【蒸留日記 vol.93-1】アカエゾマツの蒸留 in ニセコエリア!
さてさてこんにちは。蒸留士のエフゲニーマエダですどうも。
今回は嬉しくも林業チックなテーマでお送りしていきます!
きっかけとしましては、つい先月ほどにラベンダーのニセコ方面栽培&ラベンダーハニーProjectで大変お世話になっている養蜂家anmiさんから、維持管理している山林(アカエゾマツ人工林)で定期間伐で伐採枝葉が出たから精油採れないかなー?とありがたくお声がけいただき、、、
エフゲニーマエダ自身でもフランス論文から読み込んだ蒸留技術を応用した蒸留を試してみたかったので、先日にその機会を確実なものとしてきました!
今までの針葉樹蒸留は街路樹整備の現場に出くわしてそのタイミングで枝葉を貰うや積雪で折れた枝を見つけては回収してくるくらいの素材集めしかできていなかったんですね。
なのでガツッと大量の材料を一気に蒸留かけるという、本格的な蒸留所的活動は初めての試みだったのです。
ノウハウの習得も含めて、ニセコ方面へ冬の出張蒸留をやってきました!
蛇足なんですが、、、
豪雪地域出身のエフゲニーマエダが小雪地域とされる道南・ニセコ以南へ赴いた途端このような有様になりました。。。
ドカ雪の雲が当日おいらの居留地めがけて突き抜けてきたんですよね。
いやぁー道南って積丹岩内羊蹄あたりの山に遮られて雪降らないと思い込んでたんですが、冬将軍を連れてきてしまったよう。。。
■about アカエゾマツ(Picea glehnii)
アカエゾマツは林業統計的に述べると、植栽面積北海道No.1のトドマツ(50%)に比べてアカエゾマツの植栽面積は5%と、かなり希少な部類の針葉樹なのです。ゆえに今回、間伐実施の知らせを受けてすぐさま蒸留の名乗りを上げました!
アカエゾマツ(Picea glehnii)はクロエゾマツ(Picea jezonesis)とともに北海道固有のトウヒ属樹木です。
クリスマスツリーにもっとも利用される針葉樹と述べるとイメージしやすいでしょうか?
トウヒ属樹木(Genus Picea)というと、ドイツトウヒ(欧州原産)やカナダトウヒ(北米原産)、プンゲンストウヒ(ロッキー山脈原産)あたりが日本人でも聞きなじみのあるトウヒたちだと思います。
日本国内には北海道の2種含め8種のトウヒ属樹木が生育しているようです。
トウヒ木材の主な利用法はなんと楽器類への利用!
ピアノやバイオリンの響板への利用がトウヒ材の有名な利用法だったりします。北海道でも遠軽町のヤマハ造材工場で楽器利用のためにアカエゾマツ材が集積されているようです。
対して、アカエゾマツは成長がかなり遅いために大量の木材が調達できず家などの建築材にはあまり利用されないようで、ゆえに植栽面積が5%と少なく留まっている植栽状況のようなのです。
植栽量5%と希少な素材を、さらに活用幅を広げ林業経済の向上が目指せる蒸留と精油利用はありがたい利用方法ですよね。
アカエゾマツ蒸留の現況
現在2024年でのエッセンシャルオイル・アロマ業界においてアカエゾマツ精油はどんな販売・利用形態となっているのか?についてサクッと調べてみました!
アカエゾマツは無論北海道のみに生育する地域固有の植物素材なので、クロモジ精油などのように全国で蒸留販売されるよか、北海道の精油販売事業者のみで販売が行われているようです。
抽出率の低さと北海道でしか作れないブランド製品であるためか、価格がかなり高めに設定されていますね。
■vol.93-1では伐採後一ヶ月の枝葉を蒸留する。
さてさて今回の出張蒸留の趣旨について解説していきます。
まず、今回のアカエゾマツ蒸留回では、記事を大きく2編に分けます!
平成林業。としましては、アカエゾマツ精油の香り価値を膨らませるために「香り性質」や「数値データの取得」に重きを置きたい方針であるためです!
前回の2年前まで行なっていた単純な蒸留とは違い、データを取るためにボタニカル素材の処理方法や重量、ステータスをしっかり検証してから蒸留にかけます。
そしてラベンダー蒸留と同様、しっかり収油率を出していく方針です。
(さすが理系出身のエフゲニーマエダさん!)
そして、今回の出張蒸留で訪れたときに森の中で間伐〜収穫〜蒸留という流れではなく、すでに間伐して集積しある程度時間の経った枝葉を蒸留する運びとなります。
木から枝を落としてすぐに蒸留にかけたワケではないことに留意です!
■素材調達!
