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改善するにはまず認知、計測が必要

こんにちは! 米田 @ マーケティング変革実行中です。

変革活動をやっていて、なかなか思うように物事が進まないことがあります。みなさんもそういう経験がないでしょうか?今回の記事では、このような体験の裏側にある事情について掘り下げてみたいと思います。

物事を変えるのに一番苦労することは何か?

変革と言うと、いままで誰も思いつかなかったような奇策を展開するようなイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、実際は変革のほとんどのケースでは「当たり前のことを当たり前にできるようにする」ことを行います。

しかし、その割には変革は思うように進みません。その理由は変革を「始める」部分にあることが多いです。

人は自分に都合がいいことしか耳に入らない

たとえば、組織の心理的安全性を上げるためのトレーニングを実施するとします。トレーニングは一般社員と管理職・上級管理職に分けて実施し、一般社員からは心理的安全性を確保するうえで上司に直してほしいことを聞き取りします。そして聞き取り結果を管理職・上級管理職のトレーニングの中で見せるのです。

すると何が起こるかというと、管理職側は3分の2くらいの人が「みんなやっちゃってるね。(自分じゃない誰かが)大変だね、でも自分は大丈夫」といった具合に、一般社員の聞き取り結果を自分事に捉えた人はかなり少ないという残念な結果に終わりました。

このように、変革を行おうと思ったときに、人は自分自身が変革の障害になっている、自分自身がアクションを取る必要があるという「不都合な事実」をなかなか認識しないという特性があります。この認識が進まないと、変革の次のステップには進みません。

このことは、養老孟司先生による20年前のベストセラー『バカの壁』でも触れられています。人は「自分が知りたくないことについて自主的に情報を遮断してしまっている」のです。

その人が知りたくないことを外部から気づかせるのは思いのほか大変です。少なくとも異なる形で何回も何回もメッセージを出し続けて気づいてもらう必要があります。これは、マーケティングキャンペーンで顧客に何回も伝えないと認知されないことと同じですね。

計測してみないと必要性がわからない

他のパターンとしては、「理論的には理解するけど、それをやることで本当に変革になるの?」と、行動の効果を疑問視するケースです。変革はやってみないと効果や必要性が分からないという「にわとり・たまご」のところがあります。「迷ったときはまずやってみよう」と言ってくれる人たちばかりであればいいのですが、現実には「効果がある、必要性があることが分からないとやらない」という人の方が多いため、ここでも変革が止まることになります。

チェンジマネジメントの実践

そこで必要になってくるのが「チェンジマネジメント」という考え方です。前にも記事で書いているのでぜひご覧ください。

チェンジマネジメントは以下のように定義されています。

チェンジマネジメントとは、組織の成功や成果を導くための変革を個人が上手く受け入れられるよう準備し、環境を整備し、そして個人をサポートし続けるための体系的なアプローチです。

出典: 日本アタウェイ

つまり、通常は、変革の実施は組織の機能をどう変えるか、それに伴ってどういう変更を実装するのかのプロジェクトマネジメント (技術的側面) に集中しがちですが、チェンジマネジメントでは、変革プロジェクトを推進する上で組織の中の人のケア (人的側面) に重点を置きます。

チェンジマネジメントという言葉はともかく "概念" そのものは決して新しいものではなく、日本でも昔から色々な教育法・指導法で言われてきました。

有名なものでは、明治時代の軍人、山本五十六による言葉があります。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ

山本五十六「教育における4段階法」

似たような教えは、第一次世界大戦中のアメリカで職場訓練のために生まれたOJT研修 「4段階職業指導法」にもあります。

Show(やってみせる)、Tell(説明する)、Do(やらせてみる)、Check(評価や追加指導をする)

まず認知活動から始め欲求を上げるため計測する

山本五十六の言葉もOJT研修の方法も、「やってみせる」「説明する」ところから始まっています。これは、チェンジマネジメントで定義されている「ADKAR® Model」

Awareness (認知) - 変革の必要性の認知
Desire (欲求) - 変革に参加し、サポートしたいという欲求
Knowledge (知識) - 変革の方法についての知識
Ability (能力) - 必要なスキルや言動を実行する能力
Reinforcement (定着) - 変革を維持するための定着

出典: 日本アタウェイ

でいうと、「Knowledge」、そして「やらせてみる」「評価する/褒める」は「Ability」の段階にあたります。一方、これらの教えは、教えられる側がすでにある程度やる気になってスタートラインに立っていることが前提になっているように見えます。前述のように、研修の必要性を感じていない、自分が期待値に届いていないと認識していないような人に対しては、研修の必要性や目標設定、いまの自分と目標とのギャップを計測して認識してもらう、といった動機づけの段階「Awareness」「Desire」が必要になります。

変革プロジェクトを始めとする研修プログラムでは「Knowledge」「Ability」の段階から始めてしまいがちですが、プロジェクトをうまく遂行するには、まず「Awareness」「Desire」の段階にもしっかり時間をかけてステップを踏む必要があります。そうしないと、なかなかプロジェクトが思うように進行しなかったり、手戻りが発生したりすることが多くなります。

また、プロジェクトが一通り進んだ後の、「Reinforcement」の段階も等しく重要です。人は一度覚えてもすぐに元の楽な方に戻ったり、人が異動して知識や能力のない新しい人が入ってくることも考えられるからです。変革した内容を継続していくには反復して実施するなどの定着活動も必要になります。

自己成長にも認知、計測は必須!

過去を振り返ってみると、学生のときは「Awareness」や「Desire」というのは学校や塾などで頻繁に行われていたように思います。「Reinforcement」も復習という形で行われていました。学生時代はテストや偏差値があって目標との比較も明確でした。

ただし、社会人になると、このような動機づけがなくなってしまうことが多く、成長を続けるには成長させたい要素を「計測し続ける」ことが必要になります。私も社会人になってからまもなく、当時の上司に「改善するにはまず計測しないとね」と言われて、はっとしたことを覚えています。

変革活動は施策の順番が大事!

つまり、結論としては、変革活動を行うには、チェンジマネジメントで定義されている「ADKAR」をこの順番で着実に実施するが重要、特に「AD」をすっ飛ばして「K」から始めようとするケースも多く見受けられますが、手間でも「AD」のステップをきちんと踏むことが完走するための必要条件である、ということになります。これは私も身をもって日々体感していることで、チェンジマネジメントの知識はかなり役立っています。

それでは、また!

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