【カザフスタン🇰🇿での日々】 アルマトゥとチャリン・キャニオン
「ここ、ヨーロッパやん・・・」
12年前に初めてカザフスタンを訪れ、アルマトゥを観光したときに抱いた感想だ。12年経っても、最初に受けた印象は変わらない。そして訪れる度に街が進化していく様子が見てとれる。
人口159万人を擁するアルマトゥは、1998年に首都がアスタナに移転するまで、カザフスタンの首都だった。現在でも、教育・経済・文化の中心であり、日本人を含め海外からの来訪者にとっても玄関口となる重要な都市である。
中心街は碁盤の目状に整備され、歩道は広く歩きやすい。街を行き交う車は最新式のEVや高級車から、レトロな作りのロシア車・LADAや初代イプサムにデリカといった日本製の中古車まで様々であり、その間を縫うようにトロリーバスや天然ガスを燃料とする市バスが走っている。
ショッピングモールにはブランド品のブティックが並び、オープンテラスのレストランでは郷土料理だけでなくユーラシア大陸各地の料理が振舞われている。
イギリスやフランスの大学がオフショア・キャンパスを構え、中国・韓国・トルコといった外資が高層ビルや新興住宅群の開発を進めている。
空に目線を向けると、標高4,000mを超えるイリ・アラタウ山脈が悠然と聳え、万年雪に包まれた稜線は雲と見紛うほどに高く白い。
その深部には氷河が残り、ユキヒョウやイヌワシといった動物が生息し、エメラルド・グリーンに輝く高山湖ビッグ・アルマトゥ・レイクがある。
さらにスキーリゾートのシンブラックや数々の記録が生まれることで有名なメデウのスケートリンクがあり、観光客を引き寄せている。
開発と自然が渾然一体としている旧都アルマトゥ。
もはや中央アジアという地域から類推されるシルクロードっぽさは微塵もないくらいに発展しているけれど、もしカザフスタンに移住するならアルマトゥ一択だと感じさせるほど、この都市は魅力とポテンシャルに満ちている・・・と思う。
私たち家族は3月末からカザフスタンに訪れ、ウズベキスタン旅行を挟んで、都合1ヶ月強ほどアルマトゥに滞在した。
本記事では、アルマトゥとその郊外にあるチャリン・キャニオンでの観光について写真を中心にまとめました。
アルマトゥ市内
アルマトゥはイリ・アラタウ山脈の北麓に位置し、標高500mから1,700mの傾斜地に広がっている。都心部は750mから900mあたりだ。気候は大陸性と山岳気候が混じるためか、夏は暑く冬は寒い。気候が不安定な春頃は急な嵐に見舞われるため、車道と歩道の間に設けられた側溝を雨水が激流となって流れることもある。
アルマトゥのベストシーズンは4月末から5月初めのGWか、夏の暑さが和らぐ8月中旬から9月あたりだと思う。
私たちが訪れた3月末から4月は気温が上がらず、新緑も芽吹かないため、街は遅い春の訪れを静かに待っているようだった。
アルマトゥ動物園
到着した次の日に旧ソ連地域では有数の質を誇るというアルマトゥ動物園を訪れた。肌寒さが残り、天気は雨模様。そのためか、以前訪れた時にいたはずのキリンやサイ、ピューマにアムールヒョウなどの動物にお目にかかることはできなかった。子ども達は残念がっていた。料金は700テンゲ(1テンゲ=0.34円)とリーズナブルだ。
コクトベ
アルマトゥの全景を見渡せる小高い丘のコクトベにも何度か足を運んだ。高級ホテル・カザフスタンの北側にあるロープウェイ乗り場から標高1,070mにある展望台に行くと、市内を一望できる。展望台にはちょっとした遊園地や動物園もあり、5月末から8月末まで続く夏休みの間は子連れ客で大賑わいになる。平日は閑散としているのでゆっくり観光するには丁度良かった。ただ、料金は幾分高い。片道で3,000テンゲする。帰りは歩いて下山することにした。
国立中央博物館
国立中央博物館はコクトベに登るロープウェーから歩いていける距離にある。モスクのような青い天蓋ドームと近代的な作りのファサードが目印だ。入場料は1000テンゲ・・・だったはず。
カザフスタンの自然、文化、歴史を概観できる博物館だ。様々な発掘品や器具のレプリカ、民族衣装や遊牧生活の道具、さらには現代のアーティストが描いた絵画など展示されている。
