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読書感想#8 【ジャン・ジャック・ルソー】「学問芸術論」【西田幾多郎】「善の研究」

 知識をより正確に、より沢山、より効率よく得るためには、最新の解説書などを読む方が賢明です。そしてそれはなるべくわかり易いに越したことはありません。間違っても、わざわざ難しい本を手に取ったり、古臭い書物を開く必要はないでしょう。しかし私たちが書物から得るべきは必ずしも知識だけとは限りません。本当に大事なものは決して言葉で表せないもの、それは例えばその言葉の奥に潜むその人の精神です。ここにこそ読書の真髄があると私は思います。


 この人は何を思い、何のために書いたか。それを知るにはなるべく本人の言葉に近づくことです。解説者の言葉から聞けるのは所詮解説者の人生観に収まる範疇まで。偉人の人生経験と単なる解説者の人生経験、あなたはどちらを選びますか。私は時間が掛かっても前者を選びます。仮に十人の解説者から知識を得られたとしても、偉人の精神に触れることなくしては井の中の蛙です。大事なことは何が書いてあるかよりも何を書きたかったのかということに他なりません。知識だけは豊富な、しかし大事なことは何ひとつとして見えて来やしない、これほど無意味な読書があるでしょうか。分かり易くても中身がなければ詰まらない。昨今は節約の時代ではありますが、果たして読書までも節約していいものでしょうか。

 この度選書した二冊の本は一見すれば相関性がなさそうにも思えますが、どちらの本も人間味溢れる文章で綴られているという点では共通しています。偶然にもこれら二冊の本は共に著者の処女作ということで、知識的な面に於いては落ち度がある部分もあるかも知れませんが、それ以上に何か私たちの心をぐっと鷲掴むような魂の叫びがあります。私たちの人生を変えてしまうような、もしそれが名著といわれるものであるならば、この二冊はまさに名著そのものでしょう。時に理解不能で、しかしそれでも妙に共感してしまったり、時には腹を抱えて笑いながら、私たちを明日へと繋いでくれる、そんな不思議な力がこの二冊の本にはあるのです。

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