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【蒸留日記 vol.97】北海道では手に入らない、戴いたヒノキ葉っぱを蒸留する!
えーこんちゃこんちゃ。
蒸留家のエフゲニーマエダでっすどうも。
植物から香料・オイルを採るほうの蒸留家でっす!
そういえば〜…の蛇足なんですが、わが敬愛するフランスの最北のラベンダー農園ことフォーバレー蒸留所さんがなにやら新しい試み?を思わせる写真を投稿。。。
おぉぉ〜〜〜青いオイル生産し始めたか〜!という感想。
なんのボタニカルであるかは明言避けているようなんですが、ヨーロッパの蒸留で青色作れるといったらカモミールかタンジーかワームウッドかアキレアくらいだよな〜とか思いつつ。
なんか予想候補結構ありますね。笑
とりまフランスでも植物療法の選択肢が増えて青い精油がトレンドとなっていくのかなぁ〜とか思う次第でした!
ではヒノキ蒸留の本題へ移りましょう。
■頂き物のヒノキリーフ。
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水蒸気蒸留愛好コミュニティのひょんなつながりで、関西エリアからとある荷物が届きました。
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ご開封〜〜〜からの
はいドン!出ました!北海道にはほぼ生えていない国産ヒノキ(Chamaecyparis obtusa)の葉っぱです!!(それもわんさか)
そしてありがたいことに旬モノの紅いみかんまで…!!アリガタヤ…
もともとヒノキリーフをとある蒸留プロジェクトに活用したい予定があり、コミュニティ内でヒノキ葉っぱの先着販売の声がかかった時にすかさず応募していた次第でした!
まぁ側から見ればありふれた針葉樹の葉っぱ(本州では)なんですが、北海道では送りでもしてもらわなきゃなっかなか手に入らないし、本件の謝礼は震災被害の義援金になるということだったので幾分気持ちのいい購入機会にもなりました。
▶︎ちょっとヒノキについて語る。
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ヒノキといえばなんといってもその木材の香り!
木材からしっかりと香るということは、世の中にはちゃんとヒノキ精油というモノも存在しています。
が、当のヒノキ精油。
実は香りともにポピュラーな木材抽出精油のほかに葉っぱからも精油を抽出することができるし、やや珍しいですが葉っぱ精油も市販で存在しています。
針葉樹は木材から精油抽出できる樹種、葉っぱからしか精油抽出できない樹種で曖昧なんですよね。針葉樹みんながみんな葉っぱ&木材から精油を抽出できるとは限らないものでして。。。
と考えると、日本のヒノキ、スギ、ヒバは両素材からもそれぞれ趣の異なった精油(wood&leaf)が得られるので豊かなもんですほんと。
頑張ればホームセンターの角材からでもヒノキ精油は抽出可能らしいです。
(製材から時間が経ってるので抽出量は減っちゃってそうですけどネ。)
西洋と東洋のヒノキ
で!
ヒノキ精油に関して日本の外に目を向けてみると、いるんですヨーロッパにも。
海外から仕入れている精油バリエーションの中に「Cypress」という精油を見たことある人多いんじゃないかと思います。
サイプレス、まぁ直訳するとそのまま「ヒノキ」になるんですが、これがアヤなんですね。
ヨーロッパに生育する代表的なヒノキ科植物というとイトスギ(Cupressus sempervirens L.)にあたるワケです。(しいてはセイヨウヒノキとも)
東洋・日本のヒノキ(Chamaecyparis obtusa)とはぜんぜん別種の植物種になるわけですな。
ヨーロッパ=シプレッサス、東洋=カマエシパリスという苗字(属名)になります。
いや、スギって書いとるやん!!
と思われるも必至かと思うんですが、おそらくCeder(シダー)と読まれる現地名称が和名翻訳されて通称イト"スギ"となっているんじゃないかと予想してます。
【Thuja plicata→ベイスギ】や【Cedrus deodra→ヒマラヤスギ】のようにとりあえず?でCeder→スギと和名変換されてる例をよくみます。
本来はCedrus(ヒマラヤスギ属)の語なんですけどね。。。
おいらはこのイトスギ精油の香りを確かめたことが無いのでどんな香りなのかはわからないんですが、"学名準拠"ではなく"通称名の翻訳"でみると西洋・東洋どちらとも「ヒノキ」で表されてしまうややこしさ・誤解のもとがあったりします。
和名ベースで世界の植物を勉強しようとすると大混乱招くんですよね。
なのでおいらはラテン語(学名)ベースで覚えるようにしてます。はい。
これが言いたかったです。
なんか日本のヒノキ精油には有名な"ヒノキチオールがわずかに含まれる"そうなんですが、イトスギになるとどうなるんでしょうかね…?
ということでどなたかイトスギ/西洋ヒノキ精油と日本ヒノキ精油の香りの違いがわかる方いらっしゃいましたらばコメントにて感想伝えてくれるとすごい嬉しく思います。
■材料準備!
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今回では、まず純粋なヒノキリーフ精油の香りと収油率を知りたいので、ヒノキリーフ単体決まったグラム数を蒸留してみます。
まぁ見ての通り小枝も入っちゃってますが、折れた部分の匂いを嗅いでも特段強いヒノキの香りはしませんでした!