なお、ホールの左手には人類学の専門的なコーナーもあり、観覧希望の場合は追加料金(1500テンゲ)が必要となる。
28人のパンフィロフ戦士公園
28人のパンフィロフ戦士公園には、滞在中によく通った。対ナチス・ドイツとの大祖国戦争でモスクワに出征し、攻防の末に戦死したパンフィロフ将軍以下28名の戦士を記念して造られた公園で、園内には記念碑のほかゼンコフ正教教会やカザフ民族楽器博物館といった名所がある。また馬や馬車に乗ったり電動カーで遊んだりすることもでき、市民にとっても観光客にとっても憩いの場になっている。
植物園
アル・ファラビ・カザフ国立大学の側にある植物園にも足を運んだ。市内からだと9番のトロリーバスで行くことができる。特に何があるわけでもないけれど、広大な園内には、カザフスタンを彩る木々が展示されており、キジをはじめとする野鳥も生息し、都市の喧騒を離れて余暇を過ごすには良い場所だった。料金は確か800テンゲくらいだった。
ロシア・ドラマ劇場とバレエ・オペラ劇場
妻の友人の計らいで、長女と次女をシアターに連れていくことができた。ソ連時代から、演劇やバレエ、オペラといったシアターエコノミーは発達しており、今でも客足は途絶えることなく続いている。
私たちは、ロシア・ドラマ劇場で児童向けの『美女と野獣』の原作を、バレエ・オペラ劇場でソ連時代に創られたバレエ『愛の伝説』を鑑賞した。
子ども達は初めて鑑賞するバレエに感激し、帰る道中は人目も気にせず踊っていた。
ビッグ・アルマトゥ・レイク(BAO)の麓
ビッグ・アルマトゥ・レイク(ロシア語でбольшой алматинское озеро、略してBAO)は標高2,850mにある高山湖だ。訪れるためには中腹まで車や28番のバスで向かい、残りは片道3時間のハイキングになる。
私たちは5月中旬のある曇った日に訪れた。案の定、途中で雨が降ってきたため、山麓の観光広場まで行って引き返してきた。エメラルド・グリーンに輝く湖を一度は拝みたいがいつになることやら。
チャリン・キャニオン
アルマトゥから東へ200km以上離れたチャリン・キャニオン。
12億年前のチャリン川の浸食によって形成され、多くの動植物を懐に抱く天然の渓谷は、国立公園にも指定されており、眺めは壮観である。
カザフスタンのグランド・キャニオンとも言われ、近隣にある世界遺産アルトゥン・エメリ国立公園と並ぶ観光スポットでもある。
12年前に初めて訪れた時、呼吸や唾を飲み込む以外に音が聞こえない全き静寂を体験して、心の底から感動した。まだ日も沈まない昼間についたはずなのに、耳鳴りがするほどに静まり返っていたのだ。
内陸国に横たわる乾いた大地とそこに流れる大気の深い鳴動を体感したことに心が震えた。
もう一度、そして子ども達に同じ感動を共有したい。そう思って、4月の初めにチャリン・キャニオンに向かった。
結果的に、このエクスカーションで最も感動したのは、道中で見かけた光景だった。道路の傍から地平線の先まで届くかと思うほど、草原の一面に咲く黄色い花たち。車の扉を開けた瞬間から、鼻腔にほのかな甘い香りが滑り込んできた。いくら文章に残し、写真や動画で記録に残しても、香りと触感だけは他人に伝えられない。だからこそ、旅に出ることに価値があるのだと思う。
チャリン・キャニオンに到着すると、12年前と様変わりした景色に驚きを隠せなかった。観光開発が進むカザフスタンにおいて、チャリン・キャニオンも例外ではなく、渓谷内に案内掲示や休憩用の椅子、ゴミ箱などが設置され、駐車場もアスファルトで整備され、ちょっとしたイベントができる設備やカフェ、宿泊用コテージまで建てられていた。
期待した静寂はそこになかったが、これも巡り合わせだ。
渓谷内をトレッキングして、アルマトゥへと戻った。
今回はこれで終わりです。
読んでいただき、ありがとうございました。
滞在中の体験や気づき、さらにはこの国🇰🇿に関する彼是について、引き続き【カザフスタンの日々】としてまとめていきます。
これからも読んでいただけると嬉しいです。
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