財源を置き去りにして
子ども手当について、与野党が競い合って拡充策を打ち出しています。
大きなところは所得制限の撤廃ですが、高所得層間の税の再配分政策としては一考の余地はあるものの、全ての世帯を対象とすることは、所得格差を拡大させる側面もあり、むしろ、大学の授業料などを所得水準に応じて、所得の一定割合を超えないようにするなど、所得の高くない世帯に対する段階的な教育費の支援の方が、出生数を増やすためには有効な気がします。
また、個々の企業の生産性の向上みたいなことはよく言われていますが、社会の生産性とか効率の良い行政運営に必要な、コンパクトシティの推進には触れずに、移住定住で全国津々浦々の地域を維持しようという取り組みも、無理があるように思います。加えて、出生数の増加とか、非効率な周縁地域の維持が、安全保障面の必要性とあわせて語られたりもしますが、このへんは分けて考えないと、子ども手当の所得制限の撤廃と同じように、かかるコストのわりには効果が生みだされないということになります。
そもそも、防衛費、子育て支援、エネルギー価格抑制と、財政見通しを過度に楽観的に見積もったうえで、次々と歳出拡大策を打ち出すことが、後の世代に対して資産を遺すことにつながるのでしょうか。どれも必要と言えば必要なのかもしれませんが、やり過ぎてしまって、政府の財源を社会のエアポケットのような部分に投入し、乗数効果がごく限られた領域にしか及ばない、そういう状況になっているのではないか、漠とした批判とか議論で物事を決めるのではなく、そうした闇の部分の検証も求められるように思います。会計検査院の指摘するような、制度の運用の中での無駄遣いよりも、制度創設や改変によりもたらされる無駄な支出を減らすことや、一時の雰囲気で物事を決めないことが、将来世代にこれ以上の負債を遺さないためにも、必要ではないでしょうか。
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