葉っぱ精油への影響なしと判断します。
(ヒノキの特徴的な香気はピンク色の芯材にしか含まれていないのかなぁ)
25Lバケツから溢れんばかりの物量のヒノキリーフですが、、、
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ヒノキリーフは珍しい素材なので機械粉砕ではなく大事に手で刻んでゆきます、刻みました。体積がすごいコンパクトになりましたね。
ニオイヒバ(Thuja occidentalis)の葉っぱを刻みまくってたあの頃を思い出す光景ですが、ニオイヒバほど強い芳香はないようです。
強いていえば、刻んだ葉っぱ断面からシトラスライクな香りが香ってくる程度でしょうか?
あの誰もが知る芳醇な香りがするヒノキ(精油)ですが、葉っぱからの香りとなるとシトラスの香りになるのは意外っちゃ意外ですよね。。。
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細かく刻んだヒノキリーフの充填・蒸留前のワンショット。
ヒノキ葉っぱはアカエゾマツに並んでThe緑色!グリーン!が美しい葉っぱ素材だと思ってます。
■いざ蒸留!
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ヒノキリーフは細かく刻んでもじーっくり抽出される素材のようでした…!
柑橘やラベンダー、細かく刻んだマツ系素材のようにいきなりドバッと精油が出てくるワケではないようですね。
ヒノキ葉っぱ自体はそれなりに精油を保持している部位であることは、前回のヒノキ葉っぱ蒸留にて経験済みです。
その時の経験からですが、時間をかけてじっくりと抽出されるイメージの蒸留素材だったりします。
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で、3時間蒸留経過時点のようす。
いやいやまだ行けんだろ!笑 ということで加水して再び同様の時間蒸留します。
というのも、、、
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拾った葉っぱの少なさに対して、結構な歩留まりの精油が得られました!
そして精油の貯まるペースが、素材を細かく刻んだわりにはすこぶるスローペースだったのでもしやと思い、加水してさらに同じ時間追加蒸留してみました。すると明確に増えましたね!
どうやらヒノキ葉っぱはじっくりと精油が抽出されるみたいです。
前回(蒸留素材のグラム数は測ってない)の蒸留では2,5hで一旦区切り、そのあとも再び同様の時間(2,5h)蒸留してみるとわかりやすくカサが増えたことから5時間は蒸留しても精油は出続けるという経験があったのですね。
で、さらに反復時間蒸留すること、、、
■蒸留結果は…!?
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比較的長尺な蒸留となりましたが、計5時間の蒸留で推定22mLのヒノキリーフ精油を得ました!やはり素材重量のわりに精油の採れる量意外と多いですね!
ではでは、お楽しみの収率計算といきましょうか〜!
1.収油率
まずヒノキリーフとしての純粋な収油率を測ります。
いわゆるデータ取りってやつでしょうかね。
抽出量[ 22ml ]÷ 素材重量[ 1500g ]x 100 = 1.466%
お、1%越えの数値は久々にみました。どこにこんなオイル隠れてるんだか…
これ蒸留時間が2h30min時点とかだとどれぐらい数値縮まるんでしょうかね?調べてみる価値ありそうです。
蒸留時間2時間程度での収油率計算、とりあえずの次回の課題としておきましょうか。
(今回精油を合計してしまったため計測できず…‼︎)
2.香りとか
ヒノキは木材から得るTheヒノキ!な香りとはまた違った、純粋なヒノキ葉っぱ精油の香りを確かめます。
まず22mL得られた精油。
木材から得る香りとは大きく異なった香りで、どこかうっすらシトラスを感じスッキリさわやかなフレッシュノートな香りの精油となっています。
うーん、総じてシトラスな個性を持った精油だと思ってます。
すーーっごい絶妙に芳醇なヒノキの木の香りもするっちゃするんですよ…
芳香蒸留水/フローラルウォータに関しては、、、
精油ではうっすらと感じられたシトラス香が特に強く感じられ、カルダモン様の心地よい香り、並びにスパイシーノート(ブラックペッパーに感じる)も強く感じられるなど、市販で広く浸透しているヒノキ精油とは大きく異なる香りをもったフローラルウォータが得られました!
シトラシーな成分は水に溶け出やすいんでしょうかね?
そんな感想を持ちました。
当人のエウゲニーマエダはシトラスアロマをあまり得意としないので癒されるか?と言われるとそうではありませんが。。。
■考察、展望/Discussion
ヒノキ 葉っぱの香り成分に関するエビデンスといえば、この論文がたいへん参考になるかなと思います。
ヒノキ葉っぱが持ってる香り成分の季節変動について調査された研究ですね。
おおまかな代表的成分が示されています。
さいごに、このヒノキ蒸留の機会をくださった関西エリアヒノキ葉っぱ素材提供者の方々には大変感謝申し上げます!
〜関連記事リンク〜
マグレで拾えたヒノキリーフの初蒸留記事⤴︎
北海道に生えるヒノキ科ニオイヒバの蒸留記事⤴︎
北海道の庭園樹として数多く植えられるヒノキ科コノテガシワの蒸留記事⤴︎
スギ葉っぱも一応蒸留しているよ⤴︎
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