【サイコパス】自分を制御する脳が損傷している説【異常心理】
・はじめに
こんばんわ。サイモン心理大学です。
今回はサイコパスとは何かについてお話しようと思います。
など、過去にも恐ろしい (サイコパスによる) 事件がありました。
最近では、「サイコパス」という言葉が一般的になり、あらゆるところで聞かれるようになりました。
私が出会った人の中にもサイコパスだろうなという人が2,3人いました・・・
近年、サイコパス研究が進んでおり、その実態が分かってきています。
サイコパスの実態、特徴、どうしてサイコパスが生まれるのか
そんなことをお話しさせていただきます。
・サイコパス研究の歴史
フランスの精神科医フィリップ・ピネル(Philippe Pinel)が、1801年に「道徳的狂気(manie sans délire)」
という概念を提唱しました。これは、
後に、ドイツの精神科医J.L.A.コッホ(J.L.A. Koch)が、1888年に
「精神病質(psychopathic inferiority)」
という用語を用いて、
1940年代には、アメリカの精神科医ハーヴェイ・クレックリー(Hervey Cleckley)は、1941年に
『The Mask of Sanity』
という著書を発表し、サイコパスの特徴を詳細に記述しました。
そして、カナダの心理学者ロバート・D・ヘア(Robert D. Hare)は、1970年代から1980年代にかけて、サイコパスの評価ツールである
「サイコパシー・チェックリスト(PCL-R)」
を開発しました。
・サイコパスとは何か。
サイコパスといえば、人とは違う感覚を持ち、犯罪的な思考をもつ恐ろしい人間と認識しているのではないでしょうか。
サイコパスとは、反社会性パーソナリティ障害のことを指します。いわゆるソシオパスと呼ばれるものです。
厳密には、違いがあるのですが、医学的には同じものとされているそうです。
反社会性パーソナリティ障害とは、全10種類あるパーソナリティ障害の1つであり
などから診断されます。
この反社会性パーソナリティ障害のおよそ1/3がサイコパスだと言われています。
・特徴:サイコパス
では、サイコパスの特徴とは何でしょうか。
サイコパスの特徴とは、おおむねソシオパスと近いのですが、
簡単に言うとそんな感じです。
皆さんの周りにもいるでしょうか
サイコパシーチェックリストでは、一部抜粋して
などがあります。
ただ、これらはサイコパスの定義ではなく、1つの指標でしかありません。
他の特徴も見ていきましょう
人のことをまるで道具のように扱い、己の欲望のためには犯罪だとしてもかまわない。そんな人のことでしょうか?_
また
とも言われています。
サイコパスの大きな特徴の1つに衝動性があります。
彼らは、自分の中に起こる感情を抑えることが難しいというのです。
・特徴:遅延価値割引
これらの特徴には、「遅延価値割引」という思考があるというのです。
「遅延価値割引」とは、報酬がもらえるのが遅れるとその価値が下がるように感じる傾向のことです。
例えば、
これは、目の前の「1万円が欲しい」という気持ちを我慢する耐性が低く、10年後まで待てないというセルフコントロールの弱さを表しているのです。
あなたはどうだったでしょうか。
今の例では、場合によっては1万円を選ぶかもしれません。
サイコパスの例でいうと、
サイコパスの答えはもちろん
「今すぐ○○」
この「遅延価値割引」は、薬物中毒者などにもその傾向が見られるそうです。喫煙者にも多少その傾向があるそうです。
ただ、この思考傾向を持っているだけでは、サイコパスかどうかは判断できないようです。しかし、サイコパスはその傾向がとても強いのです。
例えば、それが警察に捕まることでも今すぐ欲求を満たしたいとか。
・なぜサイコパスが生まれるのか
どうしてサイコパスになってしまうのかについてはまだまだわかっていないことが多いようです。
生まれつき、サイコパスの脳が人とは違うかもしれないのです。
・サイコパスの説:脳
現在の脳科学的観点からのサイコパス研究では、
前頭前野と前部帯状回による影響が大きいのではないかという説が有力だそうです。
こう聞くと、「遅延価値割引」に影響している領域のようにも思えます。
