見出し画像

【徹底解説】頭部前方位(FHP)改善ガイド~原因からエクササイズまで~

今回は、
インストラクターの方に向けて
現代人に多い悩みである
「頭部前方位(Forward Head Posture, FHP)」
を徹底的に解説します

FHPは見た目の問題だけでなく
首や肩の痛みなどを
引き起こす可能性もあります

今回のnoteでは
複数の論文に基づき
FHPの原因から改善のためのアプローチ
そして具体的なエクササイズを
詳細に解説します

論文の知見を活かし
クライアントの
姿勢改善に役立てましょう

なぜ頭部前方位(FHP)になるのか? 論文から読み解くFHPのメカニズム

まず
FHPがどのようにして生じるのか
考えていきましょう

1. 頭部前方位(FHP)の定義と特徴

「Effects of a Resistance and Stretching Training Program on Forward Head and Protracted Shoulder Posture in Adolescents」
ではFHPを

「上部頸椎の過伸展と下部頸椎の屈曲を特徴とする姿勢」

と定義しています

また
同論文ではFHPが以下のような
筋肉の短縮や弱化を伴うことを指摘しています

短縮しやすい筋

僧帽筋上部、後頸部伸筋群(頭板状筋、頸板状筋、頭半棘筋など)、胸鎖乳突筋、肩甲挙筋

弱化しやすい筋

深頸部屈筋群(頭長筋、頸長筋)

2. FHPの根本原因は?

いくつかの論文を総合的に見ると
FHPの根本の原因としては
日常生活における姿勢の崩れが
筋肉の不均衡を引き起こすことにある
と考えられます

重心の変化

頭部が前方に移動すると頭部の重心が変化し
首の後ろの筋肉(伸筋群)がより多く頭部の重さを支える必要が生じます
このため
伸筋群は常に緊張した状態になり短縮しやすくなります

深部筋の活動低下

首の深層屈筋群は
頭部の適切な位置を保つ役割を担っていますが
頭部前方位では
その役割が低下し、活動が抑制されやすくなります

筋の抑制

伸筋群が過剰に活動すると
深層屈筋群は活動を抑制されるため
結果的に筋力低下がおきます

3. FHPを助長する現代生活の要因

現代生活には
FHPを助長する多くの要因が
存在します

  1. 長時間のデスクワーク
    長時間のデスクワークやスマホは
    頭部前方位を助長します
    これにより
    首の伸筋群の緊張が慢性化し短縮が起こりやすくなります

  2. 運動不足
    全身的な運動不足は
    姿勢を支える筋肉全体の筋力低下に
    つながります

  3. ストレス
    ストレスは
    筋肉の緊張を高める要因の一つです

  4. 間違った姿勢習慣
    視覚依存となると
    無意識のうちに前かがみの姿勢や
    首だけを前に突き出すような姿勢をとりがちです

4. 神経系の影響:固有受容感覚の低下

FHPが長期間続くと
首の筋肉や関節の
固有受容感覚が低下することがあります

固有受容感覚は
筋肉の長さや関節の位置を感知する能力で
これが低下すると
筋肉のバランスが崩れやすくなります

また
神経筋制御の変容も
筋肉の協調的な動きを損なわせ
深層筋の活動低下と伸筋群の過活動に
つながる可能性があります

頭部前方位(FHP)改善の概要:論文に基づいた3つの柱

FHPを改善するためには
筋肉のバランスを整え
正しい姿勢を再学習する必要があります

ここでは
複数の論文に基づき
FHP改善のための3つの柱を解説します

1. 深層筋の強化:首を支える土台を作る

「Effects of Neck Exercise on High-School Students’ Neck-Shoulder Posture」では
深層屈筋群(頭長筋、頸長筋)を
強化する運動が
首の姿勢改善に効果的であることが
示されています

