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【蒸留日記 vol.146の付録】ヒバ精油に似た香りを持つ精油各種の化学成分表。

昨日、青森ヒバおがくずを蒸留して精油を抽出した記事をあげたんですが、その中身序論で、ウッド系精油や香水原料として名高いシダーウッドバージニア精油とヒバ精油は香りがかなり似ていると文面で触れ込んだのですね。

植物学的には、ヒバとシダーウッドバージニアどちらとも"ヒノキ科"までは同じくくりなのですが、青森ヒバは日本固有のアスナロ属(Genus Thujopsis)であり、シダーウッドバージニアは北米原産のビャクシン/ジュニペルス属(Genus Juniperus)の針葉樹となっています。
同属植物ではないんですね
むしろシダーウッドバージニアの方は、クラフトジンの絶対的な香り付けに使われるジュニパーベリー(セイヨウネズ/Juniperus communis)と同じ属の植物になります。

しかしどんなワケあってか、地球上を遠く離れた植物同士なのに
それぞれ樹木が作る香りはソックリなのです。

そこで、早い話それぞれの精油の成分表を持ってきてみることにしました!
どこまで類似しているのかを化学成分をひとつひとつあげて(本稿では主要成分のみ)どういった構成になっているのかを調べてみましょ〜う。
(ちゃんとデータソースも添えとくので含有1%以下詳細まで気になる人は見てみてね!)


▶︎青森ヒバ精油の芳香成分

青森ヒバ/ヒノキアスナロの学名はThujopsis dolabrata var. hondaeになります。
念のため、能登ヒバをはじめとして本州・西日本などに自生するヒバ/アスナロは基変種のThujopsis dolabrata var. dolabrataです。
未確認ですが、おそらく絶妙に香りが違っていると思います。

アロマ&石けん専門店クーナの公開している精油成分データ⤵︎⤵︎

・ツヨプセン(60.8%)・セドロール(5.2%)etc…

https://amzn.to/3ZTaxRw

国産アロマの専門店かおりとの公開している精油成分データ⤵︎⤵︎

・ツヨプセン(34.66%)・セドロール(5.86%)・β-ヒマカレン(4.62%)
・ウィドロール(2.65%)・クパレン(2.49%)・α-カミグレン(1.25%) etc…

https://kaorito.shop/?pid=133065686

●論文付帯の精油成分データ⤵︎⤵︎

・ツヨプセン(49.4%)・セドロール(5.8%)・β-ビサボレン(4.2%)

https://www.researchgate.net/figure/Chemical-composition-of-the-selected-essential-oils-Values-in-parentheses-are-the_fig3_375237287

https://www.researchgate.net/publication/375237287_In_vitro_and_in_silico_prediction_of_antibacterial_interaction_between_essential_oils_via_graph_embedding_approach


▶︎シダーウッド・バージニア精油の芳香成分

シダーウッド・バージニアの学名はJuniperus virginianaになります。
和名はエンピツビャクシンで、ドイツ語ではワコルダーです。
ビャクシン属の針葉樹で、日本国内だとミヤマビャクシンなどが類縁植物にあたりますが、生育地域がそれぞれ北米大陸東部とアジア極東という距離差があるため、遺伝的/外見的にやや離れているようです。

アロマ&石けん専門店クーナの公開している精油成分データ⤵︎⤵︎

・α-セドレン(27.1%)・セドロール(20.8%)
・ツヨプセン(20.4%)・β-セドレン(5.0%) etc…

https://amzn.to/406UqRC


▶︎シダーウッド・テキサス精油の芳香成分

シダーウッドテキサスの学名はJuniperus mexicanaになります。
バージニアと同属の異種植物になりますね。
ウッド系精油でもなかなかニッチなシダーウッドテキサス精油ですが、マンデイムーンさんにて取り扱いがあります。(以下リンク)

https://www.mmoon.net/c/0000002706/0000002712/0938-010

●[学名+Chemical composition]でググると成分表が出てきたサイトで精油成分を参照してみます。Miraclebotanicals.comの記載データになります。

・セドロール(25.96%)・α-セドレン(25.53%)
・cis-ツヨプセン(20.29%) etc…

https://miraclebotanicals.com/products/mexican-juniper-wood-essential-oil#:~:text=Main%20Chemical%20Components:%20*%20Cedrol%20(25.64%)%20*%20cis%2DThujopsene%20(23.94%)%20*%20alpha%2DCedrene(18.89%)


▶︎シダーウッド・アトラス精油の芳香成分

シダーウッド・アトラスの学名はCedrus atlanticaになります。
アロマ業界での呼称は、植物学的には科レベルで異なっていますがシダーウッドバージニア(ヒノキ科ビャクシン属)と同じく"シダーウッドOO"と共通呼称されています。
しかし、植物学的にはシダーウッド・アトラスはマツ科ヒマラヤスギ属の針葉樹であり、ビャクシン属とは数億年前の原始時代に先祖植物が分岐したレベルで遺伝的にかけ離れた針葉樹同士です。
北海道を含む日本全国では記念樹木として植栽されることの多いヒマラヤスギ(Cedrus deodara)にごく近い仲間樹木で、種小名のatlanticaが示すように北アフリカの大西洋側に生育しているようです。

