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厳冬期、憧れの山小屋「黒百合ヒュッテ」へ -星降る冬の夜空に包まれて何を思う-

いざ厳冬期の八ヶ岳、憧れの山小屋へ


北八ヶ岳、天狗岳方面の道中にある黒百合平にひっそりと佇んでいる黒百合ヒュッテは築60年を超える歴史ある山小屋である。

山小屋の中では珍しく、山が雪で閉ざされるような冬季でも通年営業しているのが特徴。

2022年2月、厳冬期だからこそ味わえる非日常体験を求めて、片道3時間かけて標高2400mにある黒百合ヒュッテへ登ってきたので写真と共に振り返る。

一面白銀の世界、一本の道を辿って

早朝、渋の湯登山口から登山道に足を踏み入れると、そこは静寂に包まれた一面白銀の世界、自分が雪を踏みしめる音だけがギシギシと鳴り響く。

木漏れ日が白銀の世界を照らし出す、雪に乱反射した光が山の中をさらに明るく照らし出す

山に分け行った先人たちが踏み残した一本の道を淡々と辿っていく

踏みしめられた道は、ここを辿ってくれと言わんばかり

時折、木々の枝からボトリと雪が落ち、足音と絶妙なハーモニーを奏でては消える。

粉雪が舞っては消える

人の声のする方へ、「黒百合ヒュッテ」にたどり着く

小屋の前には、色とりどりの防寒着を来た人々、突如現れるその光景はキャンバスに垂らした絵の具のよう。

小屋の前にある小高い丘をアイゼンの爪をザクザクと突き刺しながら登ってみる。

目の前には、やっぱり一面白銀の世界でちょっぴり安心する。
やはりここは人里離れた山中なのだ、日々の喧騒を忘れるには十分な場所。

小屋の前まで降りてくると、ブルっと寒気がやってくる、ついでに小腹もグーグー鳴っている、そんな旅人を小屋は暖かく迎え入れてくれる。

温かい一杯の飲み物と

温かいビーフシチューをお腹に収めると、心地良い眠気がやってくる。少しばかり寝かせておくれ。

そして、長い夜がやってくる

少しばかり寝るつもりが、すっかり太陽が西へ沈む頃に目を覚ます。
昼間は色とりどりの人々で賑わっていた小屋も宿泊客のみが細々と残っている。

これから長い冬山の夜がやってくる、氷点下十数度の夜がやってくる。

星空に包まれながら、いずれ明けてしまう夜を惜しむ

太陽の存在感が消えると、小屋の上には星々が「次は我々が主役だ」と言わんばかりに競い合って輝いている。

次にこの星々に出会えるのは、いつになるのだろうかと思案しているうちに、深い眠りに次第に誘い込まれていく。この星々煌めく美しい空をもっと長く見ていたいと思えば思うほど、いずれやってくる朝が憎らしく感じてしまう。

そして、朝はやってきた

東の空が明るくなり始めると、太陽は空に輝く星々を追い出し、主役の座を奪い返す。山々を照らし出し、寝惚け眼の人々を次々と起こしていく朝日の強引さに辟易しつつも、山を色とりどりに照らし出して綺麗な景色を見せてくれる、その役割にちょっぴり感謝してしまう。

そして、僕は山に「また来ます」と言い残して、下山の途に着いた。

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