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読書感想#54 【森田慶一】「建築論」

出典元:建築論 森田慶一 東海大学 出版日1978/1/1

本記事の読み方

従来の主な建築論では、用語の違いこそあれ、「強」「用」「美」の三領域を定立することによって、建築の基礎が体系付けられていました。※以下の各頁を参照のこと

ウィトルウィウス「強」「用」「美」p173

イシドルス「配置」「構築」「美」p188

アルベルティ「必然性」「効用性」「快楽」p197※なお、アルベルティはもっと厳密に定義しているが、ここでは省く。

パッラディオ「効用または便利」「耐久性」「美」p204

しかし、森田建築論では、次の四つの領域を定立します。

要するに、建築は、一般に四つの様態、すなわち物理的・事物的・現象的・超越的な様態、で現実に存在しているということができる。

p.9

「物理的」「事物的」「現象的」「超越的」です。今回の記事では、上記に挙げた四項目を把握することを目的とします。

物理的様態

まず、建築が物理的に実存在するということは、建築を構成する素材およびそれを組織した構造物が物体として存立している-瞬時的にしろ持続的にしろ-という性質を付与されていることを意味する。この性質を仮に物体性と呼ぶことにしよう。この物体性に求められるのは建築体が外からの力、主として自然力、によって破壊されない堅固さ・強さであって、このような価値は自然科学的(力学的)合理性を前提とする技術(構造技術)によって実現されるのであるから、物体性はまた、この観点から、技術性・構造性と置き換えることもできるであろう。

p.10

すなわち、建築を構造的な面で捉えるのが、物理の領域になります。建築の必要性として、一つには、環境から身を守るということがありますから、それは当然といえば当然といえましょう。私たちが普段建築に対して抱く印象としても、この面がもっとも大きいのではないでしょうか。映画やアニメのような空想の建物では、もちろん雨風をしのぐことなど出来ません。どれだけおしゃれに作られていようとも、夏に暑く冬に寒く、そこら中で雨漏りしているようでは、外にいるのと変わりませんから。それでは建築そのものの意義さえ疑われます。だから建築には、実際的な強度が要求されるのです。

ゆえに、物理的な面から建築を考えるとき、機能性や芸術性は二次的なものとなります。構造的な基準を満たした上で、その範囲内で機能や芸術が考えられるのです。その意味で、建築の「技術論」が物理的様態に当てはまります。

事物的様態

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