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ファはファン1号のファ (ショートストーリー)

ファン1号、ふかたにゆうき。


友人にヘルプを頼まれて、MMD(ミクミクダンス)をいじっている。
渡されたパラメータを打ち込み、同じく渡されたイラストから、モデリングをやっていく。

最近は別のツールが出てるらしい。
P(プロデューサー)歴の結構長い友人はMMDに慣れ親しんでいるので、もはや変える気がないらしい。そういうわけで、ふかたにが頼まれたのも、彼とバージョンを合わせたMMDだった。

どうやら、アイドルグループを作りたいらしい。
人数を作るのが面倒で、自分に泣きついてきたのだった。今度なに奢らせよう。約束した数はもう、片手で足りない。
今の画面には、二人目、ピンクの髪で巨乳の娘がもうすぐ出来つつある。友人の趣味らしく、やたら胸の指定だけ細かい。
ちょっと自分の好みとは外れている。
どうせ作るなら、時間と手間暇掛けるんだったら。

頼まれた人数を作り終え、ふかたには構想を練り始める。
好みの子を作るといっても、改めて考えてみると、どんなのが自分の好みなのか自覚してないもんだな。そう思った。
クロッキー帳は1冊使った。

なにもそこまで。
目的があるわけでもない、ただ作ってみたいだけなのに。

このままでは、らちが明かんと、比較的気に入ったものから、パーツを寄り集めて1つ作ってみることにした。

そして格闘の日々。
ともすると、こだわりたい気持ちをぐっと抑え(だって終わらない)、雑になってきた自分を叱咤激励し(だってこだわってなんぼじゃん)、曲線一つに血道をあげ、こんなもんでいいかと作業を終了してみる。
(結局次の日にまた触り始めるのだけど)

そうやって出来た彼女が、今、モニタの中に立っている。
動かしてみるか。


Enter を叩くと、コマンドに従って、彼女がにっこり笑って手を振った。
片手を少し斜め下に伸ばし、もう一方の手を顔の近くでひらひら振っている。
自分が次のコマンドを打たない限り、彼女はそのままである。
そんなことは抜け落ちるほど、ふかたには感動していた。

もうちょっと、表情足してみようか。
もうちょっと、髪型とか衣装とか、研究してみようか。
もうちょっと、動き足してみようか。
曲付けてみちゃったり。


そして、ふかたにはアイドルゲームを作り上げてしまうのだった。

ついにリリースの日。
センターはもちろん、最初に作った彼女。
これから、末永く愛してもらえるかもしれない。
もしかしたら、1周年を待たずに消えるかもしれない。
希望としては、3周年はいってほしい。この厳しいゲーム業界で、3周年って結構厳しめの現実ではあるけれど。
そして、出来れば日本だけじゃなくて、海外の人にも愛されてくれたりしてほしい。
そうなる頃には、きっと君は、自分の手から離れているかもしれない。
どんなに大きくなっても、覚えていてほしい。いや、覚える機能なんぞないのは知ってるけどさ。


羽ばたけ。
ぼくが君のファン1号だ。


ふかたには、この日のために購入した巨大 Enter に向かって、こぶしを振り下ろした。

                                                                                            End.


いや今どきは、Enter じゃなくてクリックなのは承知してますが、
気分気分。
この『ファ』がずっと出したかった。
レとミがちょっとこじつけで、いまいち気に入らなかったので、なかなかファが出せなくて。
#熟成下書き  のおかげで、先に出しちゃうことにしました。
ありがとう。

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