『ワンルームワンダーランド』感想
ワンルームの中で、ひとりの生活と、その部屋にたどり着いた人生が語られていた。
人の生活を見るのが好きで、Xでも生活や生き方が見える人のポストをよく眺めている。着飾っている人も多いけど、着飾りすぎない、生の声が聴こえてくるような呟きが好きだ。その生活は、その人にとっては現実の一部。だけれど、受け手にとっては現実とフィクションが絶妙に混ざり合った、自分ではない誰かの日常。自分以外の人生/生活/日常を知ることは、小説や漫画や映画にも似ている。壮絶なアクションやホラー、サスペンスやファンタジーとは違う、フィクションとノンフィクションの間の日常系。そういう呟きを見て、そこにある人生を追体験しているのかもしれない。
『ワンルームワンダーランド』はお洒落な部屋紹介の本ではなかった。
この世界に生きている誰かの人生/生活/日常を語る本。
部屋全体の写真一枚と、部屋のお気に入りの場所/物の写真一枚。
そして、部屋についてのエッセイ一筆。
その部屋にたどり着いた経緯、誰に吐き出すこともない感情とそれ包容する部屋、地層のように生活が積み重なった現状の部屋、期間限定と割り切られた部屋、割り切れなくて「自分」が匂い立つ部屋。どの部屋も独自の味わいがある。
私は今、自分の部屋を変えたいと思っている。
いずれ引っ越すと思っていたけれど、案外居着いてしまっているし、居心地のいい部屋で生活したい。常々思っていることだった。けれど、腰は重かった。
その腰をようやく持ち上げて、今膝立ちくらいまできた。
あとは立ち上がるだけ。どんな風に変えていこうか計画を立てたいところ。
だから、この本に手が伸びたのかもしれない。
短期間でも「自分」の匂いを作りだす発想力と行動力と物怖じ/出し惜しみしない大胆さと俊敏さ。見習っていきたいと思った。
「いずれ引っ越す」だからと部屋作りを怠ってしまってチグハグな部屋になっている。
「今、ここにいる」それを大事に、「今」を「心地良く」していきたいと思った。
フィクションでありノンフィクションである暮らしの声は、自分の暮らしを見つめ直すきっかけにもなる。
どんな人生を歩んでいる人が、どんな部屋を作っているのか、その人はどんな風にその部屋を語るのか。百人百様の「ワンルーム」が詰め込まれた肥沃な本だった。
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