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031 だからきっと、私はもう還れないのだった

 街灯ひとつないような田舎で東京のラブソングを聞いて、意味なんて一つも分からないまま大人になった。街が光る分、星は手を抜いているらしい。三百六十度の夜空は幅六メートルになって、北斗七星を探す癖はとっくの昔に喪失した。雨で湿った土の匂いが、びしょ濡れのコンクリートの匂いに変わった。好きだったわけじゃなかったから、別に良いけど。
 何もないと笑って話したけど、何もないところが好きだった。死ねばいつか自然に還るのが当然のような顔をしているところが好きだった。でも、あの人を選んだ。あの人の住む土地を選んだ。あの人と暮らすことを選んだ。だからきっと、私はもう還れないのだった。


031 だからきっと、私はもう還れないのだった

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