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80年代に中国奥地を訪問した記録。 鉱山技術者として新疆ウイグル自治区、中国東北部を旅しそこに暮らす人々の歴史と生活を記録した。 経済開放が始まったばかりの中国の活気あふれる様子を記した7つの寄稿文をアップロード。

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80年代に中国奥地を訪問した記録。 鉱山技術者として新疆ウイグル自治区、中国東北部を旅しそこに暮らす人々の歴史と生活を記録した。 経済開放が始まったばかりの中国の活気あふれる様子を記した7つの寄稿文をアップロード。

最近の記事

終わりに

T.N  現代シルクロード紀行、渤海国異聞をお読みいただきありがとうございました。最後にこの7編の記事を書いたJ.Nのプロフィールと公開に至った経緯を記しておきます。  著者J.Nは1935年に群馬県で誕生、東京大学理学部を卒業後、三井金属鉱業に奉職。鉱山技師として世界各地の非鉄金属を探索する専門家でした。鉱脈探査がミッションなので、当時の日本人がほとんど足を踏み入れたことのない発展途上国の奥地が活躍の場でした。今回の記事は中国東北部、新疆ウイグル地区が舞台でしたが、その

    • 渤海国異聞(5)

      J.N(元三井金属資源開発株式会社) -吉林省の地質構造と鉱物資源 -<吉林省の鉱業概況>  吉林省は多様な鉱物資源に恵まれている。石炭、石油、天然ガス、油母頁岩などのエネルギー資源、Cu,Ni,Mo,Pb,Znなどの非鉄金属資源、Au、Agなどの貴金属、鉄鉱石の他、石灰岩、珪灰石、ベントナイト、グラファイト、珪藻土などの非金属資源を賦存する。なかでも油母頁岩、珪灰石、珪藻土などの非金属9鉱種では、今だ開発は本格的ではないが、埋蔵鉱量で全国1位を占めている。  吉林省にお

      • 渤海国異聞(4)

        J.N(元三井金属資源開発株式会社) -中国の社会・経済・文化一<ソ連と中国>  中国は1949年の建国後、ソ連邦を教師に国造りを進めた。中国の科学技術・産業のあらゆる面に、ソ連の影響が色濃く残っている。資源関連についていえば、資源の調査方法探鉱手法から評価手法に至るまで、ソ連流の基準規格で標準化されている。  しかるに、ソ連については、かんばしからぬ話をよく聞かされた。ソ連が満州重工業の機械類をすべて接収・撤去した話などは、日本側に対して最大限の協力・支援を期待しての駆

        • 渤海国異聞(3)

          J.N(元三井金属資源開発株式会社) <極東のパリーハルピン市>  黒竜江省の省都ハルピン市は、東清鉄道と松花江の交点に位置し、極東のパリと謳われる。ハルピン市は、極東進出政策を進める帝制ロシアが建設した満州における拠点都市であるが、19世紀までは松花江河畔の寒村にすぎなかった。19世紀末葉、東清鉄道建設を進めるロシアの技術者は、ロシア本国から海路ウラジオスットクに渡り、ウスリー鉄道を経由してハバロスクに至り、そこから黒竜江、松花江を船でさかのぼり、2年がかりでハルピンに

          渤海国異聞(2)

          J.N(元三井金属資源開発株式会社) <満鉄40年の軌跡>  満鉄(南満州鉄道株式会社)は、鉄道経営にとどまらず、石炭鉄鉱山の開発、電気・ガスなどのインフラ整備、工場建設、港湾からホテル経営まで一連の地域開発、産業開発を管理・担当する国策会社として、イギリスの東インド会社に倣って、1906年に設立された日本最大の株式会社であり、日露戦争後の日本の満州植民地経営の先兵であった。資本金は2億円で、その内半額は日本政府の現物出資、残りは民間に公募したが、多くは外債に依存した。

          渤海国異聞(2)

          渤海国異聞(1)

          J.N(元三井金属資源開発株式会社) <はじめに>  中国東北地区は、古くから関外(関東、万里の長城の東外側)の地と呼ばれ、漢民族にとっては、18世紀中葉まで、異民族-夷荻の住む辺境地帯があった。夷荻とは、ツングース系北方諸民族で、隋、唐時代の靺鞨(まっかっ)族、遼宋・元・明時代の女真族、清時代以後の満州族がその代表である。  ツングース系民族の代表は女真族の一支族である満州族である。満州族は、17世紀、僅か30万人の軍民で数100倍の住民が住む中国全土を制圧し、北はモン

          渤海国異聞(1)

          現代シルクロード紀行(続編)

          オアシス都市ホータン J.N(元三井金属資源開発株式会社) <カシガルからホータンへ>  5月15日、地熱班の2名及び楊氏と別れ、鉱業班3名で、陸路ホータン(和田)へ向う。ホータンから迎えのジープが到着したのは、手違いのため夕刻となり、アトシの克州賓館出発は20時となる。カシガルからホータンまでの距離は530km、途中ヤルカンドで夕食をとり、ホータン到着は2時を過ぎていた。  ヤルカンドでの食事は、ウイグル人のアリムや運転手が一緒なので、ウイグル食である。ウイグルの主食は

          現代シルクロード紀行(続編)

          現代シルクロード紀行

          南新疆タリム盆地西部の探索行 J.N(元三井金属資源開発株式会社) <プロローグ>  中国新疆ウイグル自治区は、1955年カラマイ油田の発見があり、1985年以後、東西冷戦が解消に向かうなかで、重点開発地域に指定され、今、急速な開発ブームに沸いている。南新疆は、全新疆166万kmの凡そ2/3の広大な面積を占めるが、その中心は、タリム盆地不毛の大地、タクラマカン砂漠死の世界である。その上、この西域の地は、3方を自然の障壁-北に尖峰重塁して天を突く天山山脈、南に砂嵐荒れ狂う崑

          現代シルクロード紀行