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落ちこぼれたな。小学校高学年になったとき、彼女は先生に言われます。中学年までは成績がよかったのに、最近は赤点ばかりだったから。これまで勉強に費やしていた時間で、彼女は絵を描いていたのです。澄んだ川の絵。 水彩絵の具を混ぜて空が映る川面を描いていると彼女は時を忘れました。河童が住みそうな清らかな川。彼女の心に流れる透き通った川水は、しかし先生の一言に黒く淀みました。涙がこぼれないように彼女は下校します。 西日が包む通学路。帰り道、彼女は見なれない店に気づきます。「器」