PayoneerとStripeを使って現地銀行口座が作れない問題を解決する
(※本記事はエストニア企業を対象としていますが、PayoneerとStripeが対応さえしていれば、米国などの他国企業でも可能なアプローチです)
送金サービスとオンライン口座を使用する動機は?
紆余曲折あって、本年1月にエストニア法人OmusBridge OÜを立ち上げました。なお、本稿の趣旨から脱線するため、紆余曲折については以下の記事をご参照ください。
当たり前の話ではありますが、エストニアに移住して業務を回し始めたとしても、仕事をして→報酬を自社の銀行口座に入金してもらい→配当を自社の銀行口座から出金して→それを自分の銀行口座に入金し→生活費を自分の銀行口座から出金できないことには生活していくことができません。この一連のキャッシュフローを実現していくためには自社の銀行口座と自分の銀行口座が必要になります。幸いにもクレジットカードの使用率が高い欧州に位置するエストニアでは、現金はクレジットカードを使用してどうとでも対応することが可能です。したがって、自分の銀行口座は日本国内の銀行口座で取り急ぎの問題なく、必要になった際にエストニアのLHV銀行に駆け込んで口座を作れば問題ないでしょう。
しかし、自社の銀行口座は現地に行ってから開設するとなると、移住から操業までの間にタイムラグが生じるリスクを孕みます。そもそも英語が達者でない私は、現地で英語面接を経て口座開設できる自信が全くありません。
報酬の入金口座がない場合、十中八九契約で詰み、生活費が稼げず、紆余曲折あって餓死するという流れは想像に難くありません。そういうわけで、事業を回すため、国内にいるうちに、オンライン上の手続のみで、英語はGoogleやDeeplの翻訳におんぶに抱っこで、自社の銀行口座開設を完結させる必要が出てきました。そして結論から言えば、表記のPayoneerとStripeを使用して、自社の銀行口座に代わる口座の開設をDone!することができました🎉
Payoneerは日本語対応の銀行口座(仮)
そもそも、Payoneerとは米国のPayoneer Inc.が運営するオンライン送金・支払サービスです。
語弊を生むかもしれませんが、端的に言うと銀行口座の代わりとなる外貨の入出金用の口座となります。USD・EUR・GBPをデフォルトで扱うことが可能です。さらに、申請ベースで他の国の外貨も追加可能です。なお、私は日本円の審査は通りませんでした。各通貨の口座には各々IBANコードが振られます。それ故にPayoneerの口座は銀行口座の代替なりうるわけです。
さて、Payoneerのようなオンライン送金・支払サービスはWorldfirstやPayseraなどがありますが、(1)日本語のカスタマーサービスが使えること(2)維持手数料がかからないこと(3)サイトの外観や企業情報から、経営が安定してそうと思われることからPayoneerを選定しました。特に日本支社のカスタマーサービスは実際使ってみてとても親切丁寧でCS高めでした!
StripeはDeveloper Friendlyな決済プラットフォーム
「口座さえ手に入ればキャッシュフロー回せる!」。当初はそのように考えていたのですが、Payoneerで請求処理→クライアントが支払→Payoneerで領収処理というフローを回すのはどう考えても手間であることに気づきました。1クライアント相手に業務委託契約として月次処理するのならかろうじて対応できなくもないのですが、不特定多数の法人や私人と商取引したり、アプリケーション販売やサブスクリプション処理を行うようビジネスがスケーリングした場合にも手入力では限界があります。そこで導入するのがStripeです。
Stripeはオンライン決済サービスです。オンラインショッピングなどでの決済やWebサービスのサブスクリプションにはStripeなどの決済サービスが利用されていることが多いです。このような決済サービスは、ユーザにとって容易に課金するための手段となり、管理者にとっては容易に決済を管理するための手段となります。本稿では、StripeをPayoneer口座へ入金するための手段として用います。
競合サービスとして主に挙げられるのはPayPalやTransfer wiseでしょうか。そのなかでStripeを選定した理由はDX(Developer Experience)にあります。Webエンジニアで生計を立てている身としては、最小限の導入は非常に簡単で、ビジネスに合わせたカスタマイズも可能なそのスケーラビリティーは非常に魅力的です。また開発ドキュメントも読みやすく、テストAPIもデフォルトで用意されています。ありがたい限りですね。最小限の実装であれば1時間もかからずに決済画面を作成できます。ちなみに、Stripeもアカウントの維持手数料はかからず、決済ごとの手数料引き落としとなります。スタートアップ企業にとってはこれもありがたいですね。
Payoneerの導入手順!辛いのは書類提出!
