「猫を棄てる」村上春樹
村上さんのお父さんとのかかわりを書いたエッセイ。
お父さんが国語教師であったことは知っていましたが、寺に生まれ、僧としての修行をしていたこと、戦地で句を書いていたこと、村上さんが小説家になってから、断絶状態であったことなど、初めて知ることが多かったです。
村上さんがとうしても小説を書かなければならない、突き動かされる何かを、このエッセイの中に見た気がします。
『兵にして僧なり月に合掌す』(P44)
これは二十歳のお父さんが戦地で書いた句。
生と死の間にいる身で、月を見、合掌する姿を想像すると目頭が熱くなります。
こうした文章を書けば書くほど、それを読み返せば読み返すほど、自分自身が透明になっていくような、不思議な感覚に襲われることになる。(P90)
村上春樹の小説は、私には限りになく透明に近いブルーグレーに見えます。
それは、上記の文章とリンクしているということでしょうか。
挿絵が昭和っぽくてかわいいです。