マーケティングの商談貢献をCRM上で表現するには!?
一般的にB2BビジネスはB2Cビジネスと比べると、マーケティングの貢献は見えづらいと言われています。昔の記事でも書きましたが、B2B (Business to Business)においては、購買の意思決定者は大抵本人ではなく別に複数存在し、また購買までにかかる期間も最低数ヶ月、時には1~2年かかる場合があるからです。しかし、プロセスのデジタル化と可視化により、マーケティングの商談貢献を表現することが可能です。この記事では、その詳細について見ていきましょう。
B2Bビジネスに於けるマーケティングの商談貢献とは
B2Bビジネスに於いては、B2Cと異なり個人ではなく組織を相手にするために、意思決定者が多く存在し、購入までのプロセスが複雑かつ長期化する傾向にあります。
そのため、商談管理ツールであるCRMを使い、長期間にわたりひとつの商談をしっかり追跡していく必要があります。ツールの中で、商談オブジェクトは通常のルールでは営業部門が作成、管理します。組織に商談が存在するかどうかは営業が判断する責任を持つことが殆どです。
では、商談化の前段である認知拡大やプロモーション、キャンペーンを実施するマーケティング部門は、商談に対して貢献していることを表現する手段はあるのでしょうか。
結論から言うと、あります!
商談としてCRMに登録されるまでに経由する複雑なプロセスに対して、自動的に、もしくは手動で商談に「フラグ」をつけることができます。この「フラグ」はキャンペーンIDと呼ばれるもので、特定のキャンペーンからの貢献があったことの印です。
Marketing Generated PipelineとMarketing Influenced Pipeline
マーケティングの商談貢献には、商談へのかかわり方によって2通りの種類が存在します。一つ目は、マーケティングキャンペーンの一連の活動の結果、商談が生まれた場合です。もう一つは、既存の商談がある組織の個人に対して新たなマーケティングキャンペーンを実施した結果、既存商談にポジティブなインパクトがあった場合です。
商談貢献は、貢献のあった商談に登録されている金額の合計 (商談金額)で測ることが多く、前者をMarketing Generated Pipeline (=直接貢献)、後者をMarketing Influenced Pipeline (=間接貢献)と呼びます。
CRMツールの中での両者の判別方法については、ツールの種類、キャンペーン実施のフォーメーション、ツールの運用ルール等によって多少異なりますが、Marketing Generated Pipelineについては商談の作成者がマーケティング関連部門になっているか商談作成の主貢献を表すフラグにマーケティング関連部門のキャンペーンIDが付いているかどうかで判断します。マーケティング関連部門のマーケティングIDが付いているけれどもそれ以外の場合はMarketing Influenced Pipelineと判断されます。
キャンペーンインフルエンスの考え方
CRMツールの代表格である、セールスフォースのSales Cloud、Marketing Cloudの場合を見てみましょう。セールスフォースには「キャンペーンインフルエンス (Campaign Influence)」という仕組みがあり、商談に登録されているコンタクト (Contact)の商談への関与イベントが発生した場合に、該当する商談に自動的にキャンペーンIDを付与することができます。
キャンペーンインフルエンスで付与されるキャンペーンIDには主キャンペーンソース (Primary Campaign Source)という概念があり、このフィールドに入っているキャンペーンが、商談に一番大きく貢献しているキャンペーンとなります。ちなみに、キャンペーンはすべてがマーケティング関連部門でオーナーになっている必要はなく、営業部門もキャンペーンIDを運用しているケースもあります。
キャンペーンへの貢献度を計測するにはいくつかの考え方があり、「初回接触」「最終回接触」を重視するモデル、もしくはどの接触も「均等分布」させるモデルもあります。商談貢献金額を計測する際は、特定のキャンペーンIDが付いているすべての商談の金額を一定のロジックに従って集計するのですが、どのモデルを選択しているかによりキャンペーンへの金額配分が変わってきます。組織の考え方に応じて設定を変えられる柔軟性がツールには備わっています。
参考情報:
マーケティング貢献の実際
このように、CRMツール上はマーケティングの貢献をデジタル化、可視化する手法が実装されているわけですが、実際にこれをビジネスで運営する際にはいくつかの注意点があります。ここでは大きなものを3つ挙げます。
1.営業部門としっかり仕組みの理解を共有する
一番重要なこととして、これらの仕組みを前提に、マーケティングの貢献とは何かを事前に営業部門長としっかり議論して理解を共有しておくことが必要です。ツール内でのフラグ付けは複雑なロジックに従って行われており、営業部門からするとマーケティング部門の貢献を直接理解しがたい場合があります。特に、Marketing Influenced Pipelineの考え方はしっかり共有しておかないと受け入れられない可能性があります。
また、マーケティング部門が知りたい貢献は、商談作成日ベースの累積金額であるのに対し、営業部門が知りたい貢献は商談クローズ予定日ベースで今生きている商談の金額であることが多いため、マーケティング観点、営業観点のレポートは別々に作成しつつ、期待値設定をあらかじめ両者できちんと行う必要があります。
2.Marketing Generated Pipeline、Marketing Influenced Pipelineの定義を組織全体で同じにする
これは特に大きな企業において、複数の事業部、国でCRMを運用する場合に、運用組織が複数あると、CRMの設定や用語の定義がバラバラになってしまい、同じ尺度で貢献を測れないという状況が良く発生します。CRMのインスタンスが複数に分かれる場合もあるため、どういうCRMの設定にするのか、キャンペーンインフルエンスモデルを使うのかどうか、使うとするとどのモデルにするのか、そして貢献金額をどのように集約してレポートにするのか、など細かいオペレーションを同じにするように関連部門で協議が必要です。
3.マーケティング貢献度の規模感、ゴール設定を関係者で行う
B2Bにおけるマーケティング貢献の大きさはビジネスモデルや組織体制等によって変わってきますが、数%から30%くらいがひとつの目安となるでしょう。また、Marketing Influenced Pipelineを貢献に加えると、一般的に数字が大きく見えがちで、かつ集計方法によっては複数部門の合計を足すと重複カウントになり全商談金額よりも大きく見えてしまう場合があります。このため、レポーティングの方法、貢献の規模感などをあらかじめマーケティング部門と営業部門で期待値設定をして合意することが求められます。
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いかがでしたでしょうか。マーケティングの商談貢献を測る手段はあるけれども、あらかじめ関連部門を巻き込んで良く準備をして情報共有をしておくことが、B2Bにおけるマーケティングの貢献を関係者間で理解するための重要な行動になることがお判りいただけましたでしょうか。
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最後までお読み頂きありがとうございました!それではまた!
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