ハーブ園造成につき、チャイテラエラベンダーについてめちゃくちゃ調べた!
サクッとチャイテラエラベンダー(L. x chaytoriae)について!
登場人物紹介的にかなりサクッと紹介しますと、チャイテラエラベンダー(Lavandula x chaytoriae)は1980年代英国生まれの、コモン(Lavandula angustifolia)とウーリー(Lavandula lanata)とのハイブリッド系統種。
ラバンジン(Lavandula x intermedia)やスイート(Lavandula x heterophylla)と同様のハイブリッド種ラベンダーです。
チャイテラエは天然環境下では生まれませんでした。
交配原種のコモンラベンダー(L. angustifolia)は南フランスの涼しげな高原に自生しており、もう一方のウーリーラベンダーはスペイン南部の暑く乾燥したシエラネバダ山脈に自生していて、互いに生育地が離れているためラバンジンのように自然交雑できなかったとされています。
そこで、英国園芸協会(RHS)所属の研究者ティム・アップソン氏が、栽培されたコモンラベンダーとウーリーラベンダーを交配させたところ新たなハイブリッド種を作出し、コモンとウーリーは互いに交雑が可能であることを確かめたようです。
ウーリーのベルベット質感の白っぽい外見と、コモンの耐寒耐湿の性質を受け継いだことで園芸産業が盛んな英国を中心に、シルバーリーフ作物として園芸家に好まれるハイブリッドラベンダーとして誕生し世に広まりました。
■ラベンダー属植物としての立ち位置(植物分類学)
■園芸作物としてのチャイテラエラベンダー
チャイテラエラベンダー系統の作出は1980年代とごく近年なのですが、英国の園芸研究組織によって作出されたこともあり、園芸目的の見栄えがいい品種が多数作出されているようです。
香料作物よりかは園芸作物としての色が濃いことが見受けられます。
英国のラベンダー品種を図鑑のように見やすくまとめているダウンデリーナーサリーのチャイテラエ項目を参照してみると、5品種が紹介されています。
中でも有名な「ソーヤーズ」や「リチャードグレイ」は日本の園芸市場でも目にすることのできる有名なチャイテラエ系統の品種でしょう。
特にソーヤーズは、日本においてハイブリッド系統種名のチャイテラエよりも広く知れ渡っており、ソーヤーズが系統種名のように扱われていたりもします。
▶︎日本国内で手に入るチャイテラエラベンダー品種
無論、日本国内で最も入手しやすいL. x chaytoriae品種というのがソーヤーズ。1980年代に英国で作出された、古典的なチャイテラエラベンダーの品種とされます。
わりとどこの大型なハーブショップ(オンラインショップ)でも目にするハイブリッドラベンダー品種のひとつです。
(ウチでも見本花壇に数株植えてるんですが、どうも見た目ラバンジンなんですよね…苗の取り間違えかなぁ)
ホームセンターなどで時折目にするのがハルディン製品のシルバーサンドでしょうか。
こちらは日本国内で入手することのできるチャイテラエラベンダー品種のなかで、かなり葉っぱや花穂の白さが際立つ品種です。
ハルディンが2015年に作出し販売する品種のようで、苗価格がやや割高です。
■作出者のティム・アップソン氏について
ティムアップソン氏は見たところ、イギリスはRHS-王立園芸協会所属の現役キューレーター(植物園付き研究者)さんのようです。
エフゲニーマエダ自身としては、2000年にラベンダー属植物のすべての情報をまとめた『The Genus Lavandula』という図鑑を発刊した人として知っています。
2000年に発刊された図鑑なので2024年現在からすると情報がやや古いところなど見受けられるのですが、ラベンダー属植物の基礎的な部分を学習するに最適な教科書であることは間違いありません。
■チャイテラエラベンダーの研究例はかなり少ない。
2024年現在、ラベンダー属植物においての研究例が盛んな系統種といえば、21世紀以降薬用植物として再び注目を浴びて以来栽培研究が年々加速しているコモンラベンダー(L. angustifolia)でしょう。
次にデンタータラベンダー(L. dentata)やレースラベンダー(L. pinnata, L. multifida)などが香料作物としてアフリカ北部諸国や地中海沿岸国にて精油成分の研究が熱心に行われているようです。
採油作物として主流のラバンジン(L. x intermedia)については、中国がリードしてゲノム研究の対象として主に研究しているといった印象があります。
しかし薬効に関してはコモンラベンダーに軍配があがるので、研究例としてはやはりコモンが上をいくようです。
そして本記事のテーマであるチャイテラエラベンダーについては、ほぼ存在しない状況となっています。
各論文公開サイトで[chaytorae]などで検索していますが、学術記事がなかなか見つかりません。
▶︎ウーリーラベンダーの研究例とチャイテラエラベンダーの香りについて
チャイテラエラベンダーのエッセンシャルオイル商品や精油成分についての研究例が見当たらないため、完全に推論での論旨展開になります。
まず、無難に考えてコモンラベンダー(L. angustifolia)とウーリーラベンダー(L. lanata)のどちらかの性質を必ず持っていると考えられます。
香り成分をコモンとウーリーとでキレイに2等分しているワケではなく、「品種」それぞれによって形質がコモンかウーリーかどちらかに片寄っていることが予想できるのです。これは中国のラバンジン遺伝研究を参照すると、形質がコモン寄り(LX-LA)かヒロハ寄り(LX-LL)かで説明されていることから完全等分な性質はありえないという結果に基づきます。
言い換えると、そのどちらともの種が持たない成分をチャイテラエが新たに持つことは考えにくいのです。
そこで、コモンラベンダーについては身近にアロマオイルが入手できることから香りは周知されていますが、スペイン南部原産の限定種ウーリーラベンダーの香りはなかなか知られていないと思います。
そこでウーリーラベンダー(Lavandula lanata)についての研究例をいくらか見つけてきました。
まずコチラ、2008年のスペインのグラナダ大学での研究例。
畑で栽培されたウーリーラベンダー(栽培種)とシエラネバダ山脈に自生しているウーリーラベンダー(天然種)とで精油成分を比較した論文になります。
見たところコモンラベンダーとはかなり大きく違い、どちらかというと樟脳とシネオールが特徴成分であるヒロハラベンダー(L. latifolia)にやや似た構成となっているようです。
しかし精油組成で特徴的なのはコモンラベンダーであっても高数値で5%ほどしか含まないラバンジュロールをウーリーラベンダーは40%近くも含有している点は無視できないでしょう。
コモンラベンダーにもラバンジュロールを代謝生産できる能力があるので、おそらくは半数量かウーリー元来の含有量に近い数値になることが予想されます。
次に、やや古いですが1994年イタリアのピサ大学での研究例。
この論文ではシエラネバダ山脈自生種の精油成分表が記載されています。
■L. x chaytorae 'Sawyers Hybrid'を裏庭作物として導入検討する。
さて!
続いての記事:続編記事として分けて書きたいと思います。
コモン(Lavandula angustifolia)とウーリー(Lavandula lanata)のハイブリッドであるチャイテラエを採油用に栽培してみる挑戦!
これについてを詳しく、次の記事で書いてみたいと思います。