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引っ越し〜移住、帰化、先住民

50年も前に実家のある住宅街に移り住んだ。すでに、隣近所には住民がいたので、後から来た転入者だった。しかし、数年が立つと近所の人の転出転入が繰り返されて、いつの間にかわが家よりも新たに引っ越してきた人が増えていた。

自分の体験を辿ると、住宅街に新たに引っ越してきた人は、それ以前から住んでいる人から見ると新しく引っ越して来た人と思うようである。自分が一年前にここにやって来たとしても、それ以降に来た人は新しい人で、自分より先に来て住んでいる人は先住民という思いを抱く。自分自身の精神的体験からそう思うのだが、友人と話をしてもそういうことのようだ。

先住民とは不思議な言葉である。そもそもアフリカの地を立って、人類が世界中に拡散していったことを思うと先住民とは、後から来た人から見た先住民であり、そこに住んでいる人たちの生存を犯し、侵略したことは別の問題として、到着した時期の違いによる呼称であることは間違いない。

帰化人という呼称も面白い。古代日本にもたくさんの渡来人が来て、帰化人と呼ばれているが、日本人そのものも一万年の年月をかけて、四方からこの島国にやって来たという意味では渡来人の子孫になるが、日本が国の体裁を整えた後には、渡来人は、帰化人と呼ばれたのだろう。

ちょっとした時間の違いで、先の者・後の者を意識するのは、日常生活での転居から海外移住まで、良し悪しを別にしても人間の真実のようだ。数ヶ月の違いで、後から学級の仲間入りをする転校生も暫くの間は、他所者気分を味わなければならない。ましてや、民族レベル・国家レベルとなれば、なかなか他所者の立場から抜け出すのは大変だということは想像に難くない。人間の性がミクロからマクロまで見事に一貫していることに驚くばかりである。

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