深層筋は
首の安定性を保ち
正しい姿勢を維持するために不可欠です

2. 伸筋群のストレッチ:緊張を解放し、可動域を広げる

「Effects of a Resistance and Stretching Training Program on Forward Head and Protracted Shoulder Posture in Adolescents」では
僧帽筋上部、胸鎖乳突筋、肩甲挙筋などの
短縮した筋肉をストレッチするが
重要と述べられています
これらの筋肉の緊張を解放することで
可動域が広がり
首の正しい位置を取り戻しやすくなります

3. 固有受容性トレーニング:身体の感覚を呼び覚ます

「Effectiveness of Proprioception Training for Patients with Forward Head Posture (FHP) - A Literature Review」では
固有受容性トレーニングが
FHP改善に有効であることが示されています

固有受容性トレーニングとは
身体の位置や動きの感覚を向上させる訓練で
このトレーニングによって
筋肉のバランスを整え
姿勢に対する意識を高めることができます

具体的なエクササイズ:論文で推奨されるアプローチ

ここからは
論文で推奨されている
具体的なエクササイズを解説します

クライアントの状態に合わせて
適切なエクササイズを選択し
指導していきましょう

1. 深層屈筋群強化エクササイズ

https://xn--kneeandbackcare-282n.com/?p=302

チンタック

  1. 仰向けになり、膝を立てる

  2. 後頭部を軽く床につけたまま、顎を引く

  3. 首の後ろ側が伸びる感覚を意識する

  4. この状態を5~10秒保持し、ゆっくりと戻す

  5. 10回繰り返す

2. 伸筋群ストレッチ

僧帽筋上部ストレッチ

  1. 片手を体の後ろに回し、肩を下げる

  2. 反対側の手で頭を横に倒し、首筋を伸ばす

  3. この状態を20~30秒保持し、ゆっくりと戻す

  4. 反対側も同様に行う

  5. 各3回繰り返す

胸鎖乳突筋ストレッチ

  1. 片方の手を体の後ろに回し、肩を下げる

  2. 反対側の手で頭を横に倒し、首筋を伸ばす

  3. 首を少し斜め前に倒し、胸鎖乳突筋を伸ばす

  4. この状態を20~30秒保持し、ゆっくりと戻す

  5. 反対側も同様に行う

  6. 各3回繰り返す

肩甲挙筋ストレッチ

  1. 片手を体の後ろに回し、肩を下げる

  2. 反対側の手で頭を斜め前に倒し、肩甲挙筋を伸ばす

  3. この状態を20~30秒保持し、ゆっくりと戻す

  4. 反対側も同様に行う

  5. 各3回繰り返す

3. 固有受容性トレーニングエクササイズ

頭部再配置エクササイズ

  1. 壁から90cm離れた場所に立ち、壁に視線の高さを合わせて目印をつける

  2. レーザーポインターを付けたヘルメットを被り、目印にレーザーを合わせる

  3. 首を前後左右にゆっくりと動かし、レーザーが目印に合うように調整する

  4. 動きを意識しながら、元の位置に戻す

  5. 上記を10回繰り返す

  6. 慣れてきたら、目を閉じて行う

眼球運動エクササイズ

  1. 壁に目印をつけ、目だけを左右にゆっくりと動かし、視線を固定する

  2. 次に、目と頭を同時に同じ方向にゆっくりと動かす

  3. さらに、目だけでターゲットを追いかけ、次に頭を動かす

  4. 上記を左右交互に行う

  5. ターゲット間の距離や速度を変えながら行う
    ①壁に目印をつけ、目だけを左右にゆっくりと動かし、視線を固定する
    ②次に、目と頭を同時に同じ方向にゆっくりと動かす
    ③さらに、目だけでターゲットを追いかけ、次に頭を動かす
    ④上記を左右交互に行う
    ⑤ターゲット間の距離や速度を変えながら行う

