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マイノリティとして、ひとりの人として他者に寄り添う。

しばらく前に読み終わっていた小沼さんの「共感と距離感の練習」

タイトルと想定に惹かれて購入した一冊。
基本的に本を買うときは、家に持ち帰って開く一ページ目のワクワク感を楽しみにしているので、中はそんなに見ない派。

内容を勝手に想像して、わー!やっぱりこういう内容か!とか、えっ全然違う…となっても、でも普段読まないから面白い!となればと願っている。

この本はどちらかというと後者。

小沼さんが日々の中で考える、親しい人や、見ず知らずの人たちへ寄せる思い、人と人が関わるその間にある距離感についてが、静かに降る雨の中、その雨粒が地面にジワリと染み込むような、そんな文体で書かれている。

「今度は誰も傷つけないけれどわかりあうこともないような距離感になってしまう。実際、暴力的になるよりはいいと思って距離をとりすぎてしまって、親しくなる機会を逃すことがよくある。
共感も距離感もうまく使いこなせない。だからこそこだわってしまうのだろう。なんとか組み合わせて、練習しながら上手になっていきたい。混ざり合った世界と分離した世界を同時に生きるように。」

共感と距離感の練習 P9 小沼理

小沼さんがゲイだということは読むうちにそうだと知った。
僕はゲイの人がどんな目線や考えなのか知らなかったので、それを学ぶというわけではないけれど、小沼さんを通して触れることができたのはとてもよかった。

差別に対する向き合いかたや、人を傷つけることについて書かれたところは、ゲイというマイノリティの立場であることから感じられたことも書かれているけれど、性自認が何なのかということにフォーカスし過ぎるのではなく、僕は小沼さんというひとりの「人」として考えたことだよなと感じた。


抑圧されている人や、差別されている人に寄り添いながら、仕事での自分の男性的な振る舞いや、商業化するプライドパレードに違和感を覚えるなど、小沼さんが感じている世界はとても人間味を感じるし、小沼さんも僕も全く別の人間なんだけど、同じだよねと当たり前のことに嬉しくなる。

雨は少し上がって、少し風が吹いているけれど、日が出てきている。決してとてもポジティブではないけれど、誰かのことを思い出したり、大切ななにかをもらったような、読み終わるとそんな気持ちになれる一冊でした。

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