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第29回:「喜び」に導く代理体験

人は「自己効力感」を得ることができると、目的が達成しやすくなります。というのも、「自己効力感」はたくさんの成功体験がベースになっていて、こういった成功体験が、「自分は出来るんだ」という前向きな姿勢を生むからです。

成功体験を別な言葉にすると「喜び」と言い換えることができるので、人はたくさんの「喜び」を持つことが出来れば、「自己効力感」を得ることが出来るようになり、目的を達成できる人生を歩んでいけるようになるでしょう。

「自己効力感」とは、目標を達成するための能力を自らが持っていると認識することであるため、「自らの在り方を積極的に評価する」という「自己肯定感」よりも一段階上の意識といえます。

この「自己効力感」は、カナダの心理学者バンデューラによって定義されたもので、以下の6つの経験によって得られるとされています。

1.達成経験
最も重要な要因で、自分自身が何かを達成したり、成功したりした経験
2.代理経験
自分以外の他人が何かを達成したり成功したりすることを観察すること
3.言語的説得
自分に能力があることを言語的に説明されること、言語的な励まし
4.生理的情緒的高揚
酒などの薬物やその他の要因について気分が高揚すること
5.想像的体験
自己や他者の成功経験を想像すること
6.承認
他人から認められること

前回は、【1.達成体験】について書いたので、今回は【2.代理経験】について、私なりの解説で書いていきます。

代理経験は一生続いていく

代理経験とは、自分と似ている他者の成功体験を観察することで「自分にもできそうだ」と思えるようになることです。

この代理経験は幼い頃から誰もが使っている経験です。例えば、身近にいる兄姉がしていることを真似てみるのも代理経験だし、母親の様子を観察しておままごとをするのも代理体験といっていいでしょう。

つまり、人は幼い頃から、誰かを真似るという代理経験をしていて、そういった代理経験から実際に体験をするようになり経験を積んでいくことになります。

また誰かに憧れを抱くというのも代理経験であり、憧れの職業など代理経験典型例といってもいいでしょう。子どものあこがれの職業は、テレビなどのメディアの影響や普段の生活の中で見かける職業が多いという傾向がありますが、思春期を超える頃になると、そういった憧れの職業も自分の性格などを照らし合わせるために、次第に具体的なものになっていきます。

幼い頃は単に印象だけで職業を選んでいますが、思春期くらいになると自分の得手不得手を判断できるようになるため、より自分に近いと感じる存在をモデルにしながら目標を立てて具体的に行動するようになっていきます。

さらに大人になって定職に就いた後でも、自分の理想となるようなモデルを探すという代理経験は続いていきます。会社の中の理想の上司を自分に当てはめてみたり、世の中で成功している人などを参考にして、自分の人生をよりよいものにしようと試みていきます。

自己実現は「代理体験」から始める

人は年齢を重ねていくごとに欲求がより具体的になっていきます。また、その年齢や年代によっても求める対象も変化していくため、代理体験となる対象もより個人的で具体的なものになっていきます。

たとえばお金持ちになりたいと思えば、たくさん稼いでいる人を参考にしたり、結婚したいと思えば、結婚した人の成功体験を真似たりします。また、大人になってからの欲求は「精神性」も加味されるようになるため、しがらみのない人生を歩んでいきたいと思うと、自由に生きているような人を参考にしたり、自分らしく生きたいと考えるようになると、自分という素材をフルに使って生きている人を参考にして、その人の生き方を取り入れてみたりします。

私の場合でいうと、これまで夢中になって出来る仕事と出会うことが出来なかったことから「夢中になれることを仕事にして生きていきたい」という思が強かったりします。また「静かな環境で集中して何かに取り組みたい」とか「時間に縛られずに緩急を付けながら自分のタイミングで仕事をしたい」という「集中して何かをしたい」という欲求を持つようになっています

そういった中で、私が代理経験としてモデルにしている人が、このサイトの記事で参考例として何度も出させて貰っている野球の大谷選手や将棋の藤井棋士、さかなくんといったところです。

私が彼らを参考にしている点は、彼らがあるひとつの対象に集中して取り組み、その対象を軸にして様々なことが出来るようになっているという点です。私は彼らから、ひとつのことをマスターできれば、それを応用する形で次々と新しいことが出来るようになるというところに関心を持っていたりします。

また好んで見ているテレビ番組等からも、私の代理経験の傾向を知ることができます。私が毎週欠かさず見ている番組は、「激レアさんを連れてきた」「マツコの知らない世界」「情熱大陸」「YOUは何しに日本へ」「世界!にっぽん行きたい人応援団」「サンドウィッチマンと芦田愛菜の博士ちゃん」というような、素人の人が好きなことを追求しているものだったりします。

こういった番組に出てくる人が自分の好きなことを追求している姿に自分もそうなりたいといった重ね合わせをしているといっていいでしょう。こういった番組に出ている人は、テレビで取り上げられるくらいなので、ちょっと変わったことに興味を持っている人が多いものの、そういった一般的でないようなことに本気で取り組んでいて、しかもそういったことで生計を立てながら人生そのものを楽しんでいる姿に勇気を貰っていたりします。

私が、こういった「何かに夢中になっている人」に興味を持つようになったのは、やはり、大人になって実際に仕事を始めてからであり、楽しいと思える仕事に出会えなかったからこそ、「楽しいと感じることを仕事にしたい」、「集中して仕事に取り組みたい」といった思いが生まれたといっていいでしょう。

