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平時の評価と有時の減点
日々の業務が円滑に進められていることについては、報酬に見合った当然果たすべき役割として、特段の評価をされることはなく、何かトラブルが発生し、業務に支障が生じると、担当者の事務手続きが細かく調べられ、事務ミスやマニュアルどおりの事務が行われていない点があれば、担当者に過失があると認定されて「減点」されます。
トラブルが発生した場合、何らかの損害が発生し、被害を受けた関係者がいますので、どうしても原因究明においては犯人探しが優先されてしまい、犯人が見つかれば、そこでクールダウンして、再発防止はお座なりになることが多いように思います。
そこで、担当社員に金銭的求償をされることは少ないにせよ、何らかの処分が行われる可能性が高いです。
ただ、こうした事務ミスによるトラブルが発生する要因は、担当者がミスをしてしまう事情が隠れていることが多いです。
例えば、事務処理フローが長年変えられていない場合、事務が複雑になっていたり、例外処理が増えていて、見えないところで担当者の負担が増えているということがあります。こうした歪み学生、担当者の異動により、スキルが一時的に低下したタイミングで、トラブルとして発現することが多いように感じています。
事務自体に変更がない場合も、従来は年に一度の処理であったところ、年度途中の処理が増えていたり、事務スケジュールがタイトになったことで、作業に余裕がなくなり、ミスが発生しやすくなっていることもあります。
例えば、人事部門であれば、採用の通年化や、子育て休暇の増加、中途退職者の増加により、人の異動が頻繁になっていることで、明らかに業務量が増えているようです。
事務ミスがメールに起因していることも少なくないですね。メールは毎日大量に届きますが、電話のようにリアルタイムに対応する必要がないため、まとめて確認することが一般的ですが、個々のメールの軽重は見た目では判断できないため、よほど上手く仕分けをしておかないと、数日前のメールなど、膨大なメールの山に埋もれがちです。
メールの見落とし自体は、出発点では小さな傷でも、結果的に放置されることで問題が大きくなり、相手に損害を与えた場合は、その損害の賠償を巡り法的な対応に発展することもあります。
法務部門のため、さまざまなトラブルについて、相談が持ちこまれ、僕のところにも時々、話が上がってきますが、持ち込まれた時点では、対処方針を決めるのに時間的猶予がないことも多く、どうしても表層的なミスの原因追及と、それをどうやってリカバーするかに、注力しがちになります。
ただ、それですと、担当者は平時の業務遂行に対する評価をされることなく、事務ミスによる減点評価にさらされることになります。前提となる事務処理に無理があり、改善が求められる状況にあったとなると、本来は加点しての減点がされるべきです。
事務ミスの対応に追われる立場からすると、今この局面で、事務ミス担当者をフォローすることは、事務的にも心情的にも容易ではないのですが、この辺の皺寄せを放置して、担当者の減点評価だけしてしまうと、職場全体が萎縮してしまいます。
ちょっと、話が抽象的で、わかりにくい内容となってしまいましたが、平時においては、監査のようなものが入っても、事務処理の水面下にあるミスの温床が露見するのは至難であり、露見したときは内部事務を見直す契機になります。
業務改革における、電子的な事務処理のワークフローや、社内規則の見直しを図る中で、つまらないことで社員が減点されない仕組み作りを志向することは肝要であり、そこは手間を惜しまず取り組んでいきたい思います。