世界中パディントンの心に包まれたらいい
先日、遅ればせながら映画『パディントン』の1と2を観ました。
パディントンの書籍を読んだことがなかったので、映画もファミリー向けのほっこり作品だと思っていて、時間がある時にと観るのを先延ばしにしていたのですが、実際に観始めたら、最初から全然クマと人間のほっこり映画に止まらない傑作映画で、脳内スタンディングオベーションでした。
パディントンはクマなので種族が違うため当然のように人間社会にとっては異端として描かれていますが、おそらく人種差別の問題が暗示されているのだろうと思いました。社会から無くならない問題を、ハートフルなファミリー向けの作品にして誰でもとっつきやすいものとして提起してるんだなと、作者の懐の深さを感じました。映画鑑賞後、書籍も読みたいと思いとりあえず図書館へ。まださわりだけしか読めてませんが、書籍の方にははっきりと「移民」と書いてありましたね。そのうち全巻揃えたいと思います。パディントンコーナー作りたい。
書籍と映画では設定が少し違っていましたね。家族構成は、書籍の方は父・母・兄・妹・家政婦、映画は父・母・姉・弟・親戚のおばさん。そして、書籍の方では最初から全員パディントンに対して友好的ですが、映画は最初は母以外はあまり友好的ではありませんでした。弟は興味はあれど異色な存在として見ている、姉は「キモい」と思っている、父はできれば関わりたくないから追い出したい、おばさんは文句は言うけど嫌いではなさそう。父の態度は家族への愛故のもので「家族を守るために異端を排除したい」というものですが。けれど、パディントンの性質や性格や態度に触れて、パディントンと関わることで次第に家族の態度が友好的なものに変わっていき、家族自体の関係も円満に変わり、変わっていく家族を見て父もパディントンを受け入れ始める。1のラストでは家族だと認める。2の終盤で父が、パディントン(=異端)を非難し排除したい隣人に向かって言う言葉は、人類への言葉だと受け止めました。
この言葉は移民や人種だけではなくあらゆる差別に対しての言葉だなと思いました。見た目だけで偏見を持つから、人の本質を見れないのだと。そして、差別なども関係なく、心あるものへ、パディントンが持つ本質の素晴らしさを訴えている。パディントンが持つ本質(これは他作品でも提言されていることかもしれませんが)を誰もが持っていれば世界は素晴らしいだろうなと、願ってしまうものですね。
『パディントン2』では囚人たちのことで男性性についても描かれていると思いました。料理長をしている筋骨隆々の男は、腕っぷしだけが取り柄で料理は全くできず(なぜ彼が料理長だったのかは謎)支配的という昔ながらの男らしさの象徴。ですが、パディントンと協力して美味しい料理を作れるようになる。そして、囚人たちの中から他にも料理が得意な男たちが「俺もレシピを教えられる」と次々と名乗り出る。これは料理やお菓子作りが好きな(できる)男性だって一定数いるのだという、フェミの話でもあるのかなと思いました。素人の見解ですが。
料理長とパディントンの会話ではパディントンの温かさが伝わります。
料理を手伝ってとお願いされるが料理に関しては自信を失っている調理長に対して、パディントンは相手の長所と料理を結びつけた言葉を伝える。役に立たないと自身を失くしている分野で、君は役に立つよと良いところを教えてくれる。裏のない率直な言葉だからまっすぐ心に届く。パディントンの優しさが沁みるシーンです。
2022年にエリザベス女王の即位70周年記念の式典でパディントンと共演したお茶会の動画を拝見した時は、パディントンの存在は知っていたけど内容は把握していませんでした。なので、心温まる動画だなと思っただけでした。それでもその動画は好きでした。
映画を観たことで、移民や人種差別の問題提起をしている作品が、女王とのお茶会に招待されたことに意味があるのだと知ることができました。あのコラボはパディントンであることに意味があったんですね。
映画『パディントン3』は11月に英国で、来年1月に米国で公開されるようなので、日本での公開はもう少し先でしょうけど、楽しみに待ちたいと思います。すっかりパディントンに魅了されておりますので、3はなんとしても劇場で堪能したいと思います。少しでもパディントンの心に近づけるように生きたいところです。
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