サイコパスは誰かの悲鳴にも反応しない?とか。本当かわからないですけど。
サイコパスは、これらの脳が機能不全に陥っているのではないかという説です。
確かに、今言った領域が全く働いていないとしたら、サイコパスになるんだろうなと想像はできます。
では、もしも、脳を機能不全、損傷したら人はどう変わるのでしょうか。
次は、一部の脳を失った人の話です。
・前頭前野を損傷した例
アメリカに住む、フィネアス・ゲージPhineas Gageは、鉄道建築技術者でした。
ゲージは、とても真面目であり、部下からの信頼も厚かった人物です。
―1848年9月13日-
25歳のゲージは、バーモント州のカヴェンディッシュの外れで、鉄道路盤を建設するため、発破任務に当たっていました。
長さ110cm程の鉄の棒が彼の頭部を貫いてしまったのです。
左前頭葉の大部分を破損。左目が潰されてしまいました。
幸いにも、彼は一命をとりとめました。
さらに、一か月後には歩けるほど回復したのです。
彼はこれほど大きな事故に巻き込まれたにも関わらず、いつもの生活に戻ることができました。
しかし、事故後の彼を見た人達はこぞってこう呟きます。
彼は事故後、まるで人が変わってしまったかのように、
無礼で、頑固、優柔不断、計画を立てることができず、言葉も子どもっぽくなってしまったのです。
これは、実際にあった外傷的に前頭葉を失った人の話です。
これは脳科学的にも、当時大きな衝撃を与えた事故の1つです。
このように、サイコパスも外傷的な損傷を受けていないが、機能障害があるのではないかということが、現在研究されています。
・成功するサイコパスとは
サイコパスとは、何も犯罪者だけがもっているものではないのです。
大企業の社長や政治家の中にもサイコパスがいるとも言われています。
そもそもサイコパスの大多数が犯罪者かというとそうでもないそうです。
では、「成功するサイコパス」とは、どのようなものでしょうか。
それは、
こう聞くと、サイコパスであれ、努力家のようにも聞こえます。
これは私の考えですが、
もしかしたら、我々人間は1%でもサイコパス的な要素を既に持っているのかもしれません。
私たちは残酷な感情を少しは持っているのかもしれません。
それが何かをきっかけに外にあふれ出してしまった人を
私たちは「サイコパス」と呼ぶのかもしれません。
引用文献
・松浦 (2022)「現在のサイコパス研究の到達点」神戸学院大学心理研究第5巻第2号
・佐藤 (2008)「反社会性人格障害傾向者における遅延ならびに確率による報酬の価値割引―パーソナリティ研究 第17巻 第1号 50-59
・金子 (2018) 「非犯罪者のサイコパス類型におけるパーソナリティ特性および精神病理の検討」人間学研究論集 第7号 p.129-139
岩田 潤一、嶋 啓節、虫明 元 前帯状皮質 https://bsd.neuroinf.jp/wiki/前帯状皮質
・ChatGPT:サイコパス研究の歴史
・Wikipedia「精神病質」https://ja.wikipedia.org/wiki/精神病質
・Wikipedia「フィニアス・ゲージ」https://ja.wikipedia.org/wiki/フィニアス・ゲージ
参考文献
・Blair, R. J. (2003). Neurobiological basis of psychopathy. The British Journal of Psychiatry, 182, 5–7.
・Morgan, J.E., Gray, N.S., & Snowden, R.J. (2011). The relationship between psychopathy and impulsivity: A multi-impulsivity measurement approach. Personality and Individual Differences, 51, 429-434.
Schneider, K. (1946). Beitraege zur Psychiatrie. Thiem, Wiesbaden(シュナイダー,Kurt フーバー, Gerd・グロス,Gisela(解説) 針間博彦(訳)(2015).新版 臨床精神病理学 文光堂 pp.15-16, pp. 18 26, p.32.