ハイブリッド語の例(語形成・語源の観点から)
連日、heldioはハイブリッド語(異なる言語に由来する語や接辞が組み合わさってできた語)の特集でとても盛り上がっています。
本記事は、日本語におけるハイブリッド語の例を考えてくださいというお題への返答です。私は、カタカナ語の場合には、対応する英単語の起源にまで遡ってみると面白いのではと考え、語形成や語源の観点からハイブリッド語について考えてみました。いくつか思いついた例を共有したいと思います。
「レーザー脱毛し放題キャンペーン」
あまり一般的には認知されていないと思いますが、「レーザー」に対応する英語のlaserはlight amplification by stimulated emission of radiationの頭文字を取って作られた頭字語(acronym)です。「レーザー」の英語での正式名称を構成する単語の起源にまで注目すると、「レーザー脱毛し放題キャンペーン」の成り立ちは以下のように分析することができます。
「レーザー」の起源にまで遡ることで、この複合語は5つの言語に由来することがわかりました。ちなみに、「レーザー脱毛し放題」までは私が思いついたのですが、「キャンペーン」まで含む例があることに気づいたのは、Googleで実際の使用例を探していた時でした(数件ヒットします!)。
「hellogる」
最近ゼミ生の一部で、「hellogる」という動詞が使われているのを知り、学生の創造性に感銘を受けました。もちろん、「堀田先生のhellogで調べる」という意味です。「英語学や英語史に関連することをインターネットで調べる場合には、Googleのような検索エンジンではなく、まずhellogで調べるようにしましょう」と私はゼミでよく言っているのですが、学生たちは私のメッセージを「ググるな、hellogれ」のように単純化して理解しているそうです。
ご存知の通り、hellogはHistory of the English Language Blogの略です。以下に図式化したように、頭字語(acronym)と混成(blending)の二つのプロセスが組み合わって形成された語だと考えられます(堀田先生、間違っていたら教えてください(笑))。混成は二つの単語を混ぜ合わせる語形成のことで、有名な例には、brunch(breakfast + lunch)やmotel(motor + hotel)があります。
ちなみに、blogはクリッピング(clipping)という語形成により、複合語のweblog(web + log)からblogの部分のみを切り取って生み出されたと考えられています。クリッピングの代表例には、bus (omnibus)やad(advertisement)があります。
hellogの成り立ちがわかったところで、「hellogる」を構成するそれぞれのパーツの由来を見てみましょう。
語源不詳のものもありますが、多くの言語に由来する表現であることがわかります。
おわりに
語形成の観点を取り入れると、ハイブリッド語の議論はさらに盛り上がるのではないでしょうか。英語の頭字語や混成語由来のカタカナ語に是非注目してみてください!
注
カタカナ語に対応する英単語の起源は、OEDを使って調べました。究極的な起源である言語ではなく、直接的な借用元の言語に言及しました。