マガジンのカバー画像

その日食べるさかな

21
その日食べるさかなを釣る船と分かち合うだけの夜があればいい
運営しているクリエイター

記事一覧

わしらの貝しごと(下)

店に戻ってすぐ、バゲットを買いに来た佐藤親子と夕暮れの空で立ち話をしてから、仕事にとりか…

わしらの貝しごと(中)

赤灯台は思ったより遠かった。4馬力の伝馬船を走らせて20分ほど。 魚屋のじいちゃんを先頭に、…

6/7 わしらの貝しごと(上)

「次の大潮見とけよ」ってじいちゃんに手渡されたのは、ケロリとした顔で鯛を引っ掴む愛媛のゆ…

6/1 バックストリートボーイズと、夏は夜

閉店間際。静まりかえった夜の港に、にぎやかな声が近づいてきて突然店の前で止まった。窓の外…

11/13 遍路道の干物めずらし 人もめずらし

魚屋のじいちゃんが並べて干す分厚いモンゴイカが、港町に冬を知らせた。強風になびかれてしな…

10/27 己の原価率を割っていけ

「わし、しばらく仕事や!これから忙しくなるでえ!コーヒー飲みにこれんわ!」 意気揚々とし…

8/11 夏が足りない

夏が足りない。圧倒的に。夕焼けが港町を覆うこの時間になるたびにいつも思う。 はまのじいちゃんたちにとってはすでに白昼かもしれないが、私にとっては8時はまだ早朝だと思いたい。チェックアウトするお客さんと店の前で話をしていると、アインシュタインみたいな髪型のじいちゃんが自転車を止めて近づいてきた。何やら話しかけてくるのだが、申し訳ないことに全く聞き取れない。このじいちゃんに始まったことじゃない。何度聞き返しても同じ日本語とは思えないほど早口で口籠もって喋るじいちゃんの話が聞き取

10/8 それだけが郷土愛のしるし

一縷の望みを託して、閉店の10分前に駆け込んだマルナカの地元野菜コーナーには「インゲン豆 1…

10/6 パブリック心霊スポット

夏と同じテンションで水やりしていると、根腐りしはじめてきたのに気づいて、慌てて屋外のファ…

9/24 菓子折を受け取らないまち

突然吹き回しを変えてくる秋の風に、皆いそいそと羽毛布団を引っ張り出している頃。はまには祭…

9/18 日曜閉店前毎度渋滞絵巻

市の広報誌の一面に、「ハルノウタのホットサンドが食べられる喫茶店」として掲載された日の朝…

9/1 熱帯夜に思い出す朝0℃の日曜

この世の終わりかと思うほど寒くて暗くてまだ睡眠の足りない早朝。出勤前に15分でも時間があれ…

8/13 名前を知らない店に入る体験

アウトドア日和の連休。鹿島へ向かう車の行列は店の前まで伸びていて、駐車場の案内待ちの渋滞…

7/30 どうしようもなく愛しいはまの日々

7月の最終土曜日。毎年恒例の花火大会は、あたたかな明かりと美味しいものに集まった人と、北条の夏の風物詩を一緒に味わえた。母が作った冷たいお好み焼きをかきこみながら屋上で花火を眺めていた去年、翌夏この場所がこんなことになるなんて誰が想像しただろうか。花火前日の朝は、菱沼さんに突撃で連絡してテーブルと椅子を借り、炎天下の中、足腰の悪い村上さんを屋上へ登らせて、照明の調子を見てもらった。そう、はまのみんなで見上げる花火は、関わったものをすべからく巻き込むスタイル。 花火前日の夕方、