――人差し指で彼女の指に触れた。これが宇宙式の約束の形らしい」
→いーてぃー。有名ですよね、あの指を突き合わせる絵面。スティーブン・スピルバーグの往年の名作『E.T.』のアレです。
しかし、実は映画のシーンにそんな指を突き合わせるシーンなんて無いのです。正しく、民衆の中に溢れた、存在しない記憶と言っても良いでしょう。映画の宣伝ポスターがまさかそんなに影響力を持って広まってしまうとは……。
⑥バッドラック・バット・ラック。(お題:アンラッキー7)
・お題としてはコレが一番難しかったです。そもそもこの連日数千文字の物語を書き続けるという頭のおかしなことをしたせいで、頭の疲労度が凄まじいことになっていたのです。そして「もう好きな物語書いてしまえ!!」とヤケクソになり、物語が進んだ結果、どうにかお題も交えながら仕上げた作品でした。
・(It's) Bad Luck, but (it's also) Luck.
→不運も運、という意味でした。「人の運は結果論だ。」という教訓と併せて、「結局のところ、運も不運も結果でしかなくて、その過程でいかに幸運だろうと不運だろうと、終わり次第でその過程の意味は改竄されてしまう」という事でした。これも私の実感とかなり近い感覚です。
・「金で運は買えない」
→よくこの言葉が浮かんだと思いました。ちなみに、この物語はこのただ一言を出発点に組み上げたので、これがなければこの物語は存在しませんでした。
・「女々々女々」
→「すげえ名前だな!?」ととある読者から突っ込んで貰いました。今まで色んな変な名前を作ってきましたが、中でも相当ぶっ飛んだネーミングだと思ってます。
・「貰った運が尽きるまで自殺をし続ければ、いつかは自殺ができるのだろうか――?」
→ちなみについぞ出てきませんでしたが(流石に盛り過ぎかなと思って)、この世界では、運が尽きれば命が尽きるという設定があります。まあ言わば、「運命」という言葉を字だけで受け取ったが如く、運は生命力を種にしている訳です(つまり運の売買はそのまま、命の売買でもある)。なので、あまり運に頼り過ぎると身を滅ぼしますし、運に頼らず生きようとすれば長生きします。
従って、運が尽きるまで自殺をし続ければ、確かにいつかは自殺することができます。どっちの意味で死ねるかはさておいて。そして、それまでどれだけの時間が掛かるかはさておいて。
・「何か、虫が良すぎるんじゃないか、これから更に不幸な事が起こるんじゃないかと」
→物語の最初にもありますが、「運の総量が決まっているのでは」という考えに基づくものですね。厳密には、総量が決まっているのではなく、発生回数が同量であるに過ぎず、10回起きれば6回は幸運、4回は不運なので、5回幸運が続けば次は不運が待ち受ける……という具合でしょう。
ちなみに私はそういう思考法で、なので逆に不運が起きても「まあ、今日はそういう日か」と割り切れるようになりました。
・「絶望の先は絶望しかないのです。希望を見出して掴むのは、他でもない貴方だと、私はそう思います。」
→ここだけの話ですが、この言葉が浮かんで漸く、この短編連作の締めが決まりました。めちゃくちゃ危なかった〜……。
しかしこれも私の実感で、だから私達は希望に向かって突き進む姿に心打たれるのだと思います。
⑦エクス・エクスキューズ。(お題:いいわけ)
・短編連作の最後。企画の中に「777文字以上」とあるので、最後の話だけはそこを攻め込もうと777字ピッタリを目指しました。なので相当情報は絞って、自殺の詳細な理由は省き(ある意味、読者の想像に委ねた)、自殺を諦めて明るい方へ進む終わりに仕立て上げようという芯を極限まで削って書きました。お蔭で一番ストレートなお話かもしれません。
・X-Excuse.
→Xは「詳細不明な誰か」という意味を込めました。この物語は詳細不明な誰かを主人公にしています――貴方が生きて欲しいと願う誰かを、或いは貴方自身を。自殺の詳細な理由を省いたのもそういう意図があったりします。
Excuseはそのまま「言い訳」です。ちなみに、私は「人は何かと理由をつけて生きるのを先延ばしにする」、「楽しい事が待ち受ければこそ、人は自らを殺すのを先延ばしにする」という思考を持っています(無論例外もあり得ますし、大体自殺なんて衝動に背中を後押しされるから起きるのであって、この考えは通用しない)。この考えの大元になったのは次の曲ですね。曲名が凄いです(なのでYouTube君は視聴前にしっかり警告を出してくる)が、生きるのに明るくなる良い曲です。
・「そう思った瞬間、急に世界が自分の手から零れる様に感じ、死にたくなったのだ」
→虚無感。これが自殺の元なのだろうと思います。ここは明らかに三島由紀夫の『命売ります』に影響を受けてますね(無論、『命売ります』の中では全く別物として描かれていますが)。
・「死にたがりがまだ死なない理由にしては、良い言い訳じゃないか」
→綺麗に締められたので大変助かった、と「いいわけ」というお題に感謝しました。ちなみに「いいわけ」は平仮名ですから、「良い訳」も「言い訳」も「良いわ、毛」もOKということになるから、自由度が高くて割と良いお題だな、と思ってました。
さて、完走した感想ですが。
疲れた!!!!!(大声)
改めて言いますが、何のお題が出てくるかもわからない状態で短編連作はマジでやめるべきと思います(当然)。今までの執筆で異様な疲労感が出てしまいました(他に書いてる物語があるのにそれを中断してしまった程)。
しかし、大量の物語を出力できたのは大変楽しかったです。この3ヶ月間で人生で最も本を読んでるのではという勢いで読書をし、さらに前月2月はスランプに陥ってまともに物語を書けていませんでした。その反動が一気にやって来たので、KACという企画には、私は大変感謝しています。
とはいえ反動が過ぎました。何せこの2週間で31,000字以上を書くという中々パワフルな事をしたからです。まあ、この後この2倍以上の文量を書くことになるのですが……。
ちなみに、近日連載開始です。乞うご期待。
以上!