フランス発のオーガニックブランド フロリハナ  様の公開している精油成分データ⤵︎⤵︎

・β-ヒマカレン(45.7%) ・α-ヒマカレン(19.0%) ・γ-ヒマカレン(12.9%)
・trance-α-アトラントン(2.0%) ・δ-カジネン(1.8%) etc…

https://cdn.shopify.com/s/files/1/0839/1766/8664/files/FLE022S121222MA.pdf?v=1708576561

メドウズ アロマテラピープロダクツの公開している精油成分データ⤵︎⤵︎

・β-ヒマカレン(49.72%)・α-ヒマカレン(17.18%)・γ-ヒマカレン(10.85%)
・α-アトラントン(2.1%)・δ-カジネン(1.09%) etc…

https://www.meadowsaroma.co.jp/pdf/hcdata/hce010-4.pdf


▶︎ウェスタンレッドシダー精油の芳香成分

ウエスタンレッドシダーの学名はThuja plicataになります。
北アメリカ大陸の西部に生育するクロベ属針葉樹です。
材木業界においては、T.plicata木材とシダーウッドバージニア(ビャクシン属)木材はともに"レッドシダー"と呼ばれるため紛らわしく、木材の色も赤系なので両者混同されがちですが、植物学上ではかなり離れた樹木同士です。
細かくは、エンピツビャクシン/シダーウッドバージニアのことをイースタンレッドシダー(東の赤杉)と呼び、T.plicataのことをウエスタンレッドシダー(西の赤杉)と呼び分けているようです。
精油製品としてはかなりニッチですが、ヒバ精油との共通項としてβ-ツヤプリシン/ヒノキチオールを多く含有しているという特色があります。
ゆえに腐りにくい木材製品が作れるということで、ログハウスの構造材や屋外家具などに活用されています。
ウエスタンレッドシダーは木材としては珍しく甘い香りが強いので、シダーウッドバージニアとは大差ある香りです。

論文付帯の精油成分データ⑴⤵︎⤵︎

・α-ツヨン(62.12%)・β-ツヨン(7.06%)・フェンコン(7.06%)
・サビネン(6.00%)・テルピネン-4-オール(4.66%)・α-ピネン(1.26%) etc…

https://www.researchgate.net/publication/40028773_Chemosystematic_Value_of_the_Essential_Oil_Composition_of_Thuja_species_Cultivated_in_Poland-Antimicrobial_Activity

論文付帯の精油成分データ⑵⤵︎⤵︎
※比較精油のヒバおよびバージニア精油は木材抽出精油なので参照データはTwigs Without Leaves(C)の数値を参照。

・α-ツヨン(59.2%)・フェンコン(10.0%)
・Beyerene(3.7%)・βツヨン(3.7%)・酢酸ボルニル(2.4%) etc…

https://www.researchgate.net/publication/334462480_Chemical_Composition_of_the_Essential_Oils_From_Twigs_Leaves_and_Cones_of_Thuja_plicata_and_Its_Cultivar_Varieties_Fastigiata_Kornik_and_Zebrina

日本国内では、マンデイムーン さんにて(名前こそ違っていますが同じ植物)Thuja plicataの精油が扱われています⤵︎⤵︎


▶︎日本ヒノキ精油の芳香成分

ヒノキチオールの命名源…かと思いきやそうではなく、ヒノキチオールが発見されたのは台湾ヒノキ(Chamaecyparis taiwanensis)から。
のちに日本国内のヒバ木材にも含まれていることが発見され、日本ヒノキからもごく微量検出されるそうです。

アロマ&石けん専門店クーナの公開している精油成分データ⤵︎⤵︎

・α-ピネン(33.9%)・カジネン(19.5%)
・α-カジノール(9.6%)・τ-ムウロロール(5.8%)・α-ムウロレン(5.1%)
・γ-ムウロレン(4.9%)・τ-カジノール(4.6%)

https://amzn.to/3P9XtT2


■考察。

ヒバ精油の成分組成表を正確性を上げるために何箇所からか引用してきましたが、どの成分表も基本的にツヨプセンが5~60%台で、次にセドロールが5%台という数値にまとまっていました。
この香り主成分の構成比率がヒバ精油(T. d. var. hondae)の基本構成になるのだと思います。

さて次に、香りが酷似しているシダーウッドバージニア(J. virginiana)について。
セドレン、セドロール、ツヨプセンが均等に20%台で並んでいるのが特徴の精油のようです。
さらには、香りが似ている同属植物のシダーウッドテキサス(J. mexicana)ともほぼ似た構成でした!

ヒバ精油とは各種成分の含有数値は大きく差がありますが、主要な構成成分としてはほぼ同じであることがいえそうです。


ほかヒノキ科植物で有名な精油の成分も表記してみましたが、似通った主要成分はみられませんでした。
完全に共有した香り成分を持たないのに、これといったウッド系の香りを形作れるのは化学者視点からみてもおもしろい事柄ですね。

ゆくゆくは化学成分表を見て、雑味感じない精油ブレンドレシピの参考に活用できるやもしれませんね!

ほんの香りについての勉学のためのデータ列挙でしたが、気になるものあれば随時書き足していってみたいと思いまっす!



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エフゲニーマエダ(平成林業。)
若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。