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単語わかる、文法わかる、意味わからない

昔、英語の教師に愉快な人がいた。ある英文を読みながら「単語わかる。文法わかる。構文わかる。意味わからない」と言って、私たちを笑わせたが、確かにその英文は、単語も文法も構文も難しいものではなかったのに、意味がまったくわからなかった。残念なことに英文はまったく覚えていない。だが、単語、文法、構文等のひとつのひとつの要素は明解なのに、全体の意味が分からない。その時、広い世界には、他にこんなことが、あるような、ないような、そんな気がした。

そうしたら、最近こんなことに気づいた。音楽の演奏のことである。楽譜を見れば、音符わかる。音程わかる。リズムわかる。だが、上手く弾けない。音楽にならない。

「歌うように弾かなくてはだめです」と先生から言われるのだが、どういう風に弾けば良いのかわからない。曲想がわからない。要するに音楽がわからない。私は「単語わかる。文法わかる。構文わかる。意味わからない」という昔話を先生にしては笑わせる。いつの日か「音符わかる。音程わかる。リズムわかる。音楽わかる」と言ってみたい。

部分のひとつひとつはわかるのに、全体がわからないことの如何に多いことか。それは、自分の体験だけではないのだろう、と感じている。

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