※以下、法人アカウントの作成手順となります。
1. 以下URLからアカウント登録
https://www.payoneer.com/ja/how-to-register/
2. アカウント登録の途中でいくつかの書類提出や質問事項への回答が求められます。自分が提出を求められたのは以下の情報です。
(1) 運転免許証
(2) 法人の詳細に関する質問
(3) 常務取締役の情報
(4) 役職/肩書
(5) その他の法的書類
(6) 連絡担当者の手紙
(7) 利益所有者の情報
3. アカウント登録し、書類等がApprovedされれば口座は有効化されます!確認センターにアクセスし、No open requirementsであればPayoneer側の準備は完了です!
私は1人企業の代表取締役であるため、(3), (6), (7)の提出はよく分からず、サポートセンターに電話して状況を説明しました。すると、どうにかしてくれて口座を有効化していただけたようです。正しい書類を提出してもNot Acceptedになることもあるので、無理に全部を提出しようとせず、分からなかったらサポートセンターに電話するのがいいと思います。
Stripeの導入手順!日本のパスポートはIDになれないぞ!
※ 以下、法人アカウントおよびCheckoutでの決済までの手順となります。
1. 以下URLから会員登録する。
https://dashboard.stripe.com/register
2. アカウント登録の途中でいくつかの書類提出や質問事項への回答が求められます。自分が聞かれた記憶があるのは以下の情報です。
(1) Stripe管理者の情報
(2) 事業/ビジネスの情報
(3) Checkoutを使用するWebサイトの情報(ドメインなど)
3. 2.が終われば本番環境用のAPIキーが使用可能になります。
4. DashboardからCheckoutの決済に使用する(=売る)商品やサービスを登録します。「新規登録」をクリックして商品名とか値段とか画像とかを設定します。
5. 商品登録後、商品画面に遷移し、[Checkoutで使用]をクリックすると、Checkout スニペットジェネレータが表示され、コピペしてそのまま使用できるHTMLが表示されます。
6. 5.で表示された情報に加えて、開発ドキュメントとGitHubの以下リポジトリを参照するといいかもしれません。GitはCloneするともっと楽です。
(1) https://stripe.com/docs/payments/checkout/client
(2) https://github.com/stripe-samples/github-pages-stripe-checkout
7. 私はVue.js + Firebaseで実装しました。実装して決済画面に遷移すると、以下のようなどこかで見たような決済画面が表示されます。この画面自体はStripe側で用意してくれています。何もしなくていいの、とても助かりますね!決済の実装はすごく気を使うし、手間もかかるんですよね。エンジニア的に。
さて、このなかで大変だったのは、IDの提出です。IDの例としてパスポートと記述があるのですが、ここでいうIDは本人と住所が確認できるドキュメントを指します。パスポートの写真ページには住所の記載はないため、自分の場合、パスポートで何回申請しても全然通りませんでした。その後、マイナンバーカードをIDとして使ったところ、一発で通りました。
PayoneerとStripeにレッツトライ!
以上が簡単ながら、PayoneeとStripeの紹介と導入手順となります。このnoteが少しでも皆様のお役にたったなら幸いです。ドキュメント提出こそ大変でしたが、個人的には使ってみて体感いい感じです!
質問・ご意見はお手柔らかに。