GDRE(視線方向認識エクササイズ
1. 準備
セラピスト: クライアントの前の椅子に座る
ターゲット: セラピスト前方のテーブルに、番号付きの箱を配置(水平、垂直、斜め方向)
クライアント: セラピストの真後ろに立ち、首の動きが見えるようにする(表情や視線は見えないように)
2. エクササイズのやり方
セラピスト: テーブル上の箱をランダムに首だけで見る
クライアント: セラピストの首の動きから、視線方向を推測し、自身で首を動かす動きをイメージする
回答: 推測した箱の番号を声に出して答える
3. エクササイズのポイント
運動イメージ: 首の動きをイメージしながら推測する
段階的な難易度: ターゲットの距離や複雑さを調整する

Effectiveness of the Gaze Direction Recognition Task for Chronic Neck Pain and Cervical Range of Motion: A Randomized Controlled Pilot Study

4. 姿勢矯正エクササイズ(肩甲骨を安定)

https://www.poworkout.com/app/mama/exercise/y-back-extension

Y-to-Iエクササイズ

  1. 両腕を横に広げ、肘を90度に曲げ、肩甲骨を寄せる

  2. 肘を伸ばし、腕をY字型になるように上げる

  3. さらに、腕をI字型になるように頭上に上げる

  4. ゆっくりとした動作で、上記を繰り返す

  5. 肩甲骨を安定させることを意識する

REHABILITATION FOLLOWING SUBSCAPULARIS TENDON REPAIR

プローン・ホリゾンタルアブダクション

  1. うつ伏せになり、腕を水平に外転させる

  2. 手のひらを下に向けて、肘を伸ばしたまま腕を上げる

  3. 肩甲骨を寄せながら、腕を上げる

  4. ゆっくりとした動作で、上記を繰り返す

5. 姿勢矯正エクササイズ(ストレッチ)

The Effects of Kinesiology Taping and Pectoralis Minor Self-Stretching on Posture Change and muscle tone in Adults with Rounded Shoulder Posture

小胸筋ストレッチ

  1. 壁際で、肘を90度に曲げて壁につけます

  2. 肘と肩の高さをそろえ、胸の筋肉が伸びるようにゆっくりと体を開きます

  3. 胸の筋肉が伸びているのを感じながら、20~30秒保持します

  4. ゆっくりと元の姿勢に戻します

  5. 左右交互に3回繰り返します


日常生活での意識

1. 姿勢への意識

Evidence-Based Treatment Strategies For "Text Neck Syndrome 」では、日常生活での姿勢の癖を認識し、改善することの重要性が述べられています
他の論文でも、スマートフォン使用時の姿勢を意識することが推奨されていたり
正しい姿勢を保つ習慣を身につけることの重要性が述べられています

生活の中で姿勢での姿勢の癖が出るときを認識して、それを修正する習慣をづけるよう意識してもらうことが重要です

2. スマートフォンやライフスタイル
「Evidence-Based Treatment Strategies For "Text Neck Syndrome ": A Review」では、スマートフォンの長時間使用が、FHPや首の痛みの原因となっていると指摘しています
また、他の論文では、スマートフォン使用時間の制限が重要であることが示唆されたり
現代の座りがちなライフスタイルやテクノロジー機器の長期利用が、姿勢の悪化につながる可能性が指摘されています

デジタルデバイスから距離をとることや座りがちな生活を改善することが重要といえます

3. 心身のバランスを整える

「Evidence-Based Treatment Strategies For "Text Neck Syndrome ": A Review」では、運動不足やストレスが筋肉の緊張を高め、FHPを悪化させる可能性があると指摘されています

心身ともにバランスをとるように日常からの運動やストレス対策も重要です

まとめ:論文の知見を活かしてFHP改善をサポート

今回の記事では、FHPのメカニズムから、具体的なエクササイズまで、論文に基づいて解説しました
FHPは、現代社会において誰もが抱える可能性のある問題です

大事なこと
クライアント一人ひとりの状態を丁寧に把握し、最適なアプローチでFHP改善をサポートしていくことだと思いますので、参考になれば幸いです

参考資料

いいなと思ったら応援しよう!