詩『脳裏』

『脳裏』


 人は脳ミソという
 怪物の着ぐるみ

 ほんの成分でさえ
 喜怒哀楽のマリオネット

 それは快楽を好み
 萎縮して死んでゆく


 脳は門番がいる
 素通りは音と匂い

 奥に図書館もある
 新刊は減少中

 そして、脳裏に浮かぶ
 ひとりぼっちの、西陽の家


 最期、脳裏で叫ぶ
 「留守番は、もうイヤだ」

 帰ろうか、あの場所へ
 「ただいま!」の声と、母の匂い
 




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