マリーの森 第三話
マリーとミカエルは頑張って歩いて行きました。
しばらく行くと牛を飼っている農家がありました。農家のおばさんは2人に雌牛が乳が出なくてねと心配そうに言いました。餌を食べないそうです。
ミカエルは『君は牛の気持ちがわかるんだろう。訊いてみてごらんと言いました。マリーは牛の瞳を見つめました。『どうしたの?』マリーは心で呼びかけました。
雌牛は『生まれ故郷のベリーの実が食べたくてね。ベリーのことを思うと恋しくて、もう餌を食べたくないんだ。』と答えてくれました。
もう辺りは真っ暗なので、その晩は泊めてもらって次の日の朝早くミカエルと2人でベリーを探しに行きました。美味しいベリーがありました。2人はベリーを摘みながら自分も甘くて香りの良い実を頬張りました。
たくさん実を摘んで帰りました。雌牛はベリーを頬張って『ありがとう。』と 言いました。その後雌牛はモーと鳴くだけで話さなくなりました。そして餌を食べるようになりました。
農家のおばさんと雌牛のようすを見に来たおじさんも大喜びです。2人にご馳走を作ってくれました。
マリーもゆっくりしてはいられません。次の日の朝には出発することにしました。2泊した次の朝、おばさんは2人のお弁当を作ってくれて、旅のために必要なものをリュックに詰めてくれました。
心も軽く2人は朝陽の中を出発しました。ずっと見たかった花も咲いています。 歩いていくと向こうから音楽が聴こえて来ました。街が近いのです。
街に着くと遊園地ではメリーゴーランドが回っています。ろばのパン屋さんが通りました。メロンパンが売っていました。ミカエルはマリーにパンを買ってくれました。
不思議なパンです。食べると心がいっぱいになります。食べれば食べるほど幸せな想いが蘇って来ます。ユウちゃんと遊んだこと。お父さんと動物園に行ったこと。お母さんがお姫様みたいに素敵な服を作ってくれたこと。食べれば食べるほど幸せになれるパンです。
マリーはミカエルと話しながら旅を続けました。
『ホームでお母さんが待っているよ。』とミカエルは言いました。