小説「コーヒーと恋愛」獅子文六〜潔い女たち
うちの近所の無印良品、本売り場が充実してるんです。
イスに座って読むこともできます。子どもに読み聞かせする親御さんもいたり。
そこで見つけた小説。
゛今年一番おもしろい゛という帯に釣られて。
最近の小説かと思ったら、1960年代の新聞小説らしく、獅子文六という作家さんも知りませんでした。
検索したら、「娘と私」はNHK朝ドラの第一回作品だとか。
へー、有名な作家さんなのですね。
あらすじ
昭和30年代後半
TVドラマの脇役人気女優モエ子 43才。
コーヒーを入れるのがすこぶる上手い。
8才年下の新劇の舞台装置家 勉君と事実婚しているが、彼を年下女優にとられたり、仕事がうまく行かなくなったり、、、。
モエ子は、気のいいおばさん役が多い。
想像するに、京塚昌子みたいな感じかなあ。
原節子みたいな美女じゃない。
・・・・・・・・・
余談ですが、京塚昌子といえば
「肝っ玉母さん」「ありがとう」などの昭和の名ドラマを思い出しました。
あの頃は、普通の人が普通に生活するドラマが面白かったですよね。
・・・・・・・・・
勉君は、新劇に理想を求め、TVをバカにしている。
TV女優の妻の稼ぎでいい暮らしができているというにのに、甘ったれた男だ。
挙げ句、置き手紙一枚で年下女に走り
その女が別の男に寝返ると、またモエ子と寄りを戻そうとする。
ていたらく。
勉君もだけど、
この小説に登場する男たちはみんなしょうもない。
モエ子と二度目の結婚をしようと考えている50代の菅、この人もまた、男尊女卑なのか、世間体しか考えていないのか、情が薄いのか、魅力がない。
茶道ならぬコーヒー道を日本に広めようとしている彼は
モエ子がインスタントコーヒーのCMに出たことに腹を立て、裏切り者扱い。
いくらコーヒーの同好とはいえ、他人の仕事に口出しするって何様?
この時代、仕事を持っていた女たちは、
さぞかし生きづらかったでしょうね。
仕事して、家を整えて、稼ぎが男を上回ると亭主は不機嫌になり。
見えない天井に圧迫される。
昭和の女性芸能人は、結婚=引退というのが普通でしたよね。
初めての主役は、ぱっとせず、評価は下がり、
結婚して引退という道も考えたけれど、
改めて脇役という立ち位置を確認したモエ子。
「いいわよ、ワキ役で結構。ワキで、日本一になれば、いいんでしょう」
と男たちを振り切って、仕事に燃え、パリに旅立つモエ子がかっこいい。
勇ましい。
モエ子から男を奪った年下女アンナは
男を踏み台にして、女優としての価値を高めていく。
その様はあさましい、
けれど、同じ女として潔くも思える。
目的のためには手段をえらばない。それは目的が明確だから。
明確じゃないと走れない。幸せをつかめない。
甘い恋愛小説かと思いきや、
女が女の人生を考えるヒントをくれる本でした。
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