見出し画像

ピラミッドと木の文化の継承

暮れにピラミッドのテレビ番組が流れていた。妻の話では、ピラミッドは今の科学技術では作れないそうだ。内部の回廊はかなり急斜面で、もともと階段がない。古代エジプト人は、どうやって上り下りしたのだろう、と言うのが、実際にピラミッドに入った古代文明好きの妻である。宇宙人が作ったのでないか、高度な古代文明が存在したといった話になる。

ひとつ言えることは、ピラミッド建造技術は継承されずに失われたと言える。技術は失われ、石で作られているために残って、今に伝えられた。これが、木造だったらすべて失われている。技術継承されない木造建築物は、朽ち果てたらそれきりになる。しかし、日本の木造建築は、時が経て壊れても、その都度、継承された技術により再建され、長い期間、昔ながらの姿を今に保っている。

知り合いの方の弟さんが宮大工をされていて、寺院の本堂や多宝塔を木造で造られているそうだ。こういう話を聞くと、飛鳥時代以来、伝統的な建築技術が脈々と継承されてきたということを身近に感じることができる。

かつて、日本の木造建築が世界遺産になるときに、木は朽ち果てて、造られた当初の材質ではない、それは複製で、本物ではないのではないかという意見があった。世界遺産が当初、ヨーロッパの優品に目が向けられていたが、石で造られているため、創建当初の材質が残っていた。こういうのが、真正性、つまり本物だというのだが、こういう議論からすると、東洋の木の文化圏の建築物は、偽物になる。しかし、誰が見ても、法隆寺や姫路城は、世界に誇れる文化財である。

この真正性とは何かの問題は、1994年に開かれた世界遺産条約の真正性に関する奈良会議で、遺産の固有価値は、材質だけでなく、固有の価値を維持する建築技術にもあると認められた。伝統的文化の継承の重要性が再認識され、世界遺産がヨーロッパ以外の文化財にも広がる道を開いたという点で、日本が20年遅れて世界遺産条約に加入したにせよ、日本加入の意義は大きいと思う(1992年加入、世界遺産条約成立から20年後)

ピラミッドがどうやって造られたか、分からないという夫婦の話から、いつのまにか、技術継承や世界遺産のことまでいろいろと思いが及んでいた。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?