この10年で生まれる21のHRジョブとは?ーHR Technology Conference 2021(その1)。
シリコンバレー人事のTimTamです。9/28から10/1にかけての4日間、Las Vegasで開催されたHR Tech Conference 2021に参加してきました。コロナの影響で、今回は2年ぶりのin-personでの開催(昨年はオンライン)とのこと。また通常であれば海外からの参加者も多数いる国際的にも有名なConferenceですが、今回は海外から来ている人はかなり少なかったとか。日本からの人もほぼ見かけませんでした。入場も厳格で、ClearというアプリでID、ワクチン接種証明カードなどを事前提出しないと会場に入ることはできませんでした。
HRテックカンファレンスとは
20年以上もの歴史をもつ、HR業界ではかなり大規模のConferenceで、米国内は勿論、海外からも業界関係者が多く参加するカンファレンスです。ほかにもHR関連のConferenceとしては小規模のものも加えると数えきれないほどのものがありますが、HR Tech関連でいうと、Workdayの開催するWorkday Rising、似たような大規模のものとしては、主に採用関連のトレンドなどがよくわかるLinkedInの開催するタレントコネクト(Talent Connect)など、いくつもあります。私は仕事柄、上記は両方ともいったことがあり、あとはConference Boardが主催するHealth Care Conferenceなども何度か行ったことがあります。
参加者として、conferenceに参加して得られる事とは
どこまでしゃぶりつくすか次第です。開催期間が大体3-4日くらいで、その間、他社のサクセスストーリーやベストプラクティス、最新トレンドなどについてのインプットのシャワーを受けられるので、専門家としては大変な刺激を受けることができます。色々と聞きながら、そういえばうちの会社でもこんな事ができるのではないかなどのアイデアが浮かんできます。
またチームとして参加している場合は、朝からディナーまでずっと一緒に過ごすことで、ある意味チームビルディングイベント的な効果を兼ねる事ができます。そして、カンファレンス開催期間中は、ビジネスチャンスを得ようと参加している各企業側は、あの手この手で各企業の担当者にアプローチし、ディナーを主催したり、ラッフルを開催して抽選で何かの商品があたるようにしたりと躍起になります。すでにクライアントになっている企業の担当者のカンファレンス参加費用をスポンサーとして負担する場合もあります。そうすることにより、既存クライアントとの関係を深める事ができます。カンファレンスの参加費用の相場っていくらくらいかご存知ですか?安くて1,500ドル、高いと3,000ドルなんていうものもあります。スポンサー企業が見つからない場合は、自分の勤める会社に払ってもらう事になります。
大体、開催地がラスベガスとか、LAやフロリダのディズニーランドの近くとか、NAPAバレーとか、わざと誘惑いっぱいの場所で開催することで、参加者を惹きつけるのですよね。中には配偶者や家族を連れてくるケースもあります。今回私は残念ながら一人で急遽参加することにしたのと、夜は会議を真面目に入れてしまったので、遊びの要素はほぼなかったのですが(典型的な真面目な日本人ですね・・・)、それでも久しぶりのin-personのイベントでだったので、大変新鮮な気分で一週間過ごすことができました。
あと大きな要素としては、やはりネットワーキングです。ベンダー主催のディナーに積極的に参加したり、展示ブースなどで沢山話したり、一緒に参加したチームの知り合いが会場に居たりして紹介してもらったりします。私は実際に、あるカンファレンスで紹介してもらったBenefits担当の人事マネジャーを、翌年自分のチームで採用することにつながったことがあります。狭い世界なのです。
ひとつ難点があるとすると、カンファレンス中に話をした多くの企業の方から、翌週になるとセールスコールやメールがたくさん入る事ですね。
会場の場所と滞在先について
会場は、Las Vegasのメイン通りである、Strip通りの一番南側にあるMandalay Bayホテルに併設されているConference Center。Conference Centerはさらにホテルの一番南側に位置しています。ピラミッド型をした有名なホテルルクソール(Luxor)の一つ下ですね。
空港からもタクシーで10分ー15分の距離です。Conferenceの事だけを考えれば、滞在先も同じMandalay Bayにするのが最も便利なのですが、上述のとおり、Strip通りの一番南でどちらかというと中心地からはやや外れているのが難点なので、滞在先はここにこだわらず中心地で探すのもありです。現在コロナにて客が少ないからか、どのホテルの値段も通常よりかなり低かった印象です。
初日9/28(火)のメインセッションは午後から
私はサンフランシスコから朝飛行機に乗り、ちょうど11時くらいにラスベガスに到着。朝食はコーヒーだけだったので、ホテルにチェックインしたら俄然おなかがすいてきました。ラスベガスと言えば、バフェが有名。この地に来るのは4年ぶりで、まだ行ったことのないバフェ”Wicked Spoon" がたまたま近くにあったので、そこで腹ごしらえ。$45くらいだったかな。コロナなので少々心配になりましたが。北京ダックがあって、美味しかったです。
で、いよいよ会場へ。
こんな感じの廊下をずんずん進んでいくと・・・
受付があって、そこでClearというアプリをダウンロードし、ワクチン証明書とIDの登録を求められました。
カンファレンスの一つのお楽しみは、いろいろなswag(グッズ)がもらえること。受付を済ませてもらったのがこちら↓
ショ、ショボい・・・このリュックペラペラです。そしてアメリカ大好きWater Bottle。うちに幾つ不要なWater Bottleがあるかわかりません(笑)。かつてはHerchelのリュックだったり、Tileのタグだったり、結構ジェネラスなものをもらった経験もありますが、これはショボい。
受付の横にあった、スポンサー企業のボードはこんな感じ。UKGはリュックに名前入れたり、展示会場も一番目立つところに巨大なブースをだしていたりと相当投資をしているように思いました。
さて、受付を済ませ、次にどこにいこうかなと。
