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海外旅行は楽しいが疲れるというつぶやき
旅行は楽しい。何故楽しいのかと言えば、放浪は人類の本能だからだ。
旅行は疲れる。何故疲れるのかと言えば、放浪の本能を持ちながらも定住生活に慣れているからだ。
特に海外旅行には、楽しさに疲労が常について回る。長時間、狭い飛行機の座席に座り、時差の分だけ長い一日を過ごさなければならない。到着と同時に旅行会社が組んだハードなスケジュールにより、朝早くから夜遅くまでの観光をする。夜中にホテルに着いた観光客は、早朝、豪華なリゾートホテルの前に美しい風景が広がっていることに気づく。しかし、観光客は、のんびり景色を眺める暇もなく、バスに押し込められて次の観光地へと向かう。
旅行者は、「楽しい」と「疲れる」を天秤にかけて、旅行を楽しむ。若いときは「楽しさ」が「疲れ」よりはるかにに大きい。疲れは旅の楽しさを得るための出費のようなものだ。しかし、歳を重ねるにつれて、両者の差は縮まり、やがて逆転する。こうなると旅行は、一仕事で苦痛になってくる。行きたい国、観たい町があっても、そうまでして行く必要があるかと思うようになる。
こう思いつつ、左今の状況を見ると、海外旅行環境は、コロナ禍以降、円安や旅行代金高騰と悪化している。旅行は、薄利多売から多利少売の世界に変わり、資産と体力に恵まれた人だけが顧客の対象となりつつあるのだろうか。私のような豊かでない、体力も落ちている高齢者は、隠れた旅行弱者とも言える。高齢者も疲れない旅行のあり方を誰か考えてほしい。
子どもの頃の少年向け雑誌に、将来、世界中に新幹線網が張りめぐらされるという夢のような記事があった。釜山からモスクワまで、さらにパリ、ロンドンまで新幹線が走れば、途中2泊程して、のんびりとヨーロッパに着く夢を見るのは楽しい。新幹線は、狭い飛行機よりは快適な旅を提供するだろう。しかし、今の国際情勢を見れば、21世紀の今でも新幹線に乗って、世界旅行をするなんて、夢のまた夢だろう。夢は破れ、海外旅行は疲れるなあとため息をついている。