だから私はアパレルで
大好きな4月が終わり暑さが続く今日この頃、帰り道には風が少し冷たくて。微かに香る柔らかな花びらの匂い。今日あったこと思い返しながら思い浮かべる人が出来た。
何でアパレルで働いてるの?と聞かれた。何でなんだろうとかまず考えたことがなくて当たり前のようにアパレルの道を選んだ。服が好きで服で人を幸せにしたくて世界に絶望しても自分の足で自分の体で生きていくのは他でもなくあなただけだから。何を纏う?どんな自分で生きる?あなたは自由だ。
古着屋で働き始めて思うことは沢山あるけど見ていて気持ちがいい。皆んな服が好きで宝物を探しにきたように目を輝かせて一つ一つ手に取って。
試着室で思い浮かべるのはどんなことだろう。今週末のデート相手?旅行先?誰かの喜ぶ顔?イケてる自分を見て満足して満ちて欲しい。ただそれだけで。
接客が上手いとか下手とか関係なく接客が好き。誰かの脳裏に残る思い浮かぶような目の前の人が死ぬ間際まで私を思い浮かべてあの服買ってよかったまた行きたいなって思わせたい。
そこまで思わなくても、服を愛して欲しい。その服を選んだ自分も丸ごと。
新品で働いてた時不安そうな顔して鏡にお洋服当ててる人多かった。似合いますよと背中を押すことが販売員の役目だが私は似合いますよが苦手だった。似合うかどうかは自分が決めないと意味がないから。だからかな、接客されて似合いますねと言われるのが得意じゃなくて。何で見ず知らずの人に言われて自信持てるんだろうとかちょっと捻くれモード入る時ある。素直にありがとうございますというけど。
でもあの頃は毎日誰かの服を考えて明日はあのお客様が来るから用意しとこうとかコーディネートを考えて組んでおいて足元から頭まで考えるのが楽しくて。
他にもお店がある中で選んできてくれる事がどんなに嬉しいか今じゃ凄くわかる。
そりゃあ、嫌なお客様も来る
服の見方が雑な人、カフェだと思ってる人、ゴミを平気で捨てていく人、勝手に試着する人、挨拶がない人、服を愛していない人、あげだしたらキリがない
悲しくなるけど、そういう人にも大切な人がいて他の誰かを常識ないという目で見てるんだろうとか思うと馬鹿馬鹿しくなってどうでもいいやと思う。
あたたかさを感じるお客様は神様だ
服を触る指先が優しい人を久しぶりに見た。服が喜んでるように見えた。丁寧に畳む姿が頭に焼き付いている。愛を感じるタッチの仕方、無意識に愛で溢れていた
私最近人を信じなくなったんです。信じるって期待する事で前は無条件に人を信じれた。目の前の人の言葉を、まるきり信じてた。期待した。意味がないんだってどん底に落ちた時、もう何も期待しないし誰も信じない。必要ないし利用されるのなら先に利用してやるなんて思ったりして。
でも、信じたくなった。安心する場所がそこにあって。隣にいると胸がぎゅうっと温かくなる。心の奥に居てくれる感じ、上手く言えないけどそんな気がして。
アパレルは天職なんだといつも言うけど、本当にそうで。ただ服が好きなだけじゃなくて綺麗事に聞こえるけど目の前の人を幸せにしたいだけで。皆んな好きな自分で生きて。誰にもなれない自分だから、自分だけを楽しんで欲しい。
創りものの自分を捨てた時、世界が180度変わった気がした。何年も自分を愛せていなかった。好きな服もわからず何が着たいのかもわからずどんな自分で生きていたらいいのかすらもわからないまま。
でも今じゃ誰よりも自分が好きだし毎日毎日楽しくてハッピーなんだ。昔ね、作文を書いてきてくださいって面接の時言われて書いて行ったことがあって。
あなた自身を表すことを文にしてきてください何でもいいですあなたがわかることならって。書き終わって面接の時に読んで泣きながら話したら、そういうことですよって言われたの。内容は、タイトル「人生」でアパレルを目指すきっかけを書いたんだけど。自分の宿命なんだろうな、愛を伝えていきたいアパレルは愛そのものだ。みたいな事をね書いたんだよね、4枚びっしり。
そんな事誰にも言ってこなかったから初めて言葉にした時自分でも感情がぐちゃぐちゃになって大泣きした。落ちたと思ったら次の日にうちに来なさいって。
まあ、色々あってそこは辞めたんだけど。こんな出会い方もいいなって。
だから私はアパレルで。だから私は、アパレルで。
明日何着よう、明日はどんな自分でいようって考えるのは
明日を夢見てるからで。
当たり前のように明日に夢見て
当たり前のように、明日も来るって思えるのって幸せな事だよね
「だから私はアパレルで」
2024.5