EXPOとConference
今回のイベントは、EXPOとConferenceに大きく分かれます。EXPOは、スタートアップから大企業までのさまざまなHRテック関連企業がブースを出して、自社製品やサービスについての宣伝、デモを行う展示会場の事です。展示企業一覧表を数えてみたら、240社ありました。展示会場の場所や大きさによって勿論かかるお金は違うでしょう。
Conferenceの方は、さまざまな企業や著名人が旬のトピクスについて講演したり、自社のベストプラクティスや取り組みを紹介するものです。
受付登録が終わった時点では、1階のEXPO会場はまだ解放されていなかったので、2階のConferenceのセッションのほうに向かいました。
Conferenceのセッションについて
Conferenceは、1) Keynote 2) Mega sessions 3) Breakout sessions の3つに大きく分かれます。
1)Keynoteは、全部聞きましたが、ここは著名人が来て行う基調講演のセッションで、一番の大会場で行います。かなり気合がはいっており、今回も多くの学びがあり印象に残ったのはこのKeynoteセッションだったのではないかと思います(後述)。今回招聘されたのは以下の方々。
2)Mega Sessions
これらも大部屋で行われるセッションで、外れのすくない質の高いセッションが多いです。
3) Breakout sessions
これらは、同じ時間帯に同時に複数のセッションがいくつかの小部屋で行われるもので、自分の興味に沿ったものにジョインします。講演者との距離も近く、質問しやすいという利点がある反面、はずれのセッションもあります。今回はそれぞれのセッションが以下の8つのカテゴリに分類されていました。
さてここからいよいよ、実際に出たセッションで何か気づきがあったものについて、紹介していきます。
#1 :The HR Jobs of the Future (Mega Session)
今から10年くらいの間に、HRの仕事はどうなっているのか。どういう新しいHRの仕事が生まれているのか。という興味深い内容。講演者はCognizantという会社のHRのVP。彼のタイトルは、VP, Center for the Future of Work.
このブログでも何度か取り挙げたように、コロナをきっかけとしてHRの役割が大きく変化してきており、FoW (Future of Work)の議論が盛んにおこなわれてきています。そんな中で、Cognizantが、100人以上のCHRO、HR VP、CLO(Chief Legal Officer)と、これからHRの役割はどのように変化していくのかをブレストをして、X軸(時間)とY軸(どれくらいテクノロジーを必要とするかの度合い)の2軸でプロットしてまとめたのが下の表。
上記のうち、すべて一つ一つについて説明はなかったです。ですが、すごく理解しやすいもの、例えばWFH Facilitator (Work from home facilitator)などはすでに存在するroleといってもいいでしょう。また、さまざまなデータを活用したテクノロジーには今後より多くの投資がなされると予測されており、それにともない、Data Privacyの問題(従業員が社内外のシステムやネット上でクリックをするたびに彼らの”興味”があらわになる)や、Data biasの問題など(このブログでも紹介した、Algorithm Biasの問題もありますね)はどんどん深刻になると思われ、それに関連するHRの仕事ができてくるとの予測。Data biasをAuditするAlgorithm Bias Auditorなどは確かに必要になりそうです。そして、入社してから退職するまで、人種や性別、性的思考、宗教、等々によらずいかなるときもフェアに取り扱われるようにするためのHuman Bias Officerなども出てくるでしょう。
HR Data detectiveという役割は、説明がありました。あらゆるソースからデータを見つけてきて、精査し、調査する専門家。HR専門のデータサイエンティストですが、detectiveというからには、何かを調査する専門家という側面が強い役割です。そのデータは、ありとあらゆるHR関連のデータが含まれます。例えば、HCMのデータ、従業員サーベイ、勤務データ、LMS(人材開発システム)データ、報酬、サクセッションプランニング、ベネフィッツなど。分析、調査にとどまらず、その結果をまとめ、アクションにつなげるまでが役割とのことです。
最後に、VR Immersion Counselorというのがちょっとぶっ飛んでいて面白いので解説しておきます。ぶっ飛んでいると言いましたが、今回別セッションでも紹介された実際におきている事のトレンドとして、ミーティングや研修などでVRテクノロジーが使われてきているというもの。この役割は、VR技術を活用して、研修プログラム、onboardingプロセス, Coaching, reskilling, upskilling, safety trainingなどを実際にアドバイス・リードして作っていくというもの。H&R Blockというフィナンシャルアドバイザー企業では実際にVRを使ってカスタマーサービスのトレーニングを実施しているとのこと。このVR Training市場は、2022年末までに$6.3 billion(約7,000億円規模)になると予測されています。
表の一番右上にあるGenetic Diversity Officerというのは、もう遺伝子レベルでのDiversityの問題(遺伝的多様性)を扱うDiversityの責任者との事です。あまり詳しい説明がなかったのですが、私の理解はこうです。現在は、まず人種のカテゴリーも黒人とかヒスパニックなどというラフな括りになっています。でも、ヒスパニックとアジア人の子供たちとか、もう人種はいろいろと混ざり合っていくので、そんなラフな括りでは対応しきれなくなってくる。加えて、そこに違う軸から、LGBTQが入ってきたり、性別といっても、男性、女性とその中間、など実際にはもっとキメが細かい。これらの複数の組み合わせは、無数の組み合わせを作り出すわけで、そうなるともう遺伝子レベルでの話になってくるのではないかと思うわけです。
たった一つのセッションだけについてのエントリまでで、疲れてしまったので、続きはまた順次追加していきます。では、また。