素材採取地といいますか、どこ育ちのアカエゾマツであるか?というと、精油生産が盛んな道東とは遠く離れた、道南・ニセコエリアのやや南方といった地理条件となります。
地理条件というのが精油の香り品質において結構大事な要素だったりします。ケモタイプとか言われるアレですね。
ニセコ・道南方面でアカエゾマツの精油を生産するのはおそらく平成林業。が初なんじゃないでしょうか?
今回の蒸留素材はアカエゾマツ人工林の定期間伐で出た枝葉を利用!
今回は若木まるまる数本分というありあまるほどのアカエゾ素材を蒸留させてもらえます!いやぁ〜いい経験だ!
価値のある精油をそのまま空気と土に還してしまうのはもったいないのですべて回収してオイルに換えてあげたかったのですが、蒸留器の規模と設定期間ではさすがに限度がありましたf^^;
これら雪に埋もれたアカエゾ枝葉はこのままではデカすぎて車に乗らないので、手鋸で可能な限りコンパクトにして蒸留現場まで運びます。(軽トラほしい…)
『前編vol.93-1』では、"新処理方法"を試す後編との抽出率や香りの差を調査するために"あえて素材をすべてハサミで細かく刻む既往の処理方法"で蒸留します。
人力処理なのですーっごい手間がかかるんですよ。。。
■蒸留1回目。
材料/Materials
重量はボウルと段ボール分の重さを差し引いて2521グラムとなりました。
蒸留釜の水が沸くまで2人で森から下ろしてきたアカエゾ枝葉を3cmほどのサイズにひたすら細切れにしていきます。
2.5kg稼ぐのに2人でも最低30~40分はかかっていたでしょうか、、、
蒸留時間/Distillation Time
前回よりかーなり久しいニセコエリア生育アカエゾマツ1回目の蒸留時間は3時間としました。
松葉・木材系素材は細胞内の松ヤニなどに精油を含んでいるので、じっくりと長いこと精油が出続けます。
なので柑橘やフラワー系素材に比べてマツ系素材は長尺の蒸留時間となります。
さらにトウヒ属樹木は特に精油抽出率が低い素材なので、相対的に蒸留時間も伸びてしまいがちなのです。。。
ゆえに精油の価格を跳ね上げている節があります。
精油が出始めた滴下開始15分時点のようす。
やはり針葉樹精油なのでラベンダーや柑橘のようにドバドバとは出ず、うっすら油層ができてじっくりと精油が抽出されているのがわかりますね。
この抽出ペースがだいたい3時間続くことになります。
蒸留結果/Result
蒸留1回目は10mL程度の抽出量となりました!
やはり抽出率が少なめのアカエゾマツですね。
2年前の蒸留経験から、アカエゾマツ1回の蒸留で得られる精油量はこんな少なさだったと記憶しています。
収油率
平成林業。で蒸留を実施してから初めて針葉樹・アカエゾマツ蒸留で収油率(%表示)を出してみました。
道端の野生ハーブやラベンダーの収油率は体感的に知り得ているのですが、それらと比べてると0.3%はめっきり低い数値に思えるおいらです。
これをどうにか増やせぬものかな〜と考えるのが蒸留家の仕事だったりします。
■蒸留2回目。
(眠かったので蒸留釜の写真は撮れてません!笑)
材料/Materials
2回目の素材重量は2524グラムとなりました。
蒸留時間/Distillation Time
2回目も1回目と同様に長尺の3時間としました。
既往の蒸留方法での収油率の平均値をとるために同じ蒸留時間に設定しています。
蒸留結果/Result
今回2回目蒸留で増えた分から蒸留1回目の10mLを差し引いてみると抽出量10mLとなったのでほぼ同様の素材量と蒸留時間により、同様の抽出量となったようです。
【収油率】
かなり低く出ましたね。伐採から時間が経っているためでしょうか?
それか、樹木の成長が遅くなる冬時期の枝葉からの抽出だから低い数字となっているのかもしれません。
まとめ!
今回大掛かりな出張蒸留となっているので、1記事内で数回蒸留をこなす内容となっています。
そして複数種類の蒸留方法も行なっているので、それらを1記事にまとめ上げるとなると内容量がとんでもねぇ情報量になってしまうので、前編後編で分けることにしました!
ということあって、まず本記事vol.93-1では、通常の素材処理方法によるアカエゾマツ蒸留結果として見てもらえればと思います。
お楽しみな香りの比較なども次の処理方法記事での比較としたいと思います。
以下、いよいよ新処理法を試す後編vol.93-2となります!
【後日、後編。】
〜関連記事リンク〜
前回、アカエゾマツの蒸留(地元エリア)
北海道での同属樹木ドイツトウヒの蒸留記事。
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