「代理経験」は参考でしかない

当たり前のことですが、代理経験だけで実際に達成感を得て「喜び」を得られるわけではありません。参考にする人と「私」との間にでは興味の対象も異なるため方法論も異なります。

私が彼らから得たことは、「彼らの好きなことに対する純粋さ」や「ひとつのことに夢中になって楽しんでいれば必ず満足のできる結果が得られるようになる」ということです。

もちろん、学生の頃も楽しいと思えることを仕事にしたいと考え、様々な情報を集めて自分の性格や興味関心に沿うような仕事を選んだりしましたが、実際には社会に出ていろいろな経験してみてはじめて、より具体的な欲求を理解できるようになったといっていいでしょう。

そういった意味でも、代理体験だけでは理解できないことも多く、理想の自分に近づいていくためには、実体験を重ね試行錯誤しながら達成体験を得ていくしかありません。

「代理体験」あくまでも参考であり、代理体験で得た情報を使って実体験を積んでいくことで達成体験に導いていく手段といっていいでしょう。そして、その実体験を積む方法として、冒頭の6つの体験の2つ目以降の「言語的説得」や「生理的情緒的高揚」、「想像体験」「承認」を使っていくことになります。

代理体験より大切なことは自己理解

しかし、「言語的説得」「生理的情緒的高揚」「想像体験」「承認」を得る前にしなければならないこととして、「自己理解」があります。私は何が得意なのか、私の興味・関心は何なのか、何をすれば集中して物事に取り組めるのか、これから取り組めることに対してどれくらい費用を掛けることができるのか、どういったライフスタイルでそれを行っていくか、といったことを理解していかなければなりません。

もちろん、こういった自己理解をするには、実際にいろいろとやってみて、その上で自分に合うものを選んでいく必要があります。そして、実際に様々なことをやってみて結果、楽しいと感じること、長続きできること、達成感を得られることなど、総合的に「喜び」を感じることを選んでいかなければならないでしょう。

そして、そういった試行錯誤の末に、思いと行動がピタッと一致するようなことと出会えると、それが手応えとなって自分が何を求めていたのかを理解できるようになります。こういった瞬間を得ることが出来ると自己理解を完成させることができ、あとはその対象を極めていけばいいだけなので、人生がとても楽になっていきます。

こういった自分にとっての「喜び」が何なのかという試行錯誤を、本当は
学生の頃に終えているのが理想です。しかし、実際のところは、こういった試行錯誤を学生の頃に終えていて、学校を卒業してすぐに自己実現に向けて動けている人は僅かといっていいでしょう。やはり、実際に社会に出てみて経験すること、自分が何をしたいのか、どんな人生を送っていきたいのかを理解できるようになるのだと思います。

とはいえ、私が様々な人を観察して理解できたこととして、人は年齢に関係なく自分の人生の核心となるような「喜び」に出会うことが出来ると、自分らしく生きられるようになって、その人ならではのオリジナルの道を歩めるようになるということです。

自己実現とは内面的充足

先述した通り、人は核心となるような「喜び」に出会うことが出来ると、人生が非常に楽になります。その理由は、探すということをしなくてよくなるからです。というのも、探すという行為は、苛立ちを感じる行為でもあるからです。

部屋の中でちょっとしたものを探すだけでも苛立ちを感じるものなので、自分の人生のテーマを探すということは、その何十倍もの苛立ちを感じたりするものです。しかし、探している対象を見つけることが出来ると、あとはそれを使って生きていけばいいだけなので、苛立ちを感じることはありません。

自分の核心となるような「喜び」に出会うことができれば、あとは、それを毎日楽しんで生きていけばいいというシンプルさの中で生きていけるようになります。こういったシンプルさの中で生きられることが、達成体験としての「喜び」であり自己実現といってもいいでしょう。

最近、私がよく思うことは、自己実現とは内面的な充足であり、決して外面的な充足ではないということです。そもそも「喜び」という意識が内面的充足なので、こういった充足感を得られることが自己実現といっていいでしょう。

こういった内面的充足感を他者からは理解できないことだったりします。はたから見ると、内面的充足で生きている人の姿があやうく感じたりします。人は一般的に成功している人を代理体験として参考にするため、内面的充足で生きている人を見ると不安になったりするものなのです。こういった点が代理経験と実際の達成経験の違いといってもいいかもしれません。

何かを達成した人同士が意気投合することがありますが、その理由は内的充足の意味がお互いによくわかるからです。彼らの達成した対象も内容も異なっているにもかかわらず意気投合できるということは、経験の質の部分が一緒ということであり、精神面での充足が大きいことが理由といっていいでしょう。

次回は「言語的説得」

今回は「自己効力感」の「代理体験」と「喜び」の関係について書いてきましたが、これから先、多くの人が内面的な自己実現を果たしていけば、この世界は満足度の高い世の中になっていくと思います。そのためにも、自分がどうなりたいかという自己理解を深めながら、参考になる人を見つけ、そういった人の長所を取り入れながら、実際に経験していく必要があるといっていいでしょう。

といったわけで、次回は「言語的説得」をテーマに書いていきます。言語的説得とは、自分の思いを言語化するかということだと思います。自分の思いを言語化できるようになると、具体的な行動がとれるようになっていくので、自己実現にはとても大切な行為だと思います。そういったこと書いていこうと思っています。

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アキタロウ
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