洗濯バサミが折れた
洗濯を干していたら、ポキンと洗濯バサミが折れた。見ると他の洗濯バサミも白色化している。そのうち同じように壊れるのだろう。プラスチック製のこの無機的な人工有機物は、数年で寿命がくる。
機械の寿命も短い。数年、長くても10年だ。無理して使い続けたとしても、いつ故障してもおかしくない、時に大事故になる。自動車は10年以上使えるようだが、整備費用が高くなるようだ。クルーズ船も30年過ぎても現役のようだが、人間の平均寿命と比べて短い。
動物の体は、常に入れ替わっている。食と排泄を通じて、毎日、部品交換が繰り返されている。それに比べて機械は、故障時や定期点検時に必要に応じて部品交換される。この新陳代謝の有無こそが生物と機械の一番違う点なのだろう。
どんなに優れたAIができても、生物のような自己保存の仕組みはない。いつかは金属疲労が起きて、ポキンと洗濯バサミが折れたように壊れる。
もしも、生物のような自己保存の仕組みを持つロボットが現れたら、人間にとっておそろしいことになる。それは機械が心を持つことにつながるからだ。ロボットに自己保存の意識が芽生えれば、ロボットがロボットのために生きるようになるかも知れない。そんな時代が来るのかどうか、洗濯バサミがポキンと折れた日に、こんな要らぬ心配をした。
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