
映画『ピンク・パンサー4』 -無敵の最終兵器はバカ一択

シリーズの主役であるクルーゾー警部が活躍する最後の作品。この後シリーズは2作品続くが、一本は過去作品のフッテージを利用して製作されたコメディ版『死亡の塔』みたいな『ピンク・パンサーX』、もう一本は仰天ラストの『ピンク・パンサー5/クルーゾーは二度死ぬ』。いずれもピーター・セラーズは不在である(1980年に亡くなったため)。
勢力の落ちたフランスの犯罪組織のボスであるドゥーヴィエは、いまや国民的英雄となったクルーゾー警部を暗殺することで、自分たちの勢力を誇示しようと考える。早速計画を実行に移した彼らは、クルーゾーに罠をかけて呼び出すが、道中で彼の車を奪った強盗が代わりに殺される。
精神を病んで入院していたかつての上司ドレフュスは、クルーゾーが死んだときいて症状が急速改善。事件の担当として警察に復帰する。
一方、クルーゾーは自分が死んだことになっているのを利用し、ドゥーヴィエの捜査を続ける。ドゥーヴィエの組織が香港でアメリカのマフィアと取引をすることを知り、クルーゾーはマフィアのドンに化けて取引に参加。そこに使用人のケイトー、ドレフュス警部が乱入する…というストーリー。
ギャグのほとんどは空回り。前作の『ピンク・パンサー3』が007パロディの超大作でバカの限界をやってしまったため、潜入捜査がメインとなる本作は、どうしても地味な印象になってしまった。泥臭いドタバタがえんえん繰り返されるが、どれも爆笑につながらないのがツラいところ…
ただ、本作のアバン・タイトル(タイトルバックの前のエピソード)だけは、すばらしい。狩猟中のボスが部下から報告を受ける緊迫のシーンから始まり、オフィスビルでのコワモテたちのド迫力の会合。コメディ映画のオープニングとは考えられず、間違って違う映画をレンタルで借りてしまったと思い、5分ほど再生してVHSテープをデッキから取り出してラベルを確認したほど。
一見ミスマッチな演出だが、笑いを取る主人公以外をシリアスにすることで、より主人公の笑いが際立つ手法。これは他のコメディ映画でも見かける高等戦術。
しかし、ラストでドゥーヴィエもマフィアもドタバタに参加してしまい、アバン・タイトルで仕掛けた演出が台無しになったのが非常にもったいない。残念ながら、有終の美とはならなかった。
監督:ブレイク・エドワーズ
音楽:ヘンリー・マンシーニ
ピーター・セラーズ(羽佐間道夫)/ハーバート・ロム(内海賢二)/ロバート・ウェッバー(阪脩)/ダイアン・キャノン(小宮和枝)/ロバート・ロジア(安田隆)
※吹替版も配信中↓
※この感想は一週間無料公開した後、完全版の感想が「は・ひの題名の映画」記事に組み込まれます。ここには冒頭文のみが残りますのでご了承ください。
有料記事をご検討いただける場合は、「マガジン」がおすすめです。
今後追加される感想も、マガジン購読者は無料でお読みいただけます。