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最後に何を入れるか

年末に父が他界した。

「父の棺に何を入れるか」について

母とわれら三姉妹はそれぞれの意見を出し合った。

・あちらの世界で活動できるよう、
 よく着ていた服と靴
・好物のイチゴ、ぶどう、やきとり、
 鉄火巻き、カニチップス

このあたりは全員異論無し。

母が、「働いていたときに父がつけていた手帳」を入れようとした。

これに対し、「あの世でも働けということか!」「のんびりさせてやれ」と娘からは反対の声があがる。なにより、父の足跡が消えてしまうのは、もったいない気がした。わが父ながら、几帳面な字で細かいことまでびっしりと記録されていたからだ。

次に、「お父さん野球が好きだったから」と、母が、ドラゴンズ選手名鑑を過去10年分くらい入れようとしたのにも反対意見が噴出した。

「多すぎる」「せめて最新巻1冊にしとこう」という意見が採用されたが、今思えば、成績のよかったシーズンの1冊を選んでも良かった。ドラゴンズの好成績…最近聞いてない気もするが。

鉄火巻きは、姉が手作りして告別式に持参した。

わたしからは、父が好きだったうどんの絵を描いて棺に入れようと決めた。

うどんの絵は、さして上手くもなく、おいしそうでもなく出来上がった。
でも、描き直す気力はなかったので、そのまま父の口もと近くにそっと滑り込ませた。

さしてパッとしないうどん


「あんまり、うまないな(あまり美味しくない、の意)」と言ってうどんをすする父の姿が目に浮かぶ。

許せ、お父さん。

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