お父さん(夫)が仕事へ行けなくなったら
知り合いのご主人が、先週から仕事へ行けなくなりました。上司との相性が悪いのが原因のようです。40代の働き盛り、子どもが2人います。私のお友達は、ご主人のことを「すごく元気」と言っています。
「すごく元気」
私のお友達からこんな内容のメッセージが届きました。
「(主人は)朝、仕事へ行こうとすると、吐き気がする、めまいがする、と言うのに、休むと決まったら、モリモリごはん食べているのよ」
「すごく元気だから、心療内科へ行っても診断書出ないと思うわ。」
という文面からは、にわかには夫の不調を受け入れられない、という気持ちが読み取れます。
次の日、そのお友達から、
「一週間分の薬がでたよ」
と1文だけ送られてきました。
心の病気だったんだ、薬が必要なんだという事実に動揺しているのだと思います。夫の心の病気をすぐに受け入れることは、妻にとってとても難しいことです。
6年前の自分
6年前の私もそうでした。
私の主人が発達障害とうつ病で心療内科へかかる前のことです。
仕事の愚痴が増え、腹痛を訴える日が増え、体調不良で休む日が増え、徐々に徐々に仕事に行けなくなりました。
「今日は休みます」と職場へ電話すると、スッキリした表情でいつも通りにごはんを食べます。そして、ゴロゴロ休んでは、またいつも通りごはんを食べる、そしてまたゴロゴロ、を繰り返していました。それが何日か続くと、職場の上司がやってきて、心療内科を勧められました。主人はうつ病の薬と診断書をもらい、3ヵ月休職することになりました。主人は安堵した様子を見せていました。一方、私は、急に主人が一日中、家の中にいることで、生活リズムは崩れ、ストレスを感じるようになりました。
それでも、主人は心の病気です。私ががんばらなくてはいけない。その思いから、より一層、ストレスを溜め込むようになりました。
主人が徐々にパワーダウンしていくのと反対に、私のストレスはどんどん増えていきました。まだ2歳の娘や、5歳、7歳の子どもたちの子育ても忙しい盛りでした。
それでも、主人のお休みには、3ヵ月というゴールがあるというのは救いでした。1週間ごとに通院し、薬の副作用や心の状態を確認し、日中は家でゴロゴロ休んではモリモリごはんを食べて過ごす、を繰り返しました。そして、3ヵ月が過ぎようとしたとき、さらに3ヵ月の休職の診断書が出されました。
ゴールではなかった
3ヵ月の診断書は、3か月後に復職できる証明書ではなかった。
大きな岩が頭に乗せられたような、重く、身動きの取れない現実に、自分が潰されてしまうのではないかと怖くなりました。それでも、子どもたちの笑顔を守らなくては、しっかりしなくては、と必死で心を奮い立たせたのを覚えています。
道の入り口
私の友達が、今、その道の入り口に立っている。そう思うと、簡単に「がんばって」なんて言えません。どうか、自分をいたわり、先々やってくる現実を受け止められますようにと。そのための愚痴ならいくらでも聞きます。彼女と連絡を取り合い、押し付けるのではないサポートをさせてもらおうと思っています。徐々に徐々に現実を受け入れていくのは、本当に大変なことなのです。がんばりすぎてストレスを溜め込むと、彼女も心の病気になってしまいます。
まずは、彼女が医師からきちんとご主人の状況を聞き、納得するところから始められるといいなと思っています。医者の言葉の説得力は絶大です。夫の心の病気を受け止めることで、彼女自身が楽になると思います。
「夫は元気そうなのに、休んでいる」という思いは、彼女を苦しめます。
「もしお父さんが働けなくなったらどうする?」
私の子どもたちに、お友達のご主人の話を聞かせました。もし、自分のお父さんが同じように仕事へ行けなくなったらどう声がけしてあげる?と質問すると
「気持ち悪くなったり、目が回ったりするのはかわいそう。いっぱい休んだらいいよっていってあげる。」
「違う仕事ができるように、しばらく休んだらいいよっていう。」
と返ってきました。
わが家の子どもたちは、ちゃんと「逃げていい」ことを知っていてくれていました。それはとても嬉しいことでした。6年前は、まだそんな会話ができる年齢でもなく、子どもにはお父さんがお仕事をお休みしていることは内緒にしていました。私が受け入れられていなかった証拠です。
子どもたちに、
「お父さんが心の病気になっても、心は見えないから、体は元気で、モリモリごはんも食べて、元気にお出かけしたらどう思う?」
と2つ目の質問をしました。
「だったら、寝てろっていう」
「元気なら、遊んで欲しい」
子どもらしい解答でした。そこで、私は
「心の病気は寝ているだけでは治らないのよ。目に見えない病気だから、もし元気そうに見えても、優しくしてあげてね、責めないであげてね」
と話しました。
そう話せるようになって、私も子どもも成長できているんだなと感じることができました。
心のプロ
コロナ禍で、心の病気になる人が増えていると聞きます。本人が辛いのはもちろん、周りにいる家族も大変です。これまで発達障害の診断がなかった人も、環境の変化によってその特徴に気づく人も増えているそうです。発達障害のASD(自閉症スペクトラム症)の人は、環境変化が苦手で、適応障害を起こしやすいと言われています。
心の病気は一人だけでも、家族だけでも、改善しません。心療内科、精神科の医師という「心のプロ」に診断してもらい、患者だけではなく、家族の心もプロに相談することが大切だと思います。私の心のプロ探しの話は、またnoteに書かせてもらいます。