マガジンのカバー画像

姉弟日記

21
とある姉弟の日常を描くショートストーリーをまとめました。
運営しているクリエイター

#桜

姉弟日記について

とある姉弟の日常を描くショートストーリー。 ■ 登場人物 □ 姉 いつも笑顔で、何でも卒なくこなす少女。 ひよこが好きでグッズなどを集めている。 お姉さんだからと弟の世話を焼きがち。 □ 弟 おとなしくて物知りな少年。 愛読書は図鑑で、星が好き。人見知り。 いたずらで姉にちょっかいを出しがち。 □ 父親 優しくて、少し頼りないお父さん。 □ 母親 優しくて、病気がちなお母さん。 ■ 日記の種類 □ 白い日記 ほのぼのとした日常。 □ 黒い日記 信じるかはあなた次第

姉弟日記 『流水』

小川沿いの桜並木。 春の光に満ちた木漏れ日。 あの人の姿が、眩さに霞む。 優しげに微笑みながら、 何かを俺に手渡して── 「……!」 高校生の少年が目を開けると、 そこはマンションの一室。 何故か目から流れた雫を、 静かに指で拭き取る。 こんな夢を見てしまったのは、 昨夜見つけた懐かしい品のせいだろうか。 机の引き出しの奥にあった、栞。 桜の花びらをフィルムで閉じ込めた、 あの人の手作りの栞だった。 夢で見た日に聞いた、春のまじない。 だが、そのまじないには不

姉弟日記 『落花』

まだ姉の方が背の高かった頃。 小川と隣り合った、桜並木で。 水路のせせらぎと、 はらはらと舞う花吹雪の中を、 姉弟が一緒に歩いている。 桜を眺めながら先をゆく少女が、 何かを思い出したように── ぱっと、腕を前に突き出した。 「ねえ、知ってる?」 そう切り出した少女は、 父に聞いた"おまじない"のことを話す。 『桜の花びらを  地面に落ちる前に掴めたら、幸せになれる』 弟に向けた少女の手のひらには、 桜の花びらが一枚乗っていた。 そして。 そのまま二人が始め