菊地翔太(英語史)

英語史研究者の菊地翔太と申します。所属は専修大学 文学部 英語英米文学科です。「英語史…

菊地翔太(英語史)

英語史研究者の菊地翔太と申します。所属は専修大学 文学部 英語英米文学科です。「英語史の観点から身近な問題を考える」をテーマに掲げ、これから自分のペースで記事を投稿していきたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

マガジン

  • TruskのLanguage Change

    R. L. TraskのLanguage Changeを基に、言語変異・変化に関連する話題をお届けします。

  • Trudgillの英語史

    Peter TrudgillのThe Long Journey of English : A Geographical History of the Languageを基に、英語史に関連する話題をお届けします。

最近の記事

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自己紹介

はじめまして。菊地翔太と申します。英語史を研究しています。所属は専修大学 文学部 英語英米文学科です。緑に囲まれたのびのびとした環境で、日々、英語史の研究と教育に打ち込んでいます。「英語史の観点から身近な問題を考える」をテーマに掲げ、これから自分のペースで記事を投稿していきたいと考えています。特に、私の専門領域や趣味に関連する英語史ネタを、可能な限りわかりやすく、かつインフォーマルな形で提供していきたいです。どうぞよろしくお願いいたします。 研究上の関心英語の多様性や変化に

    • 日本語コーパスの面白さに開眼!―『日本語コーパスの世界へようこそ』を読んで

      私は英語史を専門的に研究していますが、ゼミなどで英語史について話していると日本語の問題に議論が発展する機会が日に日に増してきているように感じます。「増してきている」というよりは、意図的に「増やしている」と言った方がよいかもしれません。というのも、『言語の標準化を考える―日中英独仏「対照言語史」の試み』(2022年)の出版以降、今日の学界では言語を横断した視点がこれまで以上に求められていることを強く意識し、英語史の諸問題を考える際に「日本語ではどうなんだろう?」と日頃からよく考

      • 「英語史ライヴ2024」で出題した英語史クイズ(解答・解説つき)

        昨日(9月8日)、「英語史ライヴ2024」に参加してきました!英語史を専攻する先生方、学生のみなさん、heldioリスナーのみなさんが全国各地から一堂に会し、朝から晩まで大盛り上がりの英語史イベントでした。多くの方と交流することができとても楽しかったです。このような前代未聞のイベントを企画し、運営してくださったkhelfのみなさん、主宰の堀田先生には心から感謝いたします。本当にお疲れさまでした。 私は出題者として今回の目玉企画の一つである英語史クイズに参加しました。クイズで

        • 言語使用の世代差から言語変化の手がかりを掴もう(TruskのLanguage Change)

          本日は、3年生のゼミで講読しているTruskのLanguage Changeに関連する話題をお届けします。先日のゼミ(7月10日です…)では、Chapter 5: Change in pronunciationを扱い、発音の変異や変化について議論しました。言語変化への洞察をどのように得るか、という方法論的な問題についても議論が及んだので、本記事では授業中に盛り上がったapparent timeという手法を取り上げたいと思います。 real timeとapparent tim

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        • TruskのLanguage Change
          2本
        • Trudgillの英語史
          1本

        記事

          8月の英語史活動(hel活)の振り返り

          気がつけばあっという間に8月が終わってしまいました。Trudgillの英語史シリーズや前編で更新が止まっている記事の後編など、色々と書きたい記事があったのですが、8月は怒涛の一か月でnoteに割く時間をなかなか確保できませんでした…この記事では、イベント盛りだくさんの8月の英語史活動のハイライトを振り返ってみたいと思います。 茨城帰省 お盆休みには、実家で一息つくことができました。とはいっても、出先には英語史ネタが至る所に転がっていて、頭の中は常に英語史モードでした(笑)

          8月の英語史活動(hel活)の振り返り

          恐竜の名前の由来で親戚と盛り上がった話(日常生活に潜む英語史ネタ)

          今回は、お盆休みの帰省中に、親戚との集まりで起こった予期せぬ英語史イベント(アクシデント?)についてお話しします。 最近私の甥っ子たちはすっかり恐竜にハマっています。Tシャツやぬいぐるみなど、恐竜に関するグッズを常に身に付けています。私自身も幼少期に恐竜が好きだったので、とても微笑ましく思っています。お盆休みの親戚の集まりでも、甥っ子たちは恐竜の本を楽しそうに読んでいました。 「おいたんにも見せて」(甥っ子たちにそう呼ばれています(笑)) この一言から、場の空気が一変し

