きつく結んだ目がほどけないように
あれほど深い緑に染まっていた樹木たちも、日を追うごとにその色合いを落としている。肌を滑らかに撫ででくれた夏風たちも、弱りはじめた太陽のご機嫌を伺っているのか、いつもより少しそっけない。長袖のパーカー越しに、風と光の会話が聞こえてきそうだ。
朝起きて窓を開けると気持ちの良い朝日が出迎えてくれた。
よし、今日も京都へ行こう。
1ヶ月ぶりの京都。今日も中年の一人散策だ。
単身赴任先の自宅から列車を乗り継ぎ約1時間。ちょうど良い距離だ。
いくらか電車の乗客も増えはじめ、間違いなく活気が戻ってきている。
いつものように、いつもの場所で、いつもの乗車券を買う。
先月から値上げに踏み切った「1日乗車券」だ。
いくら値上げたところで、オッサンの貧乏根性には歯が立つまい。あっという間に元をとってやろう。。。
情けないけど、50歳を越えた今も一向に成長の兆しが見えない。
おばはんの「バーゲンセール衣類争奪戦」、この醜い秋の風物詩よりは幾分かはマシだと思うのですが、女性からすると、きっとどんぐりの背くらべなんでしょうね。どちらも貧乏根性ですから。
”西ノ京円町”のバス停で26番のバスを待っていたのだが、待てど暮らせどやってこない。外国人のカップルも不安そうな表情で行ったり来たりしている。男性が少しイライラしはじめたかと思うと、女性がそっと身体を引き寄せキスをしている。
いいなぁ。
こういうの全然平気なんだもんなぁ。
結局、彼らはバスを待ちきれずタクシーを拾った。
何処へ行ったんだろう。
本日のお目当ての「仁和寺」に着く頃は、夕日が傾きかけた16時前。中門から表門をのぞむと、既に空のずっと先はうっすら白っぱげていて夜を予感させている。こんな瞬間が堪らなく好きなんだ。
気がつくと周りにはカップルばかり。
「国宝のある芸術祭」にやってきたのか。
中門の階段に腰を下ろし、ぼんやり空を眺めながらSpotifyを聴いていた。
知らない曲ばかりでしたが、とっても素敵な曲が心に止まったんです。
一生そばにいるから 一生そばにいて
一生離れないように 一生懸命に
きつく結んだ目がほどけないように
かたくつないだ手を離さないから
-菅田将暉さん「虹」-
妻と歩いた都路を思い出し、昔の気持ちが蘇ってきました。
そんな気持ちを見失ってしまっていたかも。胸の奥の引き出しにしまいっぱなしだった記憶を、久しぶりに眺めている。
若者の曲って凄い。中年の僕のこころでさえ鷲掴みしてしまう。
音楽って世代を超えてちゃんとメッセージが伝わってくる。
素敵なものは素敵、そういうものなんだね。
帰りのバス停で先程の外国人カップルに会った。
彼らもここに来ていたんだ。
夕闇がそうさせるのだろうか。
きつく結んだ目がほどけないように、かたく手を握り合っていたよ。
最後まで読み進めて頂きありがとうございました。
どっぷりの秋を満喫しちゃいましょう。🍁
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