小論文・志望理由書では話し言葉は禁物!②「いろんな」のケース
更新日:2024/11/19
小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導で教えている、文章作成における基本事項を紹介するのが、このシリーズ【文章作成の基本】。
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(〆野の自己紹介はこちらから見られます。)
小論文や志望理由書では「話し言葉」は禁物。
以前、下の記事でもお話ししましたが、小論文や作文では「話し言葉」はNG。正しい表現、いわゆる「書き言葉」で書かないといけません。今日は、その話の第二弾です。
使い慣れてて気づきにくいが、「いろんな」も話し言葉……。
この仕事は日々勉強ですね。まだまだ知らないことやわからないことがあります。
プロフや自己紹介にも書いたように、私は20代の時から学習塾に勤務し、その後予備校や出版社に勤務し、今は在宅で添削指導をしています。初めて学生の書いた小論文を添削してから早20数年。自慢ではありませんが、この業界ではベテランに入ると思っています。
しかし、今回紹介することは、恥ずかしながら在宅指導を始めてから知ったことです。まだまだ私も、修業が足りませんでした。
在宅指導は4年前から始めました。業務委託元から委託を受け、中高生の書いた文章を添削します。
その添削した原稿は、委託元の担当者によって改めてチェックされます。私も人間ですから、その原稿のミスで私が見落としているところがあり得ます。委託元に原稿を提出するとき、私は自分でチェックしてから提出しますが、それでも実際見落としがあります。そうしたものがないかどうかを、担当の方がチェックするのです。そしてそうした「私のミス」があったときは、担当の方から指摘を受けます。
この在宅指導を始めたばかりの4年前のある日、担当の方から指摘を受けました。「『いろんな』は話し言葉なので、赤入れして指導してください。」とのこと。これは見落とし…、ではありませんでした。
これを話し言葉であるという認識が、私にありませんでした。普段から私も余りに自然に使っているので、気が付きませんでした。たしかに「いろいろな」が音便化しているので、いかにも話し言葉っぽいですが…。
お恥ずかしいと思いながらも、辞書を引いてみました。
ほんまや…。〔話〕=「話し言葉」でした。連体詞です。こんな簡単な言葉、なぜ今まで知らなかったのだろう?それはともかく、以来はこの言葉に赤入れして指摘するようにしています。
「いろいろな」と「いろんな」では品詞が違う。
しかし、元の「いろいろな」は辞書にどう出ているのだろう?気になって、そちらも調べてみました。
「いろいろな」では出ていません。「いろいろ」でこのように一項目になっています。で、「いろいろ話す。」という副詞としての使い方、「人の好みもいろいろだ。」という形容動詞の使い方が正しいと、一の意味で掲載されていました。
ここで一つの事実に気が付きました。
「いろいろな」という連体詞は存在しないのです。「いろいろだ」という形容動詞の連体形が、「いろいろな」となるのです。そしてそれが「いろんな」と話し言葉になるに至って、連体詞となったと考えられます。
たしかに、「いろいろだろう」、「いろいろだ」、「いろいろで」と活用できるため、「いろいろだ」は形容動詞ですが、「いろんな」は「いろんだ」、「いろんで」とは活用して使うことはないため、「いろんな」は活用しない連体詞と言えます。
面白いですね。これは一つ勉強になりました。
まとめ
これも、中高生の作文や小論文では多く目にする表現です。私のように気が付かなかった人もいるかと思いますが、「いろんな」は話し言葉なので、この表現は文章中では避けてください。
注:形容動詞は、活用語(いわゆる用言)の一つ。連体詞は、活用しない。
なお、話し言葉関連の内容はこちら記事でも扱っています。
参考図書:三省堂国語辞典 第七版 2014年1月10日 第一刷
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