【蒸留日記vol.22】ドイツトウヒ蒸留に再戦を挑む!
●Introduction
今年の正月明け、ストローブマツ蒸留とともに実施したドイツトウヒ/ヨーロッパトウヒ(Picea abies)の蒸留。
このドイツトウヒ、抽出結果がいままでやった蒸留のなかで抽出率最下位1、2位を争うくらいエッセンシャルオイルが採れなかったんですよ。
という、とてつもなく抽出量が少ないヘルシーな針葉樹ドイツトウヒ。
しかししかし!!
そんなケチなドイツトウヒからもたらされるエッセンシャルオイルはとてもとても透き通ったアロマをしていて、ヨーロッパ北部の涼しげな森の中がイメージされる香りをしているんですね。
これはめっちゃ価値!!!
ってことで、どうにか抽出量の改善を図りたいと考えているエフゲニーマエダ氏。
●ヨーロッパトウヒの簡単なプロフィール
ヨーロッパの特に北部、スウェーデンやノルウェーあたりを主として生育しているトウヒ属のドイツトウヒ。
北海道では歴史背景により外国の針葉樹がたくさん植えられたなかで、特に育ちが良かった外来針葉樹のうちひとつ。
なのでドイツトウヒは北海道でわりとありふれた存在なんですね。
生物分類上ではアカエゾマツ(Picea glehnii)やクロエゾマツ(Picea jezonesis)との仲間にあたるんですね。
しかし最大の特徴は各部のサイズ!
育ちも日本のトウヒと比べて早ければ、葉っぱや松ぼっくりも巨大。
さすが大陸育ち!といったところ。
サイズ差を除けば両者とも非常に似通った特徴をもっています。
しかしそのわずかしか採れなかった精油の香りはスーッと美しく洗練された香り。
品位が高いんです。なので生産性の改善で試す価値は大いにあるなぁ、と。
ということで、やってみました!
●Material&Method
大柄に育ったドイツトウヒの下には落ちた葉っぱがたくさんある。
おそらく古い葉っぱが風に吹かれてもぎ取れたんだと思う。
それら落ち葉を拾ってきて精油の抽出材料とした。
ドイツトウヒは針葉が硬く扱いにくいが、金切バサミで細かく刻む。
葉っぱ内部の樹脂道の露出面を極力増やすイメージで刻む。
刻んで細かくはなったが、蒸留釜満杯分の試料を得ることができた。
刻むのにかかった時間は1時間ほど!疲れた。
●Results
抽出開始直後のようす。
やはり材料を刻む方法をとると精油の抽出が早いよう。
開始10分ほどでこのように油層がはっきりと現れている。
しかし、期待とは裏腹に・・・
開始から2時間経ち蒸留終了した時点でのようす。
あまり油層の厚みが変わってないどころか、ほとんど溜まらなかった。
さすがドイツトウヒ。
右が今回の抽出改善実験で得た精油で、左手が素材を一切刻まずに2度ほど蒸留を繰り返して得た精油。
素材を刻むと、どうやら収油量自体は向上するようだ。
だがドイツトウヒは前提あまりにも精油を含んでいない、ということがわかる。
●Discussion
葉っぱを刻んで樹脂道を露出させて精油を採れやすくする工夫を行なったが、ドイツトウヒ(Picea abies)では収油率がさほど増えた様子がなかった。
根っからドイツトウヒは精油成分を持っていないのかもしれない。
ドイツトウヒだけでなく、エゾマツ類をはじめプンゲンストウヒなども同じように収油率が高くないので、トウヒ属はそもそも葉っぱに精油≒樹液をあまり含んでいないのかもしれない。
しかしドイツトウヒはエゾマツやトドマツと違って、不快味がなく心地よいスーッとする冷涼感がある精油を生み出す。
なので、どうにか効率よく精油抽出ができるよう取り組んでいきたい!
【蒸留マガジン】
若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。