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「生贄探し」中野信子 ヤマザキマリ〜アートと想像の重要性
漫画家と脳科学者 2人の対談の章も含めて、
とても興味深い内容でした。
自粛警察、罹患した人への嫌がらせ、
正義という名の伝家の宝刀を振りかざした個人攻撃、炎上、、、。
毎日、ネット上でそういうものを目にしていて、
その事を自分なりに考え、咀嚼するための一冊だと思います。
中野さんの章にある
スパイト行動
というものがおもしろい。
スパイト行動とは、、、
「自分が損してでも他人をおとしめたいという嫌がらせ行動」p40
実験によると、日本人はこのスパイト行動が顕著であったとか。
自分は得していないのに、他人が利益を得るのは許せない。
たとえば、コロナ禍で、自分は自粛して、娯楽を我慢しているのに、
帰省した、旅行した、女子会した、などの話を聞くと許せなくなる。
そのとき言う言葉は、
「あなたみたいな人がいるからコロナが終息しないんです」
もっともらしいけど、根拠はない。
社会のため、みんなのため、という大義名分を隠れ蓑にはして、
本当のところは楽しそうにしている人の足を引っ張りたい。
ヤマザキ 宗教でもない、法律でもない。要するに世間そのものが戒律になっている。
中野 そうですね。「自分よりみんな(群れ)を優先」するべきだという感覚のことですよね。
p103
世間体という言葉があるけど、
日本ではまさに自分の気持、家族の気持ちよりも世間様がどう思うかというのを、指針にしちゃってることはよくあると思います。
進学ではなく就職したいと言う子に、
何が何でも大学だけは出ろとか言っちゃう親。
大卒の方が後々有利だと言うけれど、それは真実ではない。
人生がどう転がるかなんて誰にもわからないもん。
結局、無意識下に世間体というワードが潜んでる。
あるいは、みんながそう言うんだから間違いないだろ、という思考停止。
また、出る杭は打たれるという諺は日本特有のものらしい。
有名人をTwitterなどで誹謗中傷するのも同じような思考でしょう。
大して知りもせず、その人の作品に触れもせず、
ネットの情報を鵜呑みにして炎上させる。
″あいつら楽して金儲けてんな。″
″ちょっと顔がいいだけで、モテやがって、ムカつくんだよ。″
という
やっかみ×正当化出来そうな理由=炎上
有名人たちは、″有名税だからしょうがないよ″と言われて
反論する機会を失ってきた。
″有名税という名の負担を払っても、売れてるんだから良いじゃん
私たち一般人は誰からも注目されないんだよ
注目されるだけありがたいと思えよ″
という暴論が陰に隠れてる。
みんな正義を持って批判しているつもりだけど、
正義なんて人の数だけある。
ここに私が書いていることだって、私だけの正義。
自分の正義が他人にとって正義なのかどうか、
つねに問い続けないと、正義は暴走する。
中野 本当の知性は、自分の正義や知性が独り善がりのものになっていないかどうかを、まずうたがうところにこそ、あると思うのですが。p129
自分の考えを、
本当?正しい?それでいいの?と
自問自答しないといけない。
そして、この本ではアート、想像の重要性を説いています。
多様性という言葉がトレンドになる昨今ですが
本当の意味で多様性を重んじるのって、実はかなり難しいですよね。
きれい事はわかっていても、
人間なんて自分の経験に照らして、バイヤスがかかった物の見方しかできないのですから。
だからこそ、アートって大事だと私も思います。
例えば映画、ドラマ、小説。
そういうものから、知らない世界を知る、人の気持ちを知る、
違う価値観に触れる。
もしも私ならどう考えるだろう、どう行動するだろうと、
想像することの大切さ。
想像、空想に逃げることで
束の間、世知辛い現実から距離を置いて、冷静になれる。
現実逃避とも言うけれど、そんな時があっても良い。