          恐竜の名前の由来で親戚と盛り上がった話(日常生活に潜む英語史ネタ)

          「英文法・用法 ネイティブもはまる落とし穴」―『CNN English Express 2024年9月号』特集の紹介

          毎月楽しみにしている英語学習雑誌『CNN English Express』の最新号(2024年9月号)に、私の関心にどストライクな特集が掲載されていましたので情報を共有します(あっ、「どストライク」もハイブリッド語だ(小声))。「英文法・用法 ネイティブもはまる落とし穴」と題した特集です。特集の主旨は以下の通りです。 ここから読み取れるように、本特集の特徴は規範と記述のバランスが取れた解説です。規範と記述という二項対立に言及されてはいませんが、「文法には一定のルールがある」

          「英文法・用法 ネイティブもはまる落とし穴」―『CNN English Express 2024年9月号』特集の紹介

          ハイブリッド語の例(語形成・語源の観点から)

          連日、heldioはハイブリッド語(異なる言語に由来する語や接辞が組み合わさってできた語)の特集でとても盛り上がっています。 本記事は、日本語におけるハイブリッド語の例を考えてくださいというお題への返答です。私は、カタカナ語の場合には、対応する英単語の起源にまで遡ってみると面白いのではと考え、語形成や語源の観点からハイブリッド語について考えてみました。いくつか思いついた例を共有したいと思います。 「レーザー脱毛し放題キャンペーン」 あまり一般的には認知されていないと思い

          ハイブリッド語の例(語形成・語源の観点から)

          faux pasの複数形を巡る問題(前編)(時事英語で英語史)

          時事英語を勉強していたところ、思いがけない学びがありましたので共有します。 みなさんはfaux pasという表現をご存じでしょうか。これは、「(社交上の)失言、非礼、エチケット違反」を意味する表現で、初期近代英語期(1500-1700)にフランス語から借用されたものです。 この表現は様々な点で興味深いのですが、今回の記事で取り上げるのは形態と発音の問題です。以下、基本情報を確認しておきます。 まず、形態の観点から見ると、faux pasはいわゆる単複同形で、単数形にも複

          faux pasの複数形を巡る問題(前編)(時事英語で英語史)

          『英語語源辞典』の新装版が届きましたー!

          『英語語源辞典』の新装版が届きましたー!

          時事英語における品詞転換の例(TruskのLanguage Change;時事英語で英語史)

          本日は、3年生のゼミで講読しているTruskのLanguage Changeに関連する話題をお届けします。先日のゼミで、Chapter 4: Creating wordsを扱い、語形成についてディスカッションしました。プレゼンテーションの担当者が出題するクイズをみなで楽しく解きながら、語形成について理解を深めることができました(クイズは難問も多く解きごたえがありました!また別の記事でご紹介できればと思います)。 ゼミが終わり語形成への意識がちょうど高まっていたタイミングで時

          時事英語における品詞転換の例(TruskのLanguage Change;時事英語で英語史)

          英語拡大史における記念碑的な出来事(Trudgillの英語史)

          今学期の授業では、Peter TrudgillのThe Long Journey of English: A Geographical History of the Languageを講読しています。本書は社会言語学の大家による英語史の概説書です。言語の使用者達を前景化しながら、英語の地理的な拡散を描いており、とても読み応えがあります。また、世界英語(World Englishes)研究の最新の知見が盛り込まれている点も特徴の一つです。 本書を読む際にはメモを取りながら様々

          英語拡大史における記念碑的な出来事(Trudgillの英語史)

          英語史学習の記録にブクログを!

          こんにちは。先日の自己紹介記事にたくさんのスキをありがとうございました。今回から本格的に英語史関連の話題を提供していきたいと思います。 今回は今年から私のゼミで新しく始めた取り組みについてご紹介します。 私の所属する専修大学文学部では卒業論文が必修となっています。卒業論文は4年間の学修の集大成という位置づけなのですが、例年、長期的な計画を立てずにギリギリになって動き始める学生が一定数いるので、締切間際は面談のアポが殺到しいつも大変な思いをしています(私自身も学生時代に同様

          英語史学